• 0
  • 68,065
  • 22,451
キャラクター基本画像
ゲスト(aa0000)
スターコイン購入 マイページ キャラクター切替
お気に入り

神月 第2フェーズ:リプレイ

PCイラスト
寫眞 撮生
aa4007
PCイラスト
飛岡 豪
aa4056
PCイラスト
虎噛 千颯
aa0123
PCイラスト
ナガル・クロッソニア
aa3796
PCイラスト
大宮 朝霞
aa0476
PCイラスト
シールス ブリザード
aa0199
PCイラスト
荒木 拓海
aa1049
PCイラスト
千石 琉
aa0685
PCイラスト
豊浜 捺美
aa1098
PCイラスト
加賀美 春花
aa1449
PCイラスト
小詩 いのり
aa1420
PCイラスト
エリーゼ・シルヴィーナ
aa1502
PCイラスト
東城 栄二
aa2852
PCイラスト
努々 キミカ
aa0002
PCイラスト
ミハイル・エッカート
aa0315
PCイラスト
蔵李・澄香
aa0010
PCイラスト
江口 焔
aa1072
PCイラスト
枯不木 恵
aa4293
PCイラスト
九龍 蓮
aa3949
PCイラスト
天都 娑己
aa2459
PCイラスト
鹿島 和馬
aa3414
PCイラスト
呉 琳
aa3404
PCイラスト
鵜鬱鷹 武之
aa3506
PCイラスト
科手 育夜
aa3599
PCイラスト
エミル・ハイドレンジア
aa0425
PCイラスト
六鬼 硲
aa1148
PCイラスト
獣臓
aa1696
PCイラスト
泉興京 桜子
aa0936
PCイラスト
廿小路 沙織
aa0017
PCイラスト
御手洗 光
aa0114
PCイラスト
セレナ・アリーヤ
aa2181
PCイラスト
魅霊
aa1456
PCイラスト
ギシャ
aa3141
PCイラスト
鞠丘 麻陽
aa0307
PCイラスト
鶏冠井 玉子
aa0798
PCイラスト
鯨井 寝具
aa2995
PCイラスト
一色 綾香
aa4051
PCイラスト
椋実
aa3877
PCイラスト
零月 蕾菜
aa0058
●混戦
「見つけたよォ! ご新規英雄様が1、2、3。召喚はこれで打ち止めが近いみたいだねぇ。護衛担当の皆々様、彼らのエスコートをよろしく!」
 本陣である見張り塔の最上部に陣取った寫眞 撮生(aa4007)が声をあげた。
 新たに門より吐き出されてきた3名を含め、20名を越える傷ついた英雄たちは未だレガリス・エニアの包囲陣の内だ。彼らを救出し、保護するため、『護衛』を任に選んだエージェントたちが目抜き通りへ突入した。
「予想はしてたけど……発見するどころじゃなかったな」
 顔をしかめる黒野日和(aa0415)。彼はいずれレガリス・エニアが英雄たちへとどめを刺すため、円形闘技場から這い出してくるものと考えていたが……20体ものレガリス・エニアがそのとどめに出てきていたのだ。
「【蝶】!? こちら黒野! レガリス・エニア20が通りで包囲陣作ってる! 情報の更新と連絡頼むよ!」
「爆炎竜装ゴーガイン、ここに参上! 死神ども、これ以上好きにはさせん!」
 日和が情報担当の【蝶】へ連絡する中、リーダーである飛岡 豪(aa4056)とともに【ST】小隊が、そして【駄菓子】小隊が駆ける。
「俺ちゃんたちも遅れちゃダメだぜ!」
 【駄菓子】リーダーの虎噛 千颯(aa0123)が勢いよく叫ぶ横で、同僚のナガル・クロッソニア(aa3796)が報告した。
「鷹が墜とされたよ! ほかの人たちのも――! 偵察不能!」
 それを聞き、同じく【駄菓子】の大宮 朝霞(aa0476)が単騎駆け。
「ウラワンダーがいるかぎり! 英雄さん達には指一本触れさせません!!」
 愛用のレインメーカーを掲げ、誰よりも先に包囲陣へ突っ込み、英雄たちをかばった彼女に贈られたものは、喝采ならぬ謎の呪文と指先。
 魔方陣より這い出した雷撃が朝霞へ殺到し。
「……倒れません。私の後ろにいるみなさんを死地から還すまで!」
 撃ち据えられた朝霞が、傷ついた体をそれでもいっぱいに広げ、高く告げた。
「第1話が『さらば、ウラワンダー!』はキッツイぜ!」
 続くレガリス・エニアの雷撃を背で止め、千颯が朝霞に口の端を吊り上げてみせた。
「痛みと苦しみ、朝霞だけに背負わせるものか。正義の灯、ゴーガインが消させはしない!」
 千颯と共に朝霞をかばった豪も熱い言葉を紡ぎ、包囲陣へ突入してきた仲間たちを強い目で導いた。
「【ST】は回収担当の安全を確保するため円形闘技場へ! 最前線で防衛ラインを構築するぞ!」
 その間に他のエージェントが、英雄へと迫るレガリス・エニアどもに攻撃をしかけるが。
「――固い!」
 【ST】の咲魔 慧(aa1932)は取り落としかけた天雄星林冲をあわてて握りなおす。
 レガリス・エニアが展開する魔法障壁レギ・スクトゥム。1体が複数展開するこの障壁は、物理・魔法問わずあらゆる攻撃に有効だ。
 これを叩いた蛇矛はあえなく弾かれ、慧の手を痺れさせた。
「だが! 絶対壊せないわけじゃないんだろう!?」
 ……レガリス・エニア対応担当たちが1ラウンドめから死闘を繰り広げる中、回収担当たちは戦火をかいくぐり、英雄を保護していた。
 回収を主任務とした小隊【遺跡】を率いるシールス ブリザード(aa0199)が夜闇にその声音を響かせる。
「回収担当は小隊も個人も連動して動いてくれる? 【遺跡】の回収班は救出した英雄を順番に治療担当のところに搬送。通りが綺麗になったら門のほうに向かうよ」
 彼の前方では、同じ【遺跡】の対応班がレガリス・エニアの足止めを行っていた。
「ぐ!」
 レガリス・エニアの目を英雄から引きはがすべく、天雄星林冲を大きく振ってオーラの炎をひらめかせた荒木 拓海(aa1049)が膝をついた。
 彼は先の戦いで受けた深手が癒えきらないうち、この戦いへ身を投じることとなった。その代償が今、彼を窮地へと追い込んでいる。
「でも――オレはがんばるしかないんだ!」
 果たして拓海はレガリス・エニアの光線に撃たれ、崩れ落ちた。
 そこへ迫る追撃を受け止めたのは同僚、千石 琉(aa0685)だった。
「貴重な納税者を減らすわけにゃいかんよ。そしたらわしの年金も減るからな!」
 体を張って若者を助けた自称・元市長の目は、澄んだ光を湛えてきらめいていた。
「――あー、もう! あぶなそうな人から助けるんだけど、みんなあぶなそうで誰があぶなそうかわかんない!」
 こちらは友だちの豊浜 捺美(aa1098)と【双桃華】という小隊を組み、英雄回収にあたっている加賀美 春花(aa1449)である。
 消えかけている英雄を優先すると決めていたが、素人目には誰もが重傷で、まるで見分けがつかないのだ。
「動いてない人優先! 動いてる人はまだ大丈夫!」
 幻想蝶に倒れ伏していた英雄を回収し、うめいている別の女性英雄をお姫様抱っこした捺美が春花を振り返る。
 その張り詰めた視線に、春花はぐっとうなずいて。
「わかった! ――動いてる人も後で全員、絶対助けるから!」

