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コメディ

夏だ! 畑だ! 草むしりだ!!

一 一

形態
ショート
難易度
易しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
3人 / 5~10人
英雄
3人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2016/07/24 07:30
完成予定
2016/08/02 07:30

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オープニング

●一夜にしてこの有様である
 夜明け前の早朝。
 ほとんどの人が寝静まっている時間帯に、動き出す人影が二つ。
 彼らは空のカゴをいくつか軽トラに積み、エンジンを吹かせて家を後にする。
「よぉ~し、今日中に収穫して、出荷しちまうぞ~」
「う~す。ふわぁ~、っと」
 運転席に座る老齢の男性が気怠げに告げると、助手席の中年男性があくび混じりに応えた。彼らは親子で農家を営んでおり、自家の畑で実った売り物用の野菜を穫りに行くようだ。
 しかし、農家として生計を立てている割に、二人とも朝は弱いらしい。特に息子の方はしきりにあくびを漏らしており、まぶたも半分落ちたまま。むしろよく夜明け前に起きることが出来たものだ。
「……ん~? おい親父、なんかすごいことになってないか?」
「はぁ? すごいことぉ?」
 家を出てすぐ、最初に異変に気づいたのは息子の方だった。
 眠気を誤魔化すためか、ぼーっと窓の外を眺めていた彼は、ふと進行方向に見えた影に眉をひそめていた。
 一方、すっごい安全運転で道しか見ていない父親は、まだ息子の言う『すごいこと』には気づかない。
 が、彼らが自分たちの畑にたどり着いた直後、否応なしに『それ』と対峙するハメになった。
「なんじゃ、こりゃぁ……」
「……うわ、だりぃ~」
 運転席から降りた父親と、隣でだるそうに頭をかいた息子は、畑に突如出現した大量の雑草を目の当たりにしていた。
 高さは息子の胸ほども伸び、当然ながら事前に植えていた作物の姿は埋没してしまっている。何かもう、最初からこういう場所だったと言われてもおかしくない。
 前日も畑を世話していた父親はあまりの激変ぶりに目を丸くし、息子はまだ半分夢の世界なのかリアクションが微妙におかしい。
「まあいいや。さっさと抜いちまおうぜ」
「あ! おい!」
 面倒だという感情をダダ漏れにし、息子は躊躇なく異質な畑の境界に足を踏み入れた。
 父親の焦り気味な制止も聞かず、息子はそのまましゃがみ込んで、一夜にして生えた雑草の根本をがっちりつかんだ。
「ふんっ、……あん? ふんぬっ!?」
 しかし、かなりの力を込めても雑草は一向に抜けない。まるで大樹を相手に奮闘しているような、雑草のくせにものすごい根力を見せつけたのだ。
「親父~、抜けねぇから鎌貸してくれ~」
「いやいや! 抜ける抜けないの前に、そんな明らかに怪しいもんに触るなよ!?」
「触んな、っつったって、このままじゃ作業できないじゃ……」
 息子の危機意識ゼロな行動に、父親は真っ当なつっこみを入れるが、意識が覚醒しきっていない息子の反応は鈍いまま。
 そして、とろんとした眼のまま息子が立ち上がろうとした、その時。
「……お?」
 突如、息子がバランスを崩し、畑の方へと体が傾いた。
「っ!?」
 だが、そばで見ていた父親は、息子の転倒の仕方があまりに不自然で息を呑む。
 息子は立ち上がった瞬間に足を取られたのだが、父親の目が正しければ、『地面が波打った』ためにバランスが崩れたのだ。
「いてっ」
 硬直してしまった父親は咄嗟に何も出来ず、息子は怪しさ爆発の畑へと倒れ込んでしまった。
「お、おいっ! 今すぐそこから離れ……っ!」
 強い危機感を覚えた父親は息子へ忠告をするが、遅かった。
「え? あ……」
 風もないのにザワザワと雑草が騒ぎだし。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
 息子の愉快な絶叫が、薄闇の畑にまき散らされた。

