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絶零 第1フェーズ:リプレイ

PCイラスト
栗原 雅
aa3981
PCイラスト
山田 太郎
aa3891
PCイラスト
朱 桃
aa4279
PCイラスト
井上 英紀
aa1104
PCイラスト
科手 育夜
aa3599
PCイラスト
廿小路 沙織
aa0017
PCイラスト
御手洗 光
aa0114
PCイラスト
佐藤 鷹輔
aa4173
PCイラスト
水瀬 雨月
aa0801
PCイラスト
免出 計一
aa1139
PCイラスト
ナガル・クロッソニア
aa3796
PCイラスト
八朔 カゲリ
aa0098
PCイラスト
虎噛 千颯
aa0123
PCイラスト
月鏡 由利菜
aa0873
PCイラスト
柳生 楓
aa3403
PCイラスト
カグヤ・アトラクア
aa0535
PCイラスト
ミラルカ ロレンツィーニ
aa1102
PCイラスト
ピピ・浦島・インベイド
aa3862
PCイラスト
ツラナミ
aa1426
PCイラスト
藤岡 桜
aa4608
●五里雪中
 ドロップゾーン内部に取り残されたエージェントは、完全に孤立状態に陥っていた。不規則に出現する従魔――イクサカバネの増殖に加え、フロストウルフの大群がエージェントに目を付け、猛吹雪の向こうから攻撃の機を窺っている。
 さらに友軍の戦車部隊がすでに壊滅していることに加え、ドロップゾーンの主であるヴァルリアからも非常に近い位置にあたる。通信障害も重なり味方の援護も期待が薄く、まさに『死地』へ放り込まれた状況といえる。
「通信機が使えないなら、人力で情報伝達よ!」
 そんな中、【蝶】の司令塔である栗原 雅(aa3981)が声を張り上げた。味方や負傷者、敵の位置などの戦況把握が第一とし、小隊メンバーに無線や通信機を併用しつつ、足を使っての情報収集と拡散を命じた。
「今回は情報収集でも危険任務。慎重な行動をお願いします」
「了解アル!」
 情報伝達役となった山田 太郎(aa3891)と朱 桃(aa4279)はそれぞれ別方向へと散っていき、2人同時に『鷹の目』を発動して空へ飛ばす。瞬間、散り散りになったエージェントたちとすでに戦闘が始まっている場所が見え、焦燥を覚えながらも戦場を駆けめぐる。
 各地で発生した小規模の戦闘は、あっという間に広がり激しさを増していった。エージェントたちは近くの味方と連携し、従魔を退けながら他の味方を探す。現状では少数で孤立してしまうことが最も危険であり、仲間との合流が最優先と判断したためだ。
 そこで活躍したのが、【蝶】の情報周知活動だった。人の足と口頭による情報共有は時間がかかるものの、通信障害が生じるドロップゾーンではより正確な情報伝達を可能としていた。
 次第に散開していたエージェントたちの距離は徐々に埋まり、行動指針や連携も統一されるようになる。
「どこだ!? 助けに来たぞ!!」
「生きてたら返事しろ! こんな所で犬死になんてさせねえからな!」
「動ける方はこちらへ! 動けない方がいれば教えてください!」
 人命救助を優先させる井上 英紀(aa1104)や科手 育夜(aa3599)、廿小路 沙織(aa0017)たちは破壊された戦車へ近づき、仲間とともに生存者の捜索に走る。
 英紀は生存者を見つけると即座に負傷の緊急度を判断。適宜『ケアレイ』や『リジェネレーション』を使用し、可能な範囲で自力での避難を補助していく。動けない生存者がいれば育夜や沙織が背負い、仲間の援護を受けながら味方が集まる場所へと戻る。
『皆々様、生き残りたくばわたくし達の元へ! この身を道標と致しましょう!』