●防戦
 護衛担当者たちの戦いの後ろで別の戦いを繰り広げるのは治療担当者たちだ。
「はい、次の人ケガ見せて。……これならまだ大丈夫。あっちの人を先に!」
 純白のシスター、小詩 いのり(aa1420)が、見張り塔後方に設置した治療陣地を駆け回りながら傷ついた英雄たちを、運び込まれてくる仲間たちをSTART式トリアージ(緊急性を要する人を救助するため行うふるい分け)に従って振り分けていく。
 そして自らが率いる【ゆるり】小隊へ、他の回復担当者たちへ、張り詰めた声音で指示を飛ばした。
「【蝶】からの報告だと、この後いっぱい英雄のみんなが運ばれてくる! 受け入れ体制整えて!」
 果たして。英雄を幻想蝶の内に収納し、腕で抱え、背に負った面々が、一斉に陣地へ駆け込んできた。
「命を失うほどの怪我じゃないわ。死ぬ気になるより生きるほうが簡単」
 淡々と、しかしやわらかな微笑みを浮かべ、重傷者に回復スキルを、軽傷者に薬と包帯を与えてまわるエリーゼ・シルヴィーナ(aa1502)。
「こちらの方にケアレイをお願いします! 軽傷の方は私が!」
 新人の酒又 織歌(aa4300)は、いのりの作業を補助するように軽傷者と重傷者を振り分けながら情報を整理していた。
「補給担当のみなさんに医薬品の運搬をお願いしないと……」
 早くも用意していた医薬品は不足し始めている。だからといって回数の限られたスキルを乱発しては、治療の手立て自体が途絶えてしまう。早急に補給の算段を――
 どん。思案する織歌の50メートル左方で、砂が噴水よろしく高く跳ねた。

