本部

戦闘

豊食からの飽食、侮辱からの腐食

一 一

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
5人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/10/31 09:00
完成予定
2016/11/09 09:00

掲示板

オープニング

●終わりとハジマリ
 深夜のコンビニ。
 草木も眠る丑三つ時、とはよく言ったもので。
 昼間はにぎわう通りも人が少なく。
 白と黒に点滅する街灯と。
 知覚してくれる存在のいないロゴ入り看板。
 そして、いつくるとも知れない客を待つ、店内から漏れた蛍光灯。
 それらだけが、辺りに存在する光だった。
「よ、っと」
 誰もいない。
 なにも変わらない。
 漆黒で固められた時間の中で。
 コンビニから、1人の青年が姿を現す。
「今日も廃棄がかなり出たな~。っつっても、毎日全部の商品を捌ききるなんて、どんだけ繁盛してる店でもできないんだろうけど」
 手にしているのは、賞味期限や消費期限の過ぎた食べ物たち。
 興味を抱かれるよう。
 利益を得られるよう。
 客に食べられるよう。
 商品開発や味の改良、パッケージデザインの変更に、メディアを使った宣伝。
 様々な経営努力を重ねてできた、様々な生命のなれの果て。
 穀物、野菜、果物といった植物。
 牛、豚、鶏といった動物。
 保存期間の延長や品質低下を防ぐための各種食品添加物。
 人々が生きる糧として刈り取られ。
 食されるために工夫・加工され。
 今、生きている命に活力を与えるはずだった、不要物。
「いつも思うけど、やっぱもったいねぇな」
 青年が大きな黒いビニール袋にまとめて入れた、それら。
 綺麗に整えられた形を奪われ。
 生産過程で生じた努力を冒涜され。
 たくさんの人の目に触れ食欲を刺激したにも関わらず。
 待っていた末路は、無価値の烙印を押されて、ぐちゃぐちゃに混ぜられた、ゴミ。
 おにぎり、弁当、サンドイッチ、その他総菜。
 1つ1つに込められた数多のエネルギーが、無に帰す瞬間。
 誰もが見慣れてしまった。
 気にされることさえなくなった。
 無慈悲で残酷な、日常と化した現実。
「おーい、ゴミ捨てが終わったらこっち手伝ってくれ!」
「あ、はーい!」
 だから。
 躊躇われることはない。
 省みられることはない。
 想起されることはない。
 生まれた意味から、作られた願いから、存在した記憶から。
 忘れ去られ、呆気なく、消える。
 コンビニから己を呼ぶ声に、青年はゴミ袋を手放した。
 街灯に照らされるのは、山と積もったゴミ袋だけ。
 チカチカと、チカチカと。
 白と黒が不規則に照らす、中を見通せない黒のビニール袋の中で。
 ーーずるり。
 この世ならざるモノが、産声を上げた。

●不愉快で不可解な不可思議
 夜が明け、太陽が天高く昇り、世界を光が支配した頃。
 ある商店街では多くの人々が行き交い。
 多くの飲食店から食欲をそそる香りが漂う。
 この日は休日。
 普段と比べると活気があり、人々のエネルギーに満ちている。
「……ん?」
 そこに、1つの波紋が落とされる。
「どうした?」
「いや、何か臭わない?」
 商店街の入り口に近い、和菓子店。
 特に地元住人から数多くの支持を得て、毎日1人は顔見知りの客と会う、繁盛店。
 先代から店を引き継がれ、今は二代目の店主と妻で営まれている。
 そこに生じた、かすかな違和感。
 お昼前にさしかかったところで、それに気づいたのは妻だった。
「……確かに、ちょっと臭うな」
 妻の言葉に店主も鼻を動かすと、わずかに顔をしかめた。
 かすかでも確かに感じ取れる、何とも表現のしようがない臭い。
 腐臭? 悪臭? 刺激臭?
 どれでもないし、どれともいえる。
 さりとて断言できるのは、決して心地のいいものではない臭いだということ。
「材料が傷んじゃったのかしら?」
「それならもっと早く気がつくだろう?」
 夫婦が首を傾げ、戸惑っているところに。
 ソレは現れた。
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
 突如、店の入り口のガラスが弾け飛んだ。
 短い悲鳴が上がり、瞬間一気に強くなる悪臭。
 日常を壊したのは、人・犬・猫の形をした、紫色をしたドロドロの塊。
『ひっ、……っ~!?!?』
 夫婦は悲鳴を上げかけ、それ以上に強すぎる悪臭に手で鼻ごと口を覆う。
 その間に、人の形をしたドロドロは頭を振りかぶり、何かを勢いよく吐き出した。
『っ!!』
 夫婦は思わず目を閉じ、身を固くする。
『……?』
 しかし、何も変化がない。
 少なくとも、自分たちの体には。
『な……っ!?』
 おそるおそる目を開けると、気味の悪いドロドロは姿を消し。
 かわりに、丹精込めて作られた和菓子がすべて、紫色のドロドロに沈んでいた。
「こ、これは……」
「に、にげましょう、っ!」
 入り口から見える範囲は、すべてドロドロで埋め尽くされている。
 ボコボコと泡立ち、気泡が弾ける度に強くなる異臭。
 臭いの強さはすぐに夫婦が我慢できる限界を超え、慌てて店の外へと飛び出した。
「げほっ、ごほっ! な、なんだったの、あれ?」
「うぐぅ、わからんが、ただごとじゃない!」
 店の外には、店内に残されたドロドロと同じ足跡が、点々と残っていた。
 そして、口元を押さえて商店街から逃げ出していく人々が横切る。
 夫婦もその中に混じり、目に涙を浮かべて身の安全だけを考えて走り出した。
 ーー商店街のすぐ近くにあった、紫で汚された無人のコンビニを通り過ぎて。