 集結するエージェントの中心には、ジャンヌの旗を雪に突き刺し、拡声器で声を張り上げる御手洗 光(aa0114)の姿が。大きく響く声にフロストウルフも集まるが、同時にエージェントや軽傷だった生存者も効果的に集めている。
「がんばってください!」
 ただ予想以上に生存者は少ない。散った命に歯噛みしつつ、沙織を始め治療に専念するエージェントたちが重傷者から優先して応急処置を施していく。無防備になる治療班の周囲は、護衛役を担うエージェントたちが展開して従魔の攻撃に対応していた。
「敵を散らすぞ!」
 佐藤 鷹輔(aa4173)は近寄る敵にバイルバンカーを打ち込み、積極的に敵の注意を引きつける。
「次から次へと、きりがねぇ!」
 味方と連携して攻撃を集中させて敵を減らす弥刀 亮(aa0822)は、倒したそばから集まってくるフロストウルフの群れに悪態を吐く。
「とはいえ、敵も決して無限じゃないわ」
 厳しい状況でも冷静な水瀬 雨月(aa0801)はリフレクトミラーを利用し、乱反射させた魔法攻撃で密集する敵へと浴びせた。そうしてエージェントたちは味方を庇いながら迎撃し、1体でも多く敵の数を減らして突破の糸口を見出そうと奮戦していた。
「敵が手薄な場所は……」
 一方、免出 計一(aa1139)は迎撃の中でも退路の確保を目指し、敵の包囲網の穴を探す。
「色出さん! あまり離れすぎては危険です!」
 そこを通りかかった太郎が、味方から離れつつあった計一へ注意を飛ばす。
「あ、っ! 山田さん! お願いがあります!」
 すると、計一は太郎の通信機を見て何かを閃いた。
「……わかりました、試してみます」
 それに短く了承を返した太郎は、一度雅の元へと身を翻した。
「戦況は大体見えてきたね」
 集まった情報を元に、雅は随時更新する戦況図を作りつつ、通信機片手に呟く。
 現状、この場に取り残されたと確認されたエージェントは戦力をほぼ二分させている。敵の動きもまた、それに応じてか多少の偏りが見えてきた。
 1つは救助と脱出に動く隊であり、主に相対する敵はフロストウルフ。エージェントたちの牽制と迎撃のおかげか敵の攻勢はやや鈍く、戦闘は散発的だった。が、戦力差を考えると、膠着状態も長くは持たないだろう。
 逆にもう半分の戦力の多くは、情報収集に動いた段階ですでに活発な交戦状態に入っていた。そのため情報伝達が遅れている上、戦闘に引き寄せられるようにイクサカバネがそちらへ集まっていることがわかっている。
 戦闘が激化していた原因は、この戦場に現れた愚神でも従魔でもない存在によるもの。
「……ちょっとまずいかな?」
 さきほど更新した戦況図を見下ろし、雅は苦い表情で新たな指示を出した。脳裏によぎる、嫌な予感を振り切りながら。


●対峙切言
 もう1つの主戦場は、救助と脱出を図る隊からやや離れた位置にあった。
「っ! 東海林さん!」
 それはドロップゾーンが形成されてすぐ。ナガル・クロッソニア(aa3796)が飛ばした『鷹の目』が、東海林聖(aa0203)の姿をした邪英Le..(aa0203hero001) を発見したことに端を発する。
 近くにはナガルが所属する【駄菓子】の他、【戦狼】、【鶏鳴机】、【救命華】などの小隊が複数固まっていたことも手伝い、その場にいたエージェントたちはすぐに現場へ急行した。
「へェ? 向こうからお出ましとはな」
 Le..もエージェントの接近を察知し、得物を構える。その目に宿るのは親愛ではなく、戦いに酔い狂う殺意だけ。周囲にはイクサカバネが多数展開し、両戦力は瞬く間に衝突した。
「あの馬鹿を叩き起こす。行くぞ!」
 八朔 カゲリ(aa0098)は短く【戦狼】メンバーへ告げると、瞬時に戦闘陣形を組んでLe..へ攻撃を集中させる。
