本部
愛する者の胸に眠れ
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~6人
- 英雄
- 6人 / 0~6人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/29 19:00
- 完成予定
- 2016/03/10 19:00
このシナリオは1日間納期が延長されています。
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/02/25 11:22:46 -
愛する者を守る為に
最終発言2016/02/28 23:34:53
オープニング
●スコットランド某湖畔、ロンスキ邸
暗い部屋の中、小さなランプの光に一人の男の姿が浮かぶ。男は何か書き物をしているようだが、時折苦しげな息遣いと共にその手が止まる。
理由は明かだ。過ぎ去った長い時を示す深い皺と、隠しきれない衰弱の色。男が病に蝕ばまれていることは、医者でなくとも分かる。だが、男は医者を必要としなかった。彼が欲するのは、長く不自由な余命ではなく、短くとも自由な時間だ。
カツン、と、小さな音が鳴り、男の手が止まった。どうやら書き物を終えたらしい。男は、大きな息を吐くと、書き終えた手紙を二枚、二つの封筒に入れ薔薇の封蝋で閉じる。
――ニャア
それを待っていた様に、男の膝に一匹のシャム猫が飛び乗る。男と8年の歳月を共にしたその猫は、男が書き物をしている時はどれ程甘えても無駄だと言うことを知っていた。猫は男の胸に顔を擦り付け、撫でろという風に顎の下を見せる。胸元の、『WZOR』と刻まれたプレートが鈍く光った。
催促に応じ、男がその首元を撫でてやると、猫は気持ちよさそうに喉を鳴らす。
「ウズル、お前を残して行くのは心残りだが……」
男はそう呟くと、机の上の写真立てを手に取った。美しい女性と、その女性に抱かれた小さな男の子。男の失った全てが、古い写真の中に閉じ込められている。
男は泣くのが嫌いだったので、その写真を見る時いつも奥歯を噛み締める。だが、今日はその努力を放棄した。そんな気分だった。
「エミール……」
呟きと共に零れた水滴が、写真に書き付けられた『Vnro.Nb wziormt hlm.』という文字の上に落ちる。
「お前を通した狭き門は私を拒むだろう……生きて失ったものを、死んで取り戻せるはずもない」
独り言ち、男はしばし沈黙した。
「愛しき者と別れ、相応しい場所へ行くのだ――」
吹っ切れた様にそう言うと、先程封をした二枚の封筒を手に取る。一つの封筒には『Hvozvml』もう一つには『SLKV』の文字。二つの文字を暫く眺めた後、男は『SLKV』の方を指でなぞった。
「『希望』か……老人には無縁の言葉だ」
だが、あと少しだけ我が儘に付き合ってもらう――男は思い、静かに両目を閉じる。
「それでいい――」
数日後、男――マルチン・ロンスキは静かに息を引き取る。高名なオーパーツ研究家であった彼の死は世界中に伝えられたが、最後を看取ったのは愛猫ウズルだけであった。
●数日後
「ここには何もないのね」
夫の書斎を覗き込んだロザリー・ロンスキは呟く。本棚と椅子、小さな引き出し付きの机。それだけの家具しかない。
この部屋だけではない。マルチンの葬儀を終え人心地付いたロザリーは、夫が終の棲家とした家を見て回ったが、どの部屋も最低限の家具しかない。飾りと言えば、各部屋に絵が飾られている位のものだ。
十数年前、ロザリーがまだマルチンとやり直せると思っていた頃、この家にはまだ多くの物が置かれていた。その時から今日までの間、マルチンは家にあった物を一つ一つ捨てていったのだろうか? 思い出を消し去るかの様に――ロザリーは苦い笑みを浮かべる。
「あの人は、私のことも捨てたかったのね……」
マルチンにとって最も苦い過去。愛する息子を失った思い出は、その母親であるロザリーと分かち難く結びついている。マルチンが過去を消したかったのだとすれば、何より捨てたかったのは自分だろう。
マルチンと共に生きようと思った事を、今更後悔するつもりはない。けれど、虚しさを感じないわけにはいかなかった。この家の様に自分も空っぽに……。
「あら?」
ロザリーの足下に、一匹のシャム猫がすり寄る。
「ウズル……だったかしら?」
マルチンが生前可愛がっていた猫だ。誰かが引き取ったものと思っていたが、どうやら置き去りにされたらしい。
「お前を置いて天国へ行くなんて、最後まで無責任な人だわ……」
