• 0
  • 103,490
  • 27,461
キャラクター基本画像
ゲスト(aa0000)
スターコイン購入 マイページ キャラクター切替
お気に入り

神月 第2フェーズ:リプレイ

PCイラスト
谷崎 祐二
aa1192
PCイラスト
真壁 久朗
aa0032
PCイラスト
御代 つくし
aa0657
PCイラスト
佐倉 樹
aa0340
PCイラスト
鳥居 翼
aa0186
PCイラスト
志賀谷 京子
aa0150
PCイラスト
紫 征四郎
aa0076
PCイラスト
百日 紅美
aa0534
PCイラスト
染井 義乃
aa0053
PCイラスト
小鉄
aa0213
PCイラスト
齶田 米衛門
aa1482
PCイラスト
八朔 カゲリ
aa0098
PCイラスト
秋原 仁希
aa2835
PCイラスト
火乃元 篝
aa0437
PCイラスト
リィェン・ユー
aa0208
PCイラスト
赤城 龍哉
aa0090
PCイラスト
灰堂 焦一郎
aa0212
PCイラスト
久遠 周太郎
aa0746
PCイラスト
乾 童玄
aa3307
PCイラスト
廿枝 詩
aa0299
PCイラスト
大佐田 一斗
aa3772
PCイラスト
只野 羅雪
aa0742
PCイラスト
唐沢 九繰
aa1379
PCイラスト
旧 式
aa0545
PCイラスト
刀神 琴音
aa2163
PCイラスト
倉内 瑠璃
aa0110
PCイラスト
笹山平介
aa0342
PCイラスト
賢木 守凪
aa2548
PCイラスト
今宮 真琴
aa0573
PCイラスト
レイ
aa0632
PCイラスト
獅子ヶ谷 七海
aa1568
PCイラスト
佐藤 鷹輔
aa4173
PCイラスト
フィー
aa4205
PCイラスト
郷矢 鈴
aa0162
PCイラスト
毒嶋 イオナ
aa1054
PCイラスト
虎生 八重子
aa1044
PCイラスト
免出 計一
aa1139
PCイラスト
狒村 緋十郎
aa3678
●暗中に『希望』あり
 絶望とは何か。
 ――絶望とは全ての可能性を塗りつぶす漆黒の暗闇。
 希望とは何か。
 ――希望とは暗闇の中に伸びる一筋の光明。
 絶望はどこにある。
 ――それは人の心の中にある。
 希望はどこにある。
 ――希望は『ここ』にある。
 四方を囲まれ追い詰められてもなお諦めず戦う覚悟。
 敵の大群の先に光明を見出し『H.O.P.E.』は進む。

 退き口は、敵中にあり。

●偵察
「いやぁ、壮観だねぇ」
 サガル山地の南部の斜面に辿りつき、敵の布陣を遠景から眺めて谷崎 祐二(aa1192)は意図して明るい口調で言った。
 最も後方に位置する愚神アッシェグルートと彼女を守るクラーゲンツァイシェン。そして、その前方数十mに渡り地面をくすんだ色へと変貌させている灰色のガス。ヴォルケルフが姿を変えたものだ。
「圧倒されても仕方無い。なんとか引きつけるぞ」
 奈義 小菊(aa3350)が幻想蝶から銃を取り出し準備を始める。一応構えてみるが、ここからではまだ遠すぎる。
『チャンスは必ずあるはずです。頑張りましょう』
 通信機から栗原 雅(aa3981)の声が届く。
『まずは情報戦で優位を取りましょう。情報は剣であり盾です』
「さて、そうしたいのは山々だが……」
 右手にライヴスで作り出した鷹を留まらせながら谷崎が改めて敵の軍勢を見やる。多数の黒い影が敵の軍勢の侵攻よりも遥かに早く味方に迫るのが見えた。
 それは大きな鷲の姿をした従魔、デザートイーグルだ。敵の目となり耳となる情報収集を得意とする従魔である。ある意味シャドウルーカーの使う鷹の目と似た役割であるが、さすがにそこは従魔。戦闘力は比較にならない。
「まずは……制空権争いというわけだな」
 慎重に狙いを定めた小菊の弾丸が一匹の従魔を貫き叩き落した。