「俺ちゃんが守ってやる! だから気にせず突き進め!!」
【駄菓子】を率いる虎噛 千颯(aa0123)はLe..と従魔の相手で班を分け、自身は突出するナガルの援護へ回った。
「面白ェ!!」
 エージェントたちの集中砲火を前に、しかしLe..は怯まない。逆に獰猛な笑みさえ浮かべ、真正面から突っ込む。戦闘本能とカンを働かせ、近接武器は回避し、遠距離武器は弾き、魔法攻撃は従魔を盾にかいくぐる。
「うぐっ!?」
 月鏡 由利菜(aa0873)はLe..の《クロスカウンター》に『クロスガード』の盾で防ぎ、大きく後退。【鶏鳴机】の援護を受けながら、Le..を消耗させるため積極的に肉薄する。
「帰ってきてください聖さん! そこは! 貴方の居場所じゃないんです!」
 転じて別の前衛に目を付けたLe..の一撃を、柳生 楓(aa3403)が割り込んで防御。心から訴える叫びも空しく、盾越しに帰ってきたのは小さな舌打ちだけ。
「東海林っ、さんのっ!」
「あ?」
 すると、急速に接近する一団を発見したLe..は後退しながら装備を弓に持ち替え、躊躇なく矢を放った。
「やらせるか!」
 中心にいた少女を狙い澄ました一矢は、前方へ展開した千颯の『ライヴスミラー』が遮る。反射された矢が2射目を撃墜し、続く攻撃も【駄菓子】のメンバーが体を張って止めていった。
 攻撃の勢いが弱まったところで、一切足を止めなかった少女が突出する。
「ばかーーーーー!!!!」
「ぶ、っ!?」
 一気にLe..の懐に入ったのは、ナガル。『猫騙』で動きを一瞬止めた後、強烈なビンタを顔面に食らわせた。
「心配せずに待ってろって言ってたじゃない! ねえ、“聖さん”!」
 さらにナガルは『ジェミニストライク』で最接近。Le..に取り込まれた聖へ必死に呼びかける。
「……くはッ! テメェと殺し合えるのは、楽しそうだなッ!」
 一瞬の間を置き、されどLe..は武器を大剣に持ち替え即座に臨戦態勢に。仲間の声は未だ響かず、漆黒のライヴスを纏って紅風と紫電を弾けさせた。
「駄目です、聖さん!」
 ナガルへと狙いを定めたLe..の前に、再び楓が立ちふさがる。が、《反撃の狼煙》で高まった大剣の威力に押し負けそうになり、楓は『ライヴスヒール』で何とか持ち直した。すぐさま『リンクコントロール』でライヴスを活性化させ、次の攻撃に備える。
「二人を縛る絶対零度の枷、私とラシルで断つ!」
 動きが止まったLe..に隙を見出した由利菜が、装備を剣へと変更して攻勢に出る。ゼストスオーブの熱を剣へ宿し、幾筋もの剣閃を走らせLe..へのダメージを重ねるために猛攻を仕掛けた。
「今のお前は強いだけで脅威じゃない。……好い加減起きろよ、この馬鹿が!」
 さらに連携を重視して後ろにいたカゲリが、急速に距離を詰めてから『ライヴスシールド』でLe..の大剣を受け、直後に魔導銃を連続で射出。回避の移動先を誘導してさらに接近し、銃床で思いっきり殴りつけた。
「ちっ!」
 さらに強まるエージェントからの攻勢に、Le..は口から血を吐き出して一時的に後退。その際、周囲のイクサカバネを殴打や蹴撃で吹き飛ばしては、自身へ迫るエージェントの攻撃と相殺する盾にしていく。
「……あん?」
 すると、Le..は吹雪の向こうに微かな光と声を捉えた。その方角に先ほど潰した戦車の面影を見て、Le..の顔に悪意の三日月が象られる。
「何だありゃ……向こうの方も楽しめそうだなァ!」
 別の獲物の存在に歓喜を露わにし、Le..はエージェントの攻撃を退けながら光と声を頼りに移動を開始。自身への追撃と追跡には残存するイクサカバネをけしかけ、強引にエージェントたちを突破する。
 慌ててLe..を追おうとしたエージェントたちだったが、突如発生した凄まじい強風に足が一瞬止まってしまう。
