本部

戦闘

6つ目の銃弾は……

白田熊手

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/01/15 15:00
完成予定
2016/01/24 15:00

掲示板

オープニング

●都内、闇金事務所
「か、勘弁してくれ!」
 男はそう叫び、目の前に立つ蘇我に命乞いする。それは、いつもと逆の光景だった。闇金を営む男の前で、いつも誰かが、今の様に泣き喚く。それが今日は、逆。
 だが、男にその皮肉を感じる余裕はない。彼の根城たる事務所はまるで爆弾でも破裂したかのようにめちゃくちゃに破壊され、詰めていた数人のチンピラもみな、蘇我に銃撃され半死半生。それでも虚勢を張れるほど、男は強くなかった。
「あれは高崎のやったことだ! 俺は従っただけで……」
 蘇我は男の顎を無造作に蹴り上げ、聞き苦しい喚きを停止させる。
「そうかい……」
 蘇我は怠そうに呟く。真実など最早どうでもよかった。冷えた心の中で、悲しみだけが溶けた鉄のように熱く滾り、死人同然の蘇我を操り動かしている。生きる事に絶望し、死ぬ事すら諦め、黒い霧の中を彷徨う事だけが、今の蘇我に許された唯一の自由で――だから蘇我は、男を殺さねばならなかった。
「運が悪かったんだよ……俺も高崎もぶっ殺す気は無かったんだ。ただ少し、お前の親父は運が悪くて……死んじまったんだ」
 顎を蹴られた男は、口から血を垂らしながら尚も言う。自分勝手な弁明。だが怒りは沸かない。蘇我はただ気怠かった。
「かもしれないな……」
 呟くと、蘇我は手にしたリボルバーの弾倉を開き、空の薬莢を排出する。
「お、おい」
 男が怯えた声を上げる。
「神様に任せよう」
「え?」
「俺も俺の家族も、お前を許せやしない」
 蘇我はそう呟き空になった弾倉に弾を込めた。
「この弾丸は親父……」
 呟き、蘇我は続いて一つ右の弾倉に装填する。
「お袋、兄貴、紗希……俺」
 一発一発、六連の弾倉に五発の銃弾……蘇我の手はそこで止まった。
「最後の弾倉には、許しを……」
 蘇我はそう呟くと、弾倉を勢いよく回転させてから閉じ、男に拳銃を放る。男は反射的に拳銃を受け取った。
「自分の頭に向けて引き金を引きな」
 五発の弾丸の入った銃を、男は震えながら見つめる。そして覚悟したようにその銃口を自分の頭に向ける……素振りみせた。
「蘇我ぁ!」
 分の悪い賭けに命を賭ける気は無い、男は怒声と共に蘇我に銃を向ける。
「まあ、そうだろうな」
 男はだが、引き金を引けなかった。男の銃は突如現れた異形の者――蘇我と契約する愚神『ソフロノフ』に奪われる。
「な……!?」
「分かってたんだろう?」
 ソフロノフはニヤニヤと笑ってそう言い、拳銃を蘇我に投げ渡す。
「かもな」
 蘇我は受け取った拳銃を男に向けた。
「ひっ!」
 男が短い悲鳴をあげ、目を瞑る。蘇我は腐臭をかいだ様に顔を顰め、男に向けた銃口を自らのこめかみに当てた。
「おい……」
 ソフロノフが焦った声をあげる。ソフロノフの加護がない今、銃弾は容易に蘇我の命を奪う。
「許しを――」
 呟き、蘇我は引き金を引く。
 カチリ、小さな音が鳴った。空倉――ソフロノフは溜息を漏らす。既に独立するだけのライブスはあるが、蘇我と居れば容易により多くのライブスを得る事が出来た。失うのは惜しい。
「ついてる、神のご加護だ」
「愚神《グライバー》の――か?」
 ニヤニヤと笑いながら言うソフロノフに、蘇我は皮肉な笑みを返す。この邪悪な神にだけ、時折蘇我は笑みを見せる。
「苦しかったんだろうな、親父の目はかっぴらいてたよ――」
 蘇我は男の瞼に銃口を押し当て、無理矢理目を開かせた。
「ゆ、許してくれっ……!」
 悲鳴はもううんざりだった。義務を果たさねばならない。蘇我は撃鉄を起こす。弾倉が一つ左に回り……許しの季節は去った。
 ドンッ、重い音、赤い飛沫――。
「運の悪い男だ、一発目は空倉だったのに」
 倒れた男を見下ろし、ソフロノフが独り言ちる。
「神が伸ばした手を撥ね除けた――自業自得さ」
 言いつつ、蘇我は男に二発目の弾を撃ち込む。
「まあな」
 ソフロノフは興味が失せた様に呟く。蘇我はまた銃弾を撃ち込む。三発、四発――。
「もう死んでるぜ」
「知ってるさ――」
 呆れた様に言うソフロノフにそう答え、蘇我は最後の銃弾を撃ち込んだ――。