ロザリーはそう言ってウズルに手を伸ばす。ウズルはその手をするりとかわし、トコトコと書斎の中へ入って行った。
「どこへ行くの?」
ロザリーもそれを追って書斎へ入った。ウズルは机の上に寝そべっている。ロザリーは手を伸ばし、ウズルを抱き上げる。そして、寝そべったウズルの下にある物に気付く。
「これは……?」
薔薇の封印がされた封筒。それは、マルチンが残した最後のプレゼントであり……そして、それは――。
●HOPE支部、ブリーフィングルーム
「知っている者も居るかもしれないが、先日、高名なオーパーツ研究家のマルチン・ロンスキ博士が亡くなった」
担当官は集まったエージェントを前にそう切り出す。
「博士は隠遁生活を送っていたが、研究は高い評価を受けている……その博士から、先日HOPE宛てに手紙が届いた。手紙は博士の妻君が届けてくれたんだが、それによると、博士は未解明だったあるオーパーツの使用法を発見したらしい。手紙には、その使用法とオーパーツをスコットランドにある自宅に隠したとある……そう、隠したんだ」
そう言うと、担当官は薔薇の封蝋がされた封筒を見せる。
「Under the Rose……古い諺で、秘密という意味だ。洒落てるね、屁が出そうだ……悪質なことに、博士はセラエノにも同じ手紙を送ったらしい……なんでわかるかって? 手紙に書いてあったからだよ。博士は我々と連中が争うのを天国から見物したい様だ。全く、いい趣味だ」
担当官は苦い顔で笑う。
「残念なことに、HOPEは現在スコットランドへ向かえる暗号解読班を持っていない。そこで君らの任務だ。暗号解読班が到着するまで、博士の自宅をセラエノから守ってくれ」
「暗号? 解いてくれるならそれに越したことはないね。オーパーツの在処が分かれば襲撃からも守りやすくなるし、手間も省ける……博士から送られてきたヒントを見せよう」
『エレミヤはバビロンを秘した。我が秘密は愛する者の胸に眠る』
「けど、解けないなら無理しなくていいよ。大事なのはオーパーツを手に入れる事よりも、それをセラエノに渡さない事だ」
解説
●目標
オーパーツをセラエノから守る。
●登場
『セラエノ特殊部隊』
HOPEの情報によれば、『探し手のロイ』と呼ばれる腕利きのソフィスビショップが率いる6~8人程の小部隊ではないかとのこと。
●状況
マルチン(Marcin)博士宅には部屋が6つ。書斎を除く部屋にはそれぞれセザンヌ(Cezanne)、クリムト(Klimt)、ダリ(Dali)、ルノワール(Renoir)、ユリトロ(Utrillo)の絵が飾られている。
書斎には絵がない代わりに写真が一つ。女性に抱かれた小さな男の子。写真の下には教授の筆跡で「Vnro.Nb wziormt hlm.」の書き付け。
女性は妻のロザリー(Rosalie)、男の子は息子のエミール(Emil)。エミールは既に事故で死亡。この頃から博士は妻を含め全ての人間を寄せ付けなくなった。
博士は晩年ウズル(Wzor)という猫を可愛がっていた。偏屈な博士が心を許したのはこの猫だけだったとの事。
手紙には謎の一文『エレミヤはバビロンを秘した。我が秘密は愛する者の胸に眠る』。
各部屋には窓があり、敵はどこからでも襲撃が可能。彼らの目的は戦闘ではなく、オーパーツの奪取です。目的を達したら早々に退却します。部屋から部屋への移動は2ターン掛かります。
暗号解読班には別途護衛が付きます。博士の妻ロザリーと猫のウズルは安全確保のためHOPEで保護中。
現在の情報から確実に判明するのは、オーパーツの隠された場所だけです。オーパーツは金庫(ダミーもあります)に入っており、開けるにはパスワードが必要です。金庫にはパスワードのヒントとして『Nb hlm'h mznv.』と書き付けられています。
マスターより
一度はやってみたかった謎解きのあるシナリオです。
謎解きはしなくても『探し手のロイ』以下セラエノ部隊を追い払えば任務は完了ですが……出来れば解いて欲しいです。
博士も折角作ったなぞなぞをスルーされたら「かくれんぼで隠れてたらいつの間にかみんな他の遊びをしていた」事に気付いた子供みないな顔に成ってしまうでしょう。
リプレイ公開中 納品日時 2016/03/07 17:39
参加者
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最終発言2016/02/25 11:22:46 -
愛する者を守る為に
最終発言2016/02/28 23:34:53