「見張り塔や治療陣地に影響のない弾は無視して構いません! 直撃弾を割り出して火線を集中してください!!」
 イル=エルグ砂漠に現われた長距離砲撃従魔ディッケ・カルラ。その砲撃の撃墜を担当する小隊【命綱】のリーダー、東城 栄二(aa2852)が声音を張り上げた。
 その声をスタッカットに打ち消す迫撃弾の炸裂音。
 姿見えぬ敵を透かし見、栄二は低くつぶやいた。
「これ以上、誰ひとりとして傷つけさせませんよ」
 そのつぶやきに応えるように、【大企業】小隊の面々があらゆる手段を講じて弾道を計測し、仲間たちに告げる。
「人類の英知を用いれば、このような戦い方も出来るッ!」
 小隊で集めたあらゆる情報を弾道学にぶちこんで再計算し、努々 キミカ(aa0002)が答を弾き出した。
「3秒後、左上、仰角108度!!」
 機械化された右目をすがめ、【大企業】のリーダー、ミハイル・エッカート(aa0315)が号令。
「砲弾に嫌な上司の顔を思い浮かべろ! ――俺の顔でも構わん。撃ち落とせ!!」

「焔さん、準備いいかな!?」
 フリフリのノースリーブ衣装をまとった蔵李・澄香(aa0010)が、共に準備を進めていた江口 焔(aa1072)に声をかけた。
「ああ。特に俺の体の一部はな」
 治療担当の【ゆるり】に所属しながら撃墜担当へ回ったふたりは、かき集めた灯を一斉に点灯。ついでに点火された花火から七色の火花を吹き上げさせた。
 ――ここは塔より数百メートル離れた砂漠のただ中。ふたりは敵の砲撃を引きつける偽装陣地を作り上げていた。補給陣地を……仲間と英雄を守り抜くために。
「ここからが勝負だよ。従魔の好きになんてさせないんだから!」
「好きにするのは俺だ! いや、好きにされるのも俺だ!」

