本部
戦慄のソルスティス
- 形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 10人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/29 22:00
- 完成予定
- 2016/01/07 22:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/26 00:41:05 -
我、戦場に突入す
最終発言2015/12/29 03:50:55
オープニング
●無理でした
止めるべきか、止めざるべきか。
ジャスティン・バートレット(az0005)はこの数日――あるいはひと月ほど前から、ある葛藤を抱えていた。
それは、より多くの者が救われる方法の模索。自らに正しさを求め問い続ける彼の哲学の中で、これまで幾度となく迫られた選択である。
最早一刻の猶予もないが、なればこそ厳密に情報を吟味し、決断しなくてはならない。
正しくある為に、より正しきを選ばなくては。
「テレサ、ちょっといいかな?」
「パパ、ちょうどいいところに」
開けっ放しのキッチンの扉をノックし、中を覗けば湯気と白煙と様々な香りの協奏曲が奏でられている。指揮するのはもちろん愛娘、テレサ・バートレット(az0030)。
そう、彼女は今、日本文化にインスパイアされ料理をしているのだ。
「ちょうど……かね?」
「うん、皆が来る前に味見して貰おうと思って」
――来た。
背筋が引き締まり、肩に力が篭る。おっと、気づかれないようにしなくては。
落ち着いて胡乱に揺れ動く、ふたつの鍋を覗き込む。
「…………」
ひとつめは、黄金色の汁気が多く、そのわりに随所の黒色物が揚げ物のようにじゅわっと油分と思しき泡を立てていた。
もう一方は好意的に言うなら見目にも鉄分の豊富そうな印象を受けたが、香りは煮詰めたジャムのように甘く、幾ら眺めても素材は判然としない。
傍らのウォーマーに鎮座するポッドから、珍妙な色彩の煙が昇るのも気がかりだ。
だが恐れてはいけない。まがりなりにも大切な娘が良かれと思ってしている事だ。少なくとも自分には、これが何であれ食べるべき責任がある。
「自信作よ」
誇らしげなテレサに笑顔で応え、ジャスティンは深淵よりすくい取られた“かぼちゃの煮つけ”と“あずき粥”を――口に運んだ。
「……!」
「どう?」
「うん――」
純真なテレサは、その一瞬、父の面持ちが賢者の如き様へと変じた事に気づかなかった。
と、そこにスマートフォンのコールが鳴り響いた。
「――失礼。私だ。……判った、すぐに出頭する」
「パパ?」
「すまないが緊急召集だ、行かなくては」
「…………」
テレサは泣きそうな眼差しで、ジャスティンを見た。
「そんな顔をするな。大丈夫、今日は誰も傷ついてやしない」
「本当? 危険な事はないのね?」
「ああ本当だとも。夜までには戻るから、いい子にしているんだよ」
「うん……気をつけて」
「皆にもよろしく」
●ヒーロー落つ
ジャスティンが邸外に留められた車の後部座席へ乗り込むと、既にアマデウス・ヴィシャス(az0005hero001)は隣の席で待機していた。
彼は先ほどH.O.P.E.会長を呼びつけたばかりの電話機を放って、その顔色を確かめる。
『その……大丈夫か』
「どうという事はない。出してくれ」
事も無げなジャスティンの号令に従い、運転手はアクセルを踏んだ。
「アマデウス、私達が知り合って何年経つ」
車窓に流れる景色を眺めながら、ジャスティンがおもむろにパートナーへ訊ねた。
『……忘れてしまったよ。悠久の時を経たような心地もあるし――だが、思えば矢の如く過ぎ去った、激動の毎日だ』
「そして苦難に満ちた、けれど誇らしい日々だった」
『世界中を飛び回ったな、二人で』
「ああ……多くの出会いと別れを繰り返し、等しい数の様々なものを食べた」
『一体どうしたのだ今日は、今際の際でもあるまいに。何か悪いものでも食べ――』
アマデウスは、自らの言葉にはっとした。まさに今、その食物から彼を逃がすべく電話を入れたばかりではないか。
だが、この様子だと、ジャスティンは既に――食べている。
「君も聞き及んでいる事だろう、我が国の食に纏わる風評を。身を以って知ったろう、その実態を。だが、このイングランド……否、イギリスにもね、美味しい食べ物はあるんだ」
『止せ、もう喋るなジャスティン! 運転手、早く医者の元へ』
「あるんだよアマデウス。信じて、欲し……い――」
「……ジャスティン?」
アマデウスに看取られ、ジャスティンは力尽きた。その顔は、誇りと誠意に満ちていた。