●腐食を防げ!
「ここからそう遠くない商店街で、従魔が暴れている模様です」
 多数の一般人からの通報を受け、H.O.P.E.職員はエージェントを集めた。
「最初の通報者によると、コンビニのゴミ袋に憑依したようですね。手始めに店内を荒らした後、すぐ近くの商店街に向かったとのことです。現在、人的被害は0。ただ、食べ物を扱うお店に押し入っては、商品をダメにして回っています。人を狙わない理由はわかりませんが、放置しておくとお店の経済的に大きな損失となることでしょう」
 商店街は南北に延び、規模は全長およそ400m。
 飲食店が多く軒を連ね、従魔が出現したと思われるコンビニは南口付近にあった。
 そして、従魔はどんどん数を増やし、商店街を北上しているらしい。
「情報では、従魔は悪臭を放つヘドロ状の物体。動きが外見にしては早い程度で、一般人でも全力で走れば逃げきれるそうです。討伐自体は難しくないでしょうが、数の多さには注意が必要だと思われます。くれぐれも気をつけてください」
 事件は十数分前に起きたばかりで、知られていることは少ない。
 早々に説明を終えた職員は、人々に害をなす敵の討伐をエージェントに委ねた。
 人々の日常と、日常を支える食べ物を守るために。

解説

●目標
 従魔の討伐。

●登場
 ヘドロ従魔…消費・賞味期限切れで廃棄された生ゴミに憑依したミーレス級従魔。体表は常に泡立ち、強烈な異臭が周囲に広がる。ヘドロ化した体を動物に変化させ、動きがやや機敏に。現状、人を襲う様子はないが、美味しそうな総菜や弁当などを発見してはヘドロを浴びせ、わずかなライヴスを得ている。

 野犬型…物理・魔法攻撃↓、回避↑、移動↑、イニシアチブ↑
 スキル
・マーキング…射程1~3、単体物理。ヘドロでドロドロになる。特殊抵抗判定でBS減退(1)付与。

 野良猫型…物理・魔法攻撃↓、回避↑、移動↑、イニシアチブ↑
 スキル
・糞飛ばし…射程1~15、単体魔法。ヘドロでドロドロになる。特殊抵抗判定でBS減退(2)付与。

 人間型…物理攻撃↑、魔法攻撃↓、命中↑、回避↓
 スキル
・嘔吐…射程1~5、単体魔法。ヘドロでドロドロになる。特殊抵抗判定でBS減退(3)付与。

●場所
 飲食店が多い商店街。全長400mで南北に延び、飲食店多数。休日の昼間でそこそこお客さんもいたが、従魔が登場してすぐ自主避難は完了。現場には鼻をえぐるような悪臭が広がり、長期間その場所にいると目の粘膜が刺激に耐えきれず、涙があふれてくる。

●状況
 従魔は商店街の中を散開して移動し、親の敵のように食べ物をダメにしていく。基本的に3体以上で行動し、地面に点々とヘドロの跡が付着しているので追跡は可能。すでに従魔が発生したコンビニでは食料品がすべてヘドロまみれであり、このまま放置すると商店街の商品も、いずれすべてが同じ末路をたどる。

※従魔を倒すとヘドロも臭いも消えるが、被害にあった食料品は腐った状態で取り残される。(PL情報)

マスターより

 食欲の秋、ということで食べ物を大事にしようキャンペーンです。せっかくおいしい食べ物として作られたのに、誰にも食べられることなく廃棄されてしまった食べ物たちの怨念(?)が、従魔の力によって暴走しています。

 ヘドロとなって食べ物を襲う彼らの無念を晴らすため、エージェントのみなさんにはヘドロを美味しくいただ……、もとい討伐してもらいます。攻撃手段は全部汚いですが、多少の粗相は大目に見てやってください。

リプレイ公開中 納品日時 2016/11/07 19:17

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 美食を捧げし主夫
    会津 灯影aa0273
    人間|24才|男性|回避
  • 極上もふもふ
    aa0273hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命



  • ローズクロス・クイーン
    新座 ミサトaa3710
    人間|24才|女性|攻撃
  • 老練のオシリスキー
    嵐山aa3710hero001
    英雄|79才|男性|ドレ
  • 武芸者
    呉 淑華aa4437
    機械|18才|女性|回避



  • 恋は戦争、愛は略奪
    Hoang Thi Hoaaa4477
    人間|22才|女性|生命



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