「――各情報の更新完了。【蝶】使用者に送信します。シェイネさん、新しい情報は?」
 戦場が発する全情報の整理と伝達を旨とする【蝶】小隊の枯不木 恵(aa4293)が、同僚のレグナ・シェイネ(aa3933)に目を向けた。
「あ、は、はい。治療担当から医薬品の支給要請が次々と。あの、かなり、困ってるみたいですねえ」
 おどおど答えるレグナ。しかしその目は目まぐるしく更新される情報を写し出すスマートフォンに釘づけられ、頭脳はその確認と振り分けに高速回転中だ。
「鷹がいれば情報を立体的に整理できるのですが……早々に落とされたのは痛いですね」
 ため息をつく恵を、レグナが「あ」と呼び止めて。
「ティリアさんから連絡です。アメリカ空軍基地からの輸送機が到着するそうです」
 レグナからの情報を即座に通信機で伝達し、恵は暗い空をあおぐ。
「どうか無事で……」
「きっと」
 大丈夫――あえて最後まで言わず、レグナはあふれ出る情報の泉に目線を戻した。

●激戦
 闘技場前では【ST】、【駄菓子】を中心に防衛線が形成され、エージェントたちが押し寄せるレガリス・エニアを押し返そうと力を合わせていた。
「まったく……これじゃあキリがないな」
 慧が血で汚れた頬をぬぐい、荒い息をついた。
 連携を尽くして数体のレガリス・エニアを倒すことには成功している。
 しかし、闘技場から這い出してきた増援の障壁が重ねられ、文字通りの鉄壁と化してエージェントの前に立ちはだかり、それどころか押し込んでくる。
 防衛線はその機能を充分に発揮することができず、ところどころが綻んでいる状況。レガリス・エニアは、その綻びからじわりじわりと浸透しつつあった。
「ここ、分水嶺」
 いつもなら英雄に任せて内に引っ込んでいる九龍 蓮(aa3949)が表に立ち、ライヴスフィールドを張った。
 その結界を踏み越え、レガリス・エニアの一群が未だ残された英雄へ覆い被さらんと迫る。
「私たちの希望を消させたりはしません……!!」
 捨て身の構えからレガリス・エニアへ屠剣「神斬」を叩きつける【駄菓子】の天都 娑己(aa2459)。しかし、その突出はレガリス・エニアどもにからめとられ、押し潰される――
「俺の特別な人をいじめんのは断固阻止だぜ!!」
 レガリス・エニアの背を踏んで跳躍。頭から跳び込んできた鹿島 和馬(aa3414)が、娑己を斬り刻まんとした魔法剣をその身に受けた。
「和馬さん――!」
 娑己が自分に覆い被さった和馬へ呼びかけるが、いつもの軽口は返ってこない。
 そして、和馬ごと娑己を刺し貫かんと、レガリス・エニアどもは静かに剣を振り上げる。
「させるかーっ!」
 ふたりの同僚、呉 琳(aa3404)の威嚇射撃が1体のレガリス・エニアの剣を弾き。
「うぉあーっ!!」
 なぜかぶっ飛んできた千颯の体が残りの剣をその体で止めた。
「――寄生主が華々しく散った。さて、次は誰に寄生しようかな」
 千颯を蹴り飛ばした張本人である鵜鬱鷹 武之(aa3506)は面倒そうに吐き捨て、レガリス・エニアの背に毒刃を打ち込んだ。
「待て待て! 俺ちゃんまだ死んでないから!!」
 この【駄菓子】が描いた一連の流れが、回収担当に英雄救出の時間を与えることとなった。
「回収完了だ! オレはこのまま治療担当の陣地までひとっ走りするぜ! ……ぜってー助けてやるからな。死ぬなよ!」
 英雄救出を任とする【MT】小隊の科手 育夜(aa3599)は、取り残されていた最後の英雄を幻想蝶に迎え入れ、その狼の足で全力走行。あっという間に戦場から遠ざかる。
 【MT】のリーダー、羽柴 丸々(aa4017)は、うっそりとこちらへ向きなおるレガリス・エニアどもの前に立ちはだかり、通信機に声音を吹き込んだ。
「【蝶】っすか? 【MT】の羽柴っす。重傷者の回収、終わったっす。あたしたちは自分で歩いてる英雄さんたちが見張り塔に着くまでがんばるっすよ」
 そのとなりまで下がってきた豪が強化鎖鎌「オロチ」を手に丸々へうなずきかける。
「全小隊、全エージェントで力を合わせるぞ。なんとしてでも奴らの追撃を阻む」
「了解っす」
 豪のとなりに、右に。
 丸々の後ろに、左に。
 エージェントたちが今、集結した。
 護衛担当者たちの戦いが、新たにして最終の局面を迎える。