『馬鹿、野郎……!』
●お前は何を言っているんだ
きっかけは、大規模作戦中の何気ない会話だった。
雑談の最中で日本独自の冬至の風習、その意味を知ったテレサ・バートレット(az0030)が、都合のついたエージェント達を招いて冬至にちなんだ食事会を催そうと思い立ったのである。
そうして招待され、予定の合う面々がバートレット邸に向かおうとした、あるいは向かっている最中。
各々の端末に、本部から奇妙な“依頼”が舞い込んだ。
それは次のようなものだった。
* * *
諸卿に頼みがある。
現在バートレット邸にて、H.O.P.E.会長ジャスティン・バートレットが嫡子テレサ・バートレット、並びに英雄マイリン・アイゼラの両名が、冬至の支度を整えている旨、招かれた身なれば既に承知の事と思う。
ついては、現地にて供されるであろう手料理を、是非とも味わって欲しいのだ。
本来であればジャスティンと我も諸卿を歓待の上、共にテレサの慈恵の結晶に舌鼓を打ちたいところなのだが、遺憾ながら急遽欠席する運びとなった。
だが、離れていてもこのアマデウス・ヴィシャス、心は卿らと共に在る。
我らの事は気にせず、存分に楽しんで行ってくれ。
頼んだぞ。
●その頃、バートレット邸では
「そろそろ着く頃かしら」
『あ、ま、マイリンも、今日はお手伝いするアル!』
リビングで時計を見るテレサに、マイリン・アイゼラ(az0030hero001)が先手を打つべく役割を自ら願い出た。
「そう? 珍しいわね、何か悪いものでも食べた?」
「あ、は、はははは……」
むしろ悪いものを食べない為なのだが、もちろんそんな事は言えない。だが、せめてジャスティンと同じ轍は踏むまい。
「早くみんな来るといいアルな」
「そうね、この間の戦い、本当に大変だったから。ささやかでも労ってあげないと」
解説
【状況と目的】
テレサの招待を受け、うまく日取りの都合がついた皆様はバートレット邸を訪ねる事となったのですが、出発前に本部経由でアマデウスから「テレサの料理を美味しく食べてくれ」という奇妙な依頼が届きました。
到着は昼前。リプレイは遅くても夕方までの描写となります。
※以下全てPL情報※
【プレイング】
完食を目標にOPやこの解説から味・外観などをイメージし、美味しく食べる努力をする、美味しいふりをする、最高のリアクションを披露するなど、ご随意に後述の【冬至の味覚】を楽しんでいただければと思います。
もちろん戦闘同様にプレイングとデータを踏まえた判定を行いますので、お含み置きのほどを。
【テレサ謹製:冬至の味覚】
本人なりに冬至なり風水なりの勉強をしてきたみたいです。
・かぼちゃの煮つけ:鮮烈なる黄と黒のコントラスト。警告色としてもポピュラーな取り合わせですね。それ以上の事は、この場ではとても。
・あずき粥:見た目だけなら鉄分が豊富な印象ですが、無闇に甘い香りがします。そうそう、粥と言ってもお米がベースとは限りませんよ。
・ゆず茶:緑がかった茶色いジェル。つまりそういう事です。
【NPC】
テレサはおもてなし担当。自分の料理は食べても平気。
マイリンは小賢しくも手伝うふりをして食事から逃れる算段。
何かありましたらお声かけください。
なお、ジャスティンは夜の帰宅を目標に集中治療中、アマデウスもこれに付き添っている為、リプレイには登場しません。決して高飛びしたわけでは。
【他】
・邸内には現在テレサとマイリンしか居ません。
・テレサや彼女の料理の腕前について、噂程度なら知っている事にしていただいて構いません。
・共鳴・非共鳴問わず重体判定の可能性があります。
マスターより
藤たくみです。
一口食べればH.O.P.E.会長にして生粋の英国人たるジャスティンが悟りを開き、二口目の前に誇り高く勇猛果敢で知られるH.O.P.E.きっての英雄アマデウスが早々に逃亡を図り、三口目にして大抵なんでも美味しく食べられるマイリンが引きつけを起こす――そのような料理に、皆様はどう立ち向かわれるのでしょうか。
いずれこの場を凌ぎ切れる強者ならば今後一年の健康も安泰の筈。
そう、これはあくまで風水の理論に則った、冬至の一幕に過ぎません。
ご参加お待ちいたしております。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2016/01/07 19:13
参加者
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/26 00:41:05 -
我、戦場に突入す
最終発言2015/12/29 03:50:55