●制空権
「来たな……」
 飛来する従魔達を見据え真壁 久朗(aa0032)が呟く。
「俺達で奴らを押しとどめる。【鴉】、行動開始だ……!」
 静かに、しかし確固たる意志の強さを感じさせる口調で久朗は号令を出した。
「お前なんかに、私は、【鴉】は、負けない……っ!」
「鳥はかなり突出している。前に出て叩く!」
 まず前に出たのは二人。御代 つくし(aa0657)と佐倉 樹(aa0340)の二人だ。
「キー!」
 敵の接近に感づいたデザートイーグルが甲高い声を上げて、進路を変えようとする。彼らの仕事は偵察。戦う事ではない。
「逃がしません!」
「さぁて藪の中を『ひっカキまワソう!』」
 従魔の群れを射程範囲内に捕らえ、二人が揃ってブルームフレアを放つ。大きな爆発が二回。鷲の群れを捕らえる。
「キー!」
「逃げられると思ったか? 制空権は取らせねぇぜ」
 爆発から逃れ散ろうとした従魔達の元にもう一つ爆発が起こる。鳥居 翼(aa0186)が放ったものだ。
「まだまだぁ!」
 さらに続けて放たれる炎の爆発。そこから逃れた単体の従魔は後方やサガル山地からの狙撃で撃ち落としていく。
 見る間にデザートイーグル達は数を減らしていった。
「いいね、これなら……」
 樹が上空を見据えながら呟く。事は順調に運んでいる……かのように見えた。
『三人とも下がれ! 実体化が始まってるぞ!』
「グルル……」
 祐二の警告と同時に聞こえた獣の唸り声に樹が視線を下げる。そこにはガス状の形態から狼の姿へと形を変えたヴォルケルフの姿があった。
「くっ……!」
「グルゥアァ!」
 咄嗟に飛び退こうとするも間に合わない。ヴォルケルフの素早い体当たりが直撃し、大きく吹き飛ばされる樹。
「ぐぅ!」
 ガス状だった従魔達が次々と姿を得ていく。その数はおおよそ十数体。全体からすると未だほんの一部だったが、しかし前に出たエージェント達にとっては圧倒的な数だった。
「ガウァ!」
 凶悪な唸り声と共に従魔達は一斉に遅い掛かってきた。

●後退
『前線を少し下げる! 全力で逃げろ!』
「簡単に言うなよ!」
 波月 ラルフ(aa4220)の声に翼が悪態を返す。敵の数は多く、そして素早い。避け切るのは困難だった。
「時間を稼ぐのは任せて!」
 翼に狙いを定め実体化した瞬間を狙い志賀谷 京子(aa0150)の矢が従魔を貫く。
「悪い!」
「お礼は後で! さあ、必中の一撃を何度でもお見舞いしてあげるんだから!」
 続けざま実体化する直前の従魔に向かってさらに二矢放ち、実体化を妨害し時間を稼ぐ。
「ギャゥ……!」
「確実に当てられるけど……効果は今一つといった様子ね」
 ガス状の時は動きは鈍いが効果が薄い。かと言って実体化してから攻撃に入るまでを狙い打つのもなかなか難易度が高い。ゆっくり狙い打つような余裕がある戦況ではなかった。
「ならば、これなら!」
 紫 征四郎(aa0076)が雷上動を構え、矢を番える。
 今は正確性よりも速度と手数。おおよその狙いで征四郎が矢を放つ。
「ギャオォ!」
 紫電の矢がガス溜まりを貫き蹴散らす。矢に貫かれガスは叫び声だけを残し、そのまま霧散し宙に消えた。
「やはり、魔法には弱いようですね」
「オッケー、魔法なら任せてよね!」
 そうと分かれば話は早い。百日 紅美(aa0534)は半ばあてずっぽうで魔力弾を放っていく。何せ敵の数は甚大だ。真っすぐ飛びさえすれば何かしらには当たる。
『……もう一手必要だ。このままじゃ追いつかれる』
 鷹の目を駆使して前線を空から俯瞰で眺める祐二が警告を口にした。先行部隊の撤退の速度よりも敵が押し寄せる速度の方がわずかに早い。囲まれれば終わりだ。
「引き着けます! フォローお願いします!」
 そう叫んで染井 義乃(aa0053)が前に出て盾を構える。
「さあ、こっちよ!」
 守るべき誓いを発動し、従魔達の注目を一斉に集める。
「ギャオォ!」
「……っくぁ!」
 従魔達の攻撃は撤退中のエージェント達からは逸れ、義乃へと集中した。何匹もの連続攻撃を受け、耐えきれず大きく跳ね飛ばされる義乃。
 しかし、彼女の作り出した侵攻の穴は、先行部隊が撤退を完了させるだけの隙を作りだしていた。
「無茶をするでござる!」
「後は任せるッスよ!」
 義乃と入れ替わるように小鉄(aa0213)と齶田 米衛門(aa1482)が前線に立つ。
 その目前には今しがた義乃や先行部隊を襲ったヴォルケルフが数十体。
「かちゃましぐっていぐね……減らすッスよ!」
「今一度霧散すると良いでござる!」
 二人は目にも止まらぬような素早い動きで次々と目前の従魔達を切り捨て、殴り倒していく。
「何とか一陣は乗り切ったでござるか……」
 後方の援護もあり、従魔の攻撃がほんの少し落ち着く。しかし、まだヴォルケルフは百体近く残っているし、なによりアッシェグルートがまだ控えていた。息を付けるような状況ではない。
『……悪い、追加でバッドニュースだ、紳士淑女諸君』
 ラルフがあえて少しおどけた口調で報告を口にする。
『東に謎の人影あり。真っすぐこっちへ向かっているそうだ』
「東の戦力は」
 いち早く八朔 カゲリ(aa0098)が反応する。
『【TKN】とあと数人だ。ここを突破されると完全に挟み撃ちされる』
「分かった。俺達【戦狼】が行く。ここは任せた」
 即座に判断し仲間たちに目配せをする。【戦狼】の面々は迷うことなく一つ頷いた。
「任されました。必ず押し留めて見せます!」
 征四郎の声に背中を押され、【戦狼】は東へ向かって駆け出した。