 見張り塔付近で補給物資の到着を待っていた補給担当エージェントたちの元へ、ついに恵からの連絡が入った。
『予定どおりに空輸便が出立しました。補給担当のみなさん、お願いします』
「ん、わかった。うどんひろいに……行く」
 【饂飩】リーダー、エミル・ハイドレンジア(aa0425)がこくりとうなずいた。
「いや、物資にうどんはないだろ」
 薄暗い顔で答えたのは彼女の部下である地堂光(aa4284)だ。
「物資の投下地点へ急ぎましょう。撃墜担当のみなさんが持ちこたえてくれているうちに」
 六鬼 硲(aa1148)が厳しく引き締めた面をうなずかせ、一同を促した。

 こちらは撃墜担当エージェントたち。
「右に2度修正! 行けぇ!!」
 双眼鏡を手に観測手を務める獣臓(aa1696)が狙撃手である泉興京 桜子(aa0936)へ告げ。
「ぬおーゆくぞー!」
 獣耳をきゅぴんと立てた桜子がスナイパーライフルの引き金を引き絞った――命中。
「よしっ! 次だ次!」
 その間にも、観測を任とするエージェントたちが次々と観測結果を弾き出していく。
「左、仰角73度!」
「正面仰角59度!」
「右仰角、64度!」
「……御手洗様」
 【天魔失楽】小隊に所属する廿小路 沙織(aa0017)が、憂いの目をリーダー御手洗 光(aa0114)へ向けた。
「はい。計算が、追いつかなくなってきておりますわね」
 ディッケ・カルラの迫撃の精度は低い。
 しかし、その精度の低さは予想外の場所へ弾を落とすことがあり、その可能性がある以上すべての弾道を追い、撃墜の必要性を判断しなくてはならないのだ。
 10秒に6発、バラバラのタイミングで降りそそぐ、正確性のない必殺の弾。それに対する弾道計算担当者たちは激しく疲労し、そして……。
「……全員の収容、及び撤退完了まで気を抜いてはいけませんわ。よろしくて?」
 光は霞を帯びた目を指先でこすり、弾道の計測へ意識を集中させた。

 偽装陣地では澄香と焔が密かな死闘を演じていた。
「火線の演出、できてない……!」
 夜空へラジエルの書からクラリスミカ付き白カードを撃ち放し、澄香が砂へと倒れ込んだ。
「演出じゃなく、本気で迎撃してるんだがな……」
 アーバレスト「ハストゥル」を手にした焔も砂の上に座り込み、荒い息をついている。
 ただふたりで本陣を騙ろうとした代償は、何十発もの迫撃弾だった。
 半分以上は撃墜した。しかし、4割以上は偽装陣地の内や外へ落ち、その爆風と衝撃でふたりを打ちのめした。
「でも、それだけみんなの安全、確保できてるってことだし」
 伏したまま強い言葉を紡ぐ澄香のとなりにぶっ倒れながら、なにを想像したものか、切れた唇をほんのり笑ませる焔だった。

 戦いの進行に比例し、治療陣地は苛烈さをいや増していく。
「緑、黄、緑、緑、黄、赤――緊急治療!」
 緑は専門医の治療を必要としない軽傷、黄は緊急の治療が必要ない中傷、赤は速やかな処置が必要となる重傷。運び込まれてくる英雄とエージェントの状態を見て即座に判断、いのりが他の回復担当者へ指示する。
「お願い……!」
 銀の髪を閃かせ、セレナ・アリーヤ(aa2181)が最後のケアレイを重傷の英雄へかけた。
「だめ――このままでは!」
 回復量がまるで足りない。
 なにもわからないままこの世界へ引きずり落とされた英雄が、ただ死んでいき、永遠に失われてしまう。
「この方とともに後方へ下がります。門の影響下から離れてライヴスを安定させれば……!」
 英雄を背負って戦場を離脱するセレナの背を見送り、いのりはため息をついた。
 すでに彼女のスキルは尽きている。あとは薬と外科処置によってしのいでいくしかないのだが――その薬と包帯もまたエンプティ。
(まずいね。まずいまずいまずい。でも!)
 いのりは平静な顔の奥に焦る心を封じ込め、口角を上げた。少しでも怪我人を安心させられるように。少しでも仲間を力づけられるように。