『ヴァルリアが、動き出したアル! すぐに、ここから離れないと、ボクたちも危ないアルよ!』
 次いで飛び込んできたのは、戦場を走る【蝶】所属の桃から拡声器で伝えられた、最悪の情報だった。よほど急いできたのか、桃の肉体にはどころどころに負傷が刻まれ息は何度も途切れる。強風とともに運ばれた肌を刺す強い冷気も手伝い、否応なしにそれが事実だと理解させられた。
 火急の事態にエージェントたちもLe..が向かった救助・脱出隊の方へと足を向ける。しかし、エージェントの周囲にはまだ多くのイクサカバネが存在し、進路を塞ぐように一斉に襲いかかってきた。


●絶零覚醒
 他のエージェントが救助と邪英に集中していた頃、一部のエージェントはあえてヴァルリアの近くへと集まっていた。目的は人型となったヴァルリアの情報を得るための偵察であり、あわよくば痛撃を与えて消耗させようと考えていた。
「アレが動かぬのは肉体の最適化処理を行っておるからじゃろうな。くふふ、邪魔してくれようぞ」
 威力偵察を目論むカグヤ・アトラクア(aa0535)は、【luar】のメンバーと作戦を共有した後、ヴァルリアへと吶喊する。
「氷の中に、心は置いて行く」
 また『ライヴスフィールド』を展開したミラルカ ロレンツィーニ(aa1102)も武器を構え、【luar】に続いてヴァルリアの前へと姿を現した。幸福な人を傷つけた敵を討つために。
 周囲に散らばる竜殻のただ中で沈黙を保っていたヴァルリアだったが、エージェントの接近に呼応しゆっくりと浮遊。近づいてくるエージェントへは氷の刃で、距離が離れた対象には針金のように細いレーザーを射出して応戦する。
 それと同時に、ヴァルリア周辺でもイクサカバネが出現。他の戦場と比べると数は少ないが、ヴァルリアと交戦するエージェントの数もそう多くない。無視していい存在ではなく、敵への注意が分散してしまう。
(今回あたしはサポートだよー!)
 戦闘の中、『潜伏』を使用したピピ・浦島・インベイド(aa3862)は崩れたウーニジェの街を駆け回る。ヴァルリアへ攻撃するエージェントたちへ近づき敵の位置を伝え、時に回復アイテムを使用し補助に徹する。
「はぁ……死ぬほどめんどくせぇ」
 少し離れた場所では、【幽世】メンバーとともにいるツラナミ(aa1426)がため息を漏らす。38(aa1426hero001)に操作を一任した『鷹の目』にカメラをつけ、ヴァルリアの戦闘を映像として記録していた。
「さて、仕切り直し、かな」
 また、念のためにと『マジックアンロック』で罠の探知を行うアリス(aa1651)は、状況把握を優先。極力戦闘を避けてヴァルリアとイクサカバネの動きを観察し、この場から動かない意図を探る。
「――愚かな」
 すると、仲間の誰でもない声が耳に届き、エージェントたちはほんの一瞬動きを止めた。
「あらゆる値は熱的死の端緒だ……プラスはいずれ滅びへ至る。貴様らの熱もまた……!」
 冷徹で泰然とした口調は人のものとは思えなかったために、自然と声の主をたどる視線は一点へ集束する。
「故に告げる。私と共に、零へと還れ」
 氷の巨竜から現れた異形の人型、ヴァルリアへと。
「愚神と心中するのは御免よ」
 ヴァルリアの言葉に反応したミラルカは、『リジェネレーション』を自身に施し疾走。従魔の妨害を無視しながら単身でヴァルリアへと肉薄し、『ブラッドオペレート』の刃を突き立て、切り抜けた。
「今じゃ!」
 先陣を切ったミラルカを見て、カグヤは【luar】へ一斉攻撃の合図を出す。様々な攻撃がヴァルリアの間接や腰などへ集中して浴びせられる中、カグヤ自身もまた負傷を気にせずチェーンソーを真っ直ぐ叩きつけようとする。
「静止せよ」