●砲撃戦
『来たで! 兄さんたち、準備はええか!』
 通信機から【蝶】のリーダー狒頭 岩磨(aa4312)の威勢のいい声が響く。
 北方の空から近づいてくるのはケントゥリオ級従魔、レガリス・エニアの群れである。
『改めて見ると不吉な外見ですね……』
 フードを深々と被り顔を見せず、宙を漂い徐々に迫るその姿はまるで死神の群れだ。敵の数を数えながら柳 黒斗(aa3866)はそんな事を思った。
『おおよそは二十数体……。今回は敵の殲滅ではなく包囲網突破が目的です。全ては倒さなくていい。それを忘れないでください』
『こちら【道】の秋原っす。見たとこ西の山に敵はいなさそうです。北の敵に専念してください』
 黒斗の言葉に秋原 仁希(aa2835)が続ける。
「ふむ、好都合だ。一番槍の誉れ【労組】が貰うぞ!」
 火乃元 篝(aa0437)がニヤリと笑い先頭を駆け従魔の群れへと向かっていく。
「俺達も行くぞ、龍哉!」
「おう!」
 それに【BR】のリィェン・ユー(aa0208)と赤城 龍哉(aa0090)を中心に数人が続く。
「――」
 レガリス・エニアがうわ言のような文言と共に次々と突貫してきたエージェント達を指さす。
「――くるぞ!」
 レガリス・エニアの周りの魔法陣から一斉に雷撃や光線が放たれる。
「ぐっ!」
 直撃を避けながら何とか前に進む。とにかく今は接敵しない事には――
「む、待て。様子がおかしい」
 リィェンが状況の変化に気付く。従魔との距離が詰まらない。
「敵が退いている?」
 正面の敵は一撃を放って早々後ろへ後退している。臆したか、それとも慎重に事を構えるつもりなのか。
 いや――
『あかん、囲まれるで! はよ逃げぇ!』
「何!?」
 鼓膜を打つ岩磨の声に周りを見渡す。
 レガリス・エニア達は少しずつ、露見しづらい速度でゆっくりと彼らを取り囲んでいた。
「野郎……!」
 龍哉が悪態を吐きながらも急ぎ反転し、来た道を戻る。十字砲火を受ければさすがに避けきれない。囲まれればアウトだ。
『お逃げ下さい、篝様』
 淡々とした口調のまま灰堂 焦一郎(aa0212)が一体のレガリス・エニアを狙撃するが、宙に浮かぶ魔法壁に阻まれ本体までは届かない。
 各人援護射撃をは行うが、大体同じ状況である。
「――」
 レガリス・エニアが再び文言を唱える。
「……さっきと文言が違う」
 アリス(aa1651)がボソリと呟いた。
「――っ!」
 レガリス・エニアが手に持つ本をパタンと閉じると共にエージェント達の体にズシンと凄まじい重さが圧し掛かる。
「これは……」
 一歩も動けないほどの重圧に押しつぶされて地面に縫い付けられた。
「――」
「ビーム来る」
 レガリス・エニアの文言を聞き取ったアリスが再び呟く。
「まずいな、篝達を守るぞ」
「しゃーないねー。ま、やるねぇっしょ」
 久遠 周太郎(aa0746)と乾 童玄(aa3307)が盾となるべく前線に跳び込む。
「――」
「ぐぅぅぅ!」
「だぁぁ! あちぃぃ!」
 ギリギリのところで敵の攻撃の前に体を差し込み防御する。
 不幸中の幸いというべきか、一陣の拘束にそれなりの数が動員されていた為、耐えられないほどの苛烈な攻撃ではなかった。無論、簡単に耐えれたというほど生易しい攻撃でもなかったが。
「すまん、助かった!」
「俺、盾の人。きみ、剣の人。気にしないで、やって……」
 言いながら流石に力尽き膝を付く童玄。
「回復します! 今のうちに建て直して!」
 東宮エリ(aa3982)など数人が前衛部隊にケアレイやクリアレイなどを飛ばし、状況の建て直しを図る。
 そして、当然それを黙ってみてくれるような相手ではない。
「――」
「邪魔ね。ちょっと黙ってて」
 いち早くこちらを指さし攻撃を仕掛けんとするレガリス・エニアに廿枝 詩(aa0299)が銃撃を行う。
「……」
 意外と素早い動きによって避けられるが、そもそも妨害を意図した攻撃だ、問題ない。
「ん、でもせいぜい数秒かな」
 冷静に自分が稼いだ時間を計算する。しかし、その数秒は全体の建て直しにおいてはとても貴重な数秒だった。
「撃ち合いだ! こっちからも撃て、好き勝手させんな!」
 【アメフト】を束ねる大佐田 一斗(aa3772)が怒号を上げる。
 次の瞬間、凄まじいまでの轟音が行き交い、銃弾や魔力弾、そして光線や雷撃。様々な遠距離攻撃がお互いの陣営に交わされた。
『皆、大丈夫か!?』
「何とかといった感じだな。やれやれ想像通りのキツイ戦いだ」
 落ち着いてから前線の情報を集めた只野 羅雪(aa0742)が【蝶】と連絡を取る。
「鶴翼の陣って奴かな、あれは。囮に引っ掛かって寄ってくる様子もない。敵さんは思った以上に賢いようだ」
 逆V字を描き、地上数mを漂う従魔の群れを見つめ淡々と戦況を分析する。
 絶望的状況。しかし、絶望はここにはない。ここにあるのは『H.O.P.E.』だけだ。