●転戦
 見張り塔から離れ、南西のイル=エルグ砂漠へ向かっていたスカーラット(aa1473)が通信機の通話口を指先で3度ノックした。ディッケ・カルラの発見を【蝶】へ伝えるサインである。
 その傍らに潜むのは魅霊(aa1456)。鋭い眼をディッケどもへ飛ばし、匍匐前進を開始しようとしたが……ギシャ(aa3141)の手で止められた。
 最前のディッケがこちらを見ている。
 砂だ。魅霊がかすかに巻いた砂。それを見とがめられた。
 ディッケどもは即座に水平射撃を開始。後退を開始しつつ、北へ向けて甲高い声をあげる。
「作戦失敗。北から増援が来る」
 スカーラットがなにかを確認し、通信機へ告げた。
「かくなるうえは……!」
 命を捨てて、不退転。肚を決めた魅霊が跳び出し――
「それ犬死」
 ギシャは魅霊に当て身を食らわせ、スカーラットにその身柄を預けて撤退を開始した。

『北から増援がイル=エルグ砂漠方面に進軍開始! そこから分かれたヴォルケルフ10体がそっちへ向かってます! あと、ディッケ・カルラが北に後退し始めてますから、サガル山地方面に行く補給担当の人は要注意です!』
 砂漠と物資投下予定地点との中間点で見張りの任についていた鞠丘 麻陽(aa0307)から緊急連絡が入った。
「この後の配達は危険がいっぱいそうでげんなりするね」
 補給担当小隊【フーズ】リーダー、鶏冠井 玉子(aa0798)が空へと憂い顔を巡らせた。
「バトルソングでも歌うか? 盛り上がるぞ?」
【フーズ】の隊員、鯨井 寝具(aa2995)がワクワクと玉子を見やったが。
「敵を引き寄せるのがオチだ」
 リーダーにばっさり斬り落とされた。
『物資投下まで10秒……カウントします。5、4、3、2、1』
 低空を悠然と横切っていくアメリカ空軍の近接航空支援専用機。爆弾の代わりに積み込まれていた5基のコンテナがピンポイント投下され、砂の上に軟着陸した。
「おつかれさまです。補給物資の受領をお願いいたします」
 麗しい敬礼を決めたのはHOPEのオペレーターであり、モデルでもあるティリア・マーティス(az0053)だった。
「コンテナといっしょに跳び降りてくるとか……」
 肩をすくめた寝具へやわらかく笑み、ティリアはエージェントたちに状況を説明した。
「ここまで後手にまわっていましたが、本部の支援体制は整いつつあります。支給物資も順次戦場へ届くことになっていますので、皆様、いそがしくなりますわよ?」
「そのつもりで体は空けてありますよ」
 仲間にライトアイを付与した硲がコンテナに取りつき――目をしばたたかせた。
『SPIRT』。コンテナにスプレーで吹きつけられた、ただひと言。
 次々と投げ落とされる物資コンテナを見上げ、エージェントたちは名も知らぬ友の魂に胸を熱くした。
「まず見張り塔裏の医療陣地に医薬品。これは最優先だ」
「必要数は……ほかとの兼ね合いをどうするかだな」
 玉子が配分指示を出し、寝具がまとめる。
「【蝶】、現状の物資支給要請のまとめを――こちら物資補給担当の六鬼です。これより支給に向かいます。もう少し持ちこたえてください」
 他の情報管理担当と【蝶】からの情報を照らし合わせ、硲が各方面へ連絡を飛ばす。
「回収した物資は配達分を別にして見張り塔へ運びます。それは仕分け担当者が」
「敵襲!!」
 硲の言葉を誰かの警告が遮り、回収地点に従魔の一群がなだれ込んでくる。麻陽の報告にあったヴォルケルフだ。
「【饂飩】、サインの準備して、行くよ」
 道中の敵襲から仲間を守る哨戒索敵を買って出ようとしていたエミルが、メンバーを率いて迎撃へ向かう。
「配達第一陣は構わず出発! ここはぼくたちが絶対に押さえる!」
 ペンをブラッディランスに持ち替え、寝具、そして仕分け担当者と共に、玉子もまた駆けた。
 かくして、各エージェントが戦場へ散っていく。
「椋実ちゃんしっかりつかまってて!!」
 支給品のオフロードバイクの前部シートにまたがった一色 綾香(aa4051)が、後部シートの椋実(aa3877)に声をかけた。
「それはいいのだが……うまく進まんな」
 砂を噛むタイヤ。舞い上げる砂埃は派手だが、スピードは今いちである。
「目抜き通りまで出ちゃえばなんとかなるよ! 【蝶】! 指示! 指示ちょうだい!」
「隠密性は……?」