●HOPE支部、ブリーフィングルーム
「都内で起きている連続殺人事件は――もう知ってるね?」
 担当官の男が、いつになく苦い表情で言う。
「連日新聞を賑わしているが、実はもう犯人は割れてる――蘇我直樹と言う男だ」
 背後のスクリーンに蘇我の顔が写る。痩せた顔に無精髭、暗く深い目をした陰気な男だ。
「だが、警察は蘇我を捕まえる事が出来ない――蘇我が愚神と契約しているからだ」
 スクリーンにもう一つの写真が写る。防犯カメラの映像なのだろう。画質は悪いが、獅子の顔に炎の鬣を持つ、人為らざる者の姿がはっきりと映っている。
「通常戦力では愚神と戦えない。蘇我を逮捕するには、是が非でも我々の協力が必要というわけだ――そこまではいい、胸糞が悪いのはその後だ」
 担当官は眉間の皺を深くする。
「蘇我は世間で言われている様な快楽殺人者じゃない。奴の犯行には別の理由がある――復讐だ」
 担当官がまた一人の男の顔を映し出す。顔の作りは良い方だが、尊大な表情の内に何処か卑屈さが漂う。
「この男、高崎要ほか数人は、8年前帰宅途中の蘇我の父親を襲撃し現金を奪った。蘇我の父親は後日死亡――これだけでも酷い話だが、その先はもっと酷い。地元の名士だった高崎の親父は事件をもみ消し、挙げ句の果て事件を追及する蘇我の母親に対しチンピラを使って嫌がらせを行った。結果、精神的に参った母親は子供達を連れて自殺、一人の子供を残して蘇我家は全滅――その一人が、蘇我直樹だ」
「蘇我が狙っているのは当時の事件関係者だ。しかし、高崎要は蘇我の犯行だと察したんだろう、先日警察に出頭してきた。8年前の事件は自分の仕業だってな。そうなれば警護しないわけにはいかない。そして、相手が愚神となれば――我々の出番と言うわけだ。高崎が所轄から本庁に護送される。蘇我が高崎を襲うチャンスは、最早そこしかない。我々が仰せつかったのはその護衛さ」
 眉間の皺はますます深い。担当官は勢いよく立ち上がると、スクリーンに映った高崎要の顔を裏拳を思い切り叩き付ける。
「こいつは人間のクズだ。しかし、それでも殺人を見過ごす訳にはいかない。まして相手が愚神とあれば、命を賭けてでも戦わなければならない――納得はいかないがね」
 そう言うと、担当官は打ち付けた拳を静かに下ろし、やりきれない様な溜息を吐く。
「蘇我は破滅に取り憑かれている。復讐を果たしたとしても、彼は絶対に救われない。そして、蘇我を止められるのは我々HOPEだけだ。不本意な任務かもしれないが……蘇我を救えるのは君達だけなんだ」

解説

●目標
 高崎要の護衛

●登場
 蘇我直樹:高崎要を狙う復讐者。ソフロノフの力を借り、ジャックポットと同様のスキルを使えます。今までの犯行から、比較的射程の短い銃器を使用すると思われます。スキル使用中、ソフロノフは彼の中に居ます。警察情報によると車は所持していませんが、運転は出来るようです。

 ソフロノフ:ライオンに似たデクリオ級の愚神。既に独立行動できるレベルですが、蘇我を気に入って共に行動しています。戦闘力はデクリオ級の平均程度。鬣に炎を宿し、自信の半径10mに炎の竜巻を起こす特殊能力があります。蘇我に力を貸している間は、蘇我と一体化していますが、自分の判断で適宜分離します。

高崎要:護衛対象であり、事件の元凶です。粋がっていますが気は弱く、襲撃に際しパニックを起こす可能性がありますが、護送車の中に居る限りは比較的安全と思われます。父は地元の名士です。

●状況
 所轄の警察署から本庁まで高崎要を護衛します。護送車は強固な作りで、愚神の攻撃にもある程度耐えますが、乗り込む時と降りる時はどうしても無防備です。ただし、それは多数の警官が居る警察署の前です。襲撃は難しいでしょう。
 ルートは一般道と高速道を利用します。一般道は通行人も居る為、戦闘になれば周囲にも危険があります。高速道は人こそ居ませんが、襲撃された際護送車が大事故を起こすかもしれません。どちらの道でも、一般車は近寄れない様、2台のパトカーが護衛に付きますので、一般車を巻き込んでの事故を起こす可能性は低いでしょう。
 作戦は裁量に任せられています。警察は皆さんが護送車の前部席かパトカーに乗り込むと想定していますが、それ以外の場所に居てもかまいません。

マスターより

 おひさしぶりとなります、白田熊手です。
 今回は大分暗めの話になってしまいました。
 復讐が空しい……かどうかは、私には分かりません。ですが、蘇我君がこのまま進めば、彼を含め誰も幸せにはなれないでしょう。
 彼は既に多くの罪を犯し、心も殆ど死んでいます。そして、彼を救う事は任務ではありません。ですが……。

リプレイ公開中 納品日時 2016/01/20 19:14

参加者

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 恐怖を刻む者
    ヴィント・ロストハートaa0473
    人間|18才|男性|命中
  • 願い叶えし者
    ナハト・ロストハートaa0473hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 冷血なる破綻者
    氷斬 雹aa0842
    機械|19才|男性|命中



  • 晦のジェドマロース
    マックス ボネットaa1161
    人間|35才|男性|命中
  • 朔のヴェスナクラスナ
    ユリア シルバースタインaa1161hero001
    英雄|19才|女性|ソフィ
  • 木漏れ日落ちる潺のひととき
    コルト スティルツaa1741
    人間|9才|?|命中
  • ギチギチ!
    アルゴスaa1741hero001
    英雄|30才|?|ジャ

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