●遭遇
「強い……!」
 飛来した槍を斧で辛うじて弾き飛ばし唐沢 九繰(aa1379)が呻く。その体には既にいくつもの傷が刻まれていた。
「こんなものか。こちらの人間は」
 嘲る様な口調で男が槍を回転させながら構えなおす。
(ち、ここまで堪えてる事を褒めて欲しいくらいだぜ)
 旧 式(aa0545) が心の内で毒づく。
 彼の手応え的には敵の強さはデクリオ級上位からケントゥリオ級。その強さの敵五人に囲まれてここまで持ちこたえれているのは実際かなりの幸運だった。
「もっかい、散開です!」
 九繰の指示に従って【TKN】がそれぞれ別の方向に散り、廃墟の陰に隠れる。彼女達が幸運だったのはここが遮蔽物の多い廃墟跡だった事。そして選択した廃墟に身を隠し戦う戦術が彼らの戦闘スタイルと比較的相性が良かった事。
「北が突破するまでの時間、稼ぎますよ!」
 九繰が味方を、そして自分を鼓舞するように叫ぶ。
「そろそろ終わらせましょう、鬼ごっこは飽きたわ」
 男の隣にすらっとした女が姿を現す。その両側にはアサルトライフルが宙に二丁、糸に釣られたように浮いていた。
「砂漠に鉛の雨を降らせてあげる」
 二丁の銃が上空へと上昇して、銃口を下へ向ける。
「やべぇ!」
 式が危険を察知し声を上げる。上からの銃撃には遮蔽物は関係ない。いや、むしろ遺跡の壁がある分、なお避けるのが困難である。
「……!」
 これから訪れるであろう痛みに備えて歯を食いしばる。
「切り裂け……!」
 しかし、銃から弾丸が降り注ぐよりも早く黒い焔の斬撃がそれを真っ二つに切り裂いた。
「何とか間に合ったか」
 さらにもう一丁の銃を矢が貫く。その軌道線を追って視線を落とすとそこにはカゲリと刀神 琴音(aa2163)、そして【戦狼】の面々がいた。
「ふむ、新たな訪問客のようだ」
 槍を担いだ男が再び槍を掲げる。