 声が、響いた。
 カグヤは、自身のチェーンソーがきしみ、自らの腕までもが動きを鈍らせていることに気付き、はっとして飛び退いた。
 ヴァルリアに迫っていたエージェントたちの攻撃が、弾丸や矢は無論、魔法系のライヴス攻撃に至るまでもがヴァルリアに迫るに従って動きを鈍らせて行き、それらはやがて、ヴァルリアに触れる前に完全に空中で静止した。
「ライヴスが凍るじゃと……!?」
 距離を取ったカグヤの手の中で、チェーンソーが再び唸り声をあげた。
 ヴァルリアが首をもたげた。
「――還れ、零に」
 瞬間。
 ヴァルリアを中心に極寒の中でなお凍結を強いる衝撃波――《フリーズ・ウェイブス》が吹き荒れる。ヴァルリアとの戦闘に参加していた音無 禊(aa0582)や仲間の援護に尽力していた藤岡 桜(aa4608)も含め、ヴァルリアを囲んでいたエージェントたちへ衝撃波が襲いかかった。
 両腕を広げ、佇むヴァルリア。周囲の全てを凍り付かせたそれは、深呼吸するようにゆらりと肩を下ろしていく。
「……潮時だな」
 有効範囲の外にいたツラナミはそう呟き、近くにいた従魔への『霊奪』で再び『鷹の目』を生成してカメラを回収。すぐに【幽世】のメンバーにデータの保存と管理を任せ、意識のないエージェントを拾いつつ離脱した。
「大変だー!」
 ヴァルリアから一定の距離を保ち、難を逃れていたピピは浦島のつりざおで前衛だった味方を引き寄せる。他のエージェントとも協力し、【luar】や攻撃へ参加したエージェントたちを急いで救助していく。
「……回復中か合流待ちだったのかは知らないけど、これ以上ここにいるのは危険だね」
 アリスもまた情報収集の限界を察し、『重圧空間』を使用し敵の動きを制限。味方の救助と撤退を支援しつつ、少しの間動きを止めたヴァルリアから全力で距離を離していった。
「…………」
 撤退していくエージェントたちの背中を、ヴァルリアは無言で睥睨する。その身にはエージェントの集中砲火によって削られた傷跡が残っていたが、しばらくすると傷跡が徐々に凍結していき、最後には跡形もなく消失した。


●九死一生
 邪英Le..やヴァルリアとの戦闘を経て全員が集結したエージェントだったが、戦況はかなり不利に陥っていた。
「そらあッ!!」
「っ! いささか厳しい状況ですわね」
 付近の味方を集合させるため行動した光だったが、先ほど使用した花火の思わぬ効果に表情は厳しい。視線の先には、護衛を担っていたエージェントへ大剣で切りかかるLe..の姿があった。
 合図としての効果は確かにあった。おかげで、ヴァルリアから逃げ延びたエージェントたちと、迷うことなく合流ができたのだから。
 しかし、次に現れたのは残る仲間ではなく、敵であるLe..。治療を受ける負傷者の姿を確認すると、執拗にそちらを狙い始めた。それを契機にフロストウルフの攻勢が増し、さらなる苦境に立たされていた。
 しばらくしてからイクサカバネに進路を阻まれていたエージェントたちとも合流できたが、すでに全員が無傷ではない。休む暇もない戦闘で体力も精神も疲弊し、すでに焼け石に水でしかない回復手段も底を尽きつつある。
 比較的負傷の軽いエージェントたちが防戦に徹することで死者は出ていないが、ギリギリで保っている膠着状態が瓦解するのは時間の問題。
 しかし、エージェントたちの命運はまだ断たれていなかった。
「来た!」
 雅の耳に味方部隊からの通信が届いた瞬間、寒波を切り裂いて飛来した複数の砲弾が、従魔の後方を地面の雪ごと吹き飛ばした。
「ちっ! ……うぜェな!」
 すぐにライヴスの通った攻撃ではないと看破したLe..。だが、着弾の衝撃で大量に飛散した雪のせいで行動が大きく阻害され、エージェントへの攻撃の手が明らかに緩んだ。