「もう少しだ! もう少しでここを抜けられる!」
 目抜き通り。負傷した脚を引きずる英雄に肩を貸し、日和が治療陣地へ急ぐ。
「こちらだ!」
 通りの端から治療担当の春月(aa4200)が、数名の仲間と手を振った。自力移動していた英雄たち、その最後の一群を迎え入れるべく、治療陣地から駆けつけてきたのだ。
「ごめん。この人、頼む」
「ああ――おまえも怪我人ではないか!」
「早く戦場に戻らないと!」
 春月の言葉を振り切って戻ろうとする日和だったが。
「死んだら元の子もないのだ。あきらめて治されておけ」
 春月に羽交い締めされ、その隙に他の治療担当者から処置を受けるのだった。

 補給を担当する【眩耀】小隊の月宮 ジャッキー(aa3170)とVerite de l'orz(aa1167)は、長距離照明弾によるディッケ撹乱を実行すべくサンドバギーを駆っていた。
「あれ――?」
 Veriteが指差す先にあるものを確認したジャッキーが、ハンドルをVeriteに預けてスマートフォンに叫ぶ。
「て、敵ですっ! 南から敵が――!!」

 レガリス・エニア群にあたっていた護衛担当のエージェントたちは、じりじりと後退しつつ、なんとか防衛線を維持していた。
「もう、傷つけさせません! 英雄さんも、仲間も、絶対に――!」
 【ST】の零月 蕾菜(aa0058)が豪の前に跳び込んだ。
 レガリス・エニアどもの光線が彼女の体を撃ち据え、斬り裂き、刺し貫いていくが、しかし。
「くうっ!」
 1体のレガリス・エニアが放った攻撃を、ブルームフレアで相殺。彼女は膝をつく。
「蕾菜、無茶をするな!」
「豪さんも……です」
 英雄と仲間をかばい抜いてきたふたりの体は限界だ。
「結構無茶する気で来たけどよ。こりゃちっとやべぇかもなぁ」
 最後のケアレインで彼らを癒やす千颯もまた、満身創痍である。
『こちら【蝶】! 南方から敵が接近しています!! エージェント各位、強襲に備えてください!!』
 さらにこのタイミングでの最悪の知らせ。
 南方では友軍が爆撃により、多くの敵を足止めしていたはずだ。それを突破した敵が、ついに戦場へと踏み込んできた――。
 前より迫るは地獄。後ろで待ち受けるも地獄。
 エージェントたちの胸の隙間に、薄暗い不安が吹き抜ける。
 しかし。
 空を横切っていく数十機のステルス戦略爆撃機。そこからバラバラと落ちてくるのは爆弾ではなかった。
「援軍!」
 黒く汚れた目元をこすり、ナガルが指差した。
 上空からまっすぐに死地へと降臨する援軍――エージェントたちを。

担当:
電気石八生
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社