●こんな仕事もたまにある
「畑で草抜きしてきてください」
 ……はぁ?
 依頼だとH.O.P.E.職員に呼び出され、会議室に集まった瞬間に飛び出した開口一番の台詞に、能力者たちの心の声が完全に一致した。
「場所は千葉県の農場で、依頼者が所有する収穫期を迎えた畑が、一夜にして雑草まみれになってしまったため、みなさんに除草の協力をして欲しいとのことです」
 それって、ただの雑用じゃね?
 誰もがよぎったその考えは、しかし他ならぬ職員の口から否定される。
「そもそも何故この依頼を引き受けたのかといいますと、従魔の関与が確認されたからです。ただ人手を募集するためではなく、れっきとした従魔討伐ですので悪しからず」
 不審が表情に出ていたのか、淡々と説明する職員は能力者たちにさっさと釘を差した。職員の説明における導入が下手だったからこその反応なのだが、当人は気にせず口を開く。
「すでにご察しの通り、従魔は雑草に憑依したようです。どうやら夜中の間に寄ってたかって依頼者の畑に集まり、雑草として伸び伸びと成長したものと思われます。これがその映像です」
 ちょこちょこ言葉のチョイスが変な職員は、ここでプロジェクターを起動した。
「はい。見ての通り、ボーボーです。あ、いきなりAGWで吹っ飛ばしたりしたらダメですよ? 従魔の排除は簡単でしょうが、畑の野菜も一緒に吹っ飛びますから。依頼者の利益を損なわないよう、共鳴してからは手作業で地道に抜いていくのがベターです」
 職員が見せたのは、能力者たちが戦う戦場の有様だった。
 見渡す限り、草、草、草。本当に一晩で生えたのかと疑いたくなるほどの規模である。
 従魔たちよ、お前らは何に力を入れているんだ?
「雑草の異常成長は従魔憑依による変化ではなく、地中の生物や畑の作物からライヴスをせしめていることによるものと推察されます。依頼は今朝届けられましたので、さっさと駆除しないと作物が売り物にならなくなるかもしれません。当事者からすれば死活問題です」
 急に真面目な理由が出てきた。
 もはやどんなテンションで聞けばいいのかわからない。
「また、すでに人的被害も出ています。依頼者の息子さんが従魔草がわんさかしている畑にダイブし、ライヴスを持って行かれました。すぐに依頼者の手により救出され、命に別状はないとのことですが、すっごいぐったりしているようです」
 微妙に緊張感が高まらない説明も終わりに近づき、職員は最後まで淡々とした口調で話した。
「最後に、被害者からの忠告です。『気をつけろ。奴らはテクニシャンだ』とのことです。ではみなさん、くれぐれも熱中症や脱水症には気をつけて、行ってらっしゃい」
 テクニシャンって何だ? ライヴス低下による『ぐったり』以外に何かあるのか? そして、自分たちが気をつけるべきポイントはそこなのか?
 情報を開示されたのに様々な疑問に包まれながら、とりあえず能力者たちは現場へ向かうことにした。

解説

●目標
 異常発生した雑草(従魔)の駆除、および作物の救出。

●登場
 雑草従魔。イマーゴ級。数はいっぱい。
 現状、主に地中の生物のライヴスを吸収し、存在を保っている。隙あらば人間からもライヴスを吸収しようとする。吸収量は一般人なら多少体調を崩し、能力者にはほとんど影響ない程度。

(以下、PL情報)
 本日未明に発生したばかりで、能力者を直接傷つける力はない。葉を動かすことや、根っこを操作し畑の土をわずかに動かすことが可能。地面から飛び出したり、地面から抜かれた後に自力で動き回ったりはできない。
 人間を転ばせ、くすぐるのが超得意。どれだけ感情を殺した人間でも、的確に笑いのツボを刺激するくすぐり方をしてくる。笑い転げて隙だらけの間に、こっそりライヴスを吸収してくる。

●場所
 収穫時期を迎えた畑。植えられている作物はスイカ、きゅうり、枝豆、トマト、トウモロコシ。被害面積はおよそ五反(約5,000m2)。雑草従魔に隠れ、どこに何の作物があるのかはさっぱりわからない。(ただし、トマトはハウス栽培で、ハウス内がボーボー)
 現場到着時、時刻は正午で天気は快晴かつ猛暑日。風もほとんどなく、じっとりとした暑さとなる。

●状況
 雑草全体が従魔であり、共鳴状態で引っ張ると根っこごとごっそり抜ける。普通の農具では刃が通らない。AGWやスキルなどでは従魔の根が地中に残ったり、攻撃軌道により作物を傷つける危険性がある。

(以下PL情報)
 PC到着以降、従魔は作物からライヴスをゆっくり集め始める。ライヴス減少量に伴い、作物の品質は低下していく。
 抜いた従魔を一カ所に集めてもイマーゴ級のまま。例えばお互いのライヴスを集結させ、ミーレス級従魔になる等はない。

マスターより

 猛暑日というクソ暑い日に、農作業なんてどうでしょう?
 炎天下、畑で手作業の草抜きなんて地味な重労働ですが、たまにはこんなのもいいでしょう。いっぱい汗をかいて、たくさん笑いましょう。

(お願い)
 プレイングにPC(能力者・参加英雄両方)の本気の笑い声を、サンプルとして挿入してください。プレイングに記述がない場合、こちらで笑い声を創作して描写します。
 もし、普段は一切笑わない性格のPCであった場合でも、『笑いを我慢する』程度の描写は最低限入れますので、了承された上でご参加ください。

執筆中 納品予定日時 2016/08/02 07:30

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