「逃げよう! 一旦退かないと、今度は俺たちが危ない!」
 連続する砲撃の中、計一が仲間たちへ撤退を呼びかける。太郎に依頼した後方部隊からの支援要請が、何とか間に合ったのだ。戦況図を作成する【蝶】を通したことで砲撃の精度も高く、敵は大きく動揺している。
 撤退するなら、今しかない。
「従魔の群れもドロップゾーンも食い破って脱出すんぞ! 生きてるやつは続け!」
 脱出のチャンスに気炎を上げた鷹輔は、背後へ回り込もうとするフロストウルフの群れへ『サンダーランス』をぶちかまし、未完の包囲網に風穴を空ける。
「邪魔するなら、全て薙ぎ払うだけよ」
 続けて雨月が『ブルームフレア』や『ゴーストウィンド』でさらに敵を散らし、強引に傷口を広げて突破口を作り出した。2人の攻撃を皮切りに他のエージェントたちも攻撃を集中させ、同時に脱出へ向けて走り出す。
「邪魔だ、どけぇ!」
 進撃を妨害しようと動くフロストウルフへ、英紀は積極的に迎撃する。倒すためではないため深追いはせず、他の仲間と共に進路の邪魔になる敵だけに集中して撃退していった。
「オレたちが生き残らなきゃ意味ないだろ! 次で助けるためにも、今は死に物狂いで走れ!!」
 中には重体でまともに動けない者や、邪英のまま取り残す仲間に未練がある者もいたが、育夜はそれらを一蹴。少なくない数の負傷者を運搬すれば撤退の足はどうしても鈍るが、余力のあるエージェントで負傷者を担ぎ、鼓舞しあいながら足を懸命に動かす。
「この風じゃ微妙だが、ちったぁマシになるか……?」
 何とか突破してもなお執拗に追跡する敵に対して、亮がキャンドルを一気に燃やして香りを散らした。すると、さほど強い匂いではなかったが風下にいたフロストウルフの動きがわずかに乱れ、多少の時間稼ぎに成功する。
「しつこいわよ」
「こいつもおまけだ!」
 それでもエージェントたちの背後へ迫ったフロストウルフへ、殿として隊の後方へ移った雨月がリフレクトミラーの魔法で、鷹輔が『ブルームフレア』の爆風で無理矢理足を止めさせた。
 そうしてエージェントたちは抵抗と逃走を続け、敵を振り切っていく。
「逃げられたか。……まあいい。あの様子なら、どうせまた戦(や)り合うことになりそうだしな?」
 フロストウルフと同じく、砲撃の風圧で動きが制限されていたLe..。エージェントたちが消えていった方角を見据え、大剣を肩に担いでほくそ笑む。去り際に平手を受けた頬を乱暴に拭ってから、Le..は他の従魔と共に吹雪の中へ消えていった。

 その後、エージェントたちは疲労を押して猛吹雪の雪原を突き進み、後方から援護にきてくれた部隊との合流を果たした。安全圏へ退避するまで警戒は続けながら、味方部隊の護衛を受けてようやくドロップゾーンから脱出することに成功する。
 敵地に分断されたエージェントたちのダメージは深く、特にヴァルリアと相対して重篤なダメージを負った者はすぐに治療へと回された。それだけでなく、結局邪英化した仲間を取り戻せずに帰還したことを悔いるエージェントの姿も多く見受けられた。
 せめてもの救いは、あの絶望的な状況で死者や新たな邪英を生まずに済んだことと、姿を変えたヴァルリアの映像データを持ち帰れたことだろう。猶予はあまりないだろうが映像の解析を行うことで、次にヴァルリアと対峙する時に優位を得られる可能性がある。
 肉体的にも精神的にも大きな消耗を強いられた撤退戦は、こうして幕を閉じることとなった。

担当:
一 一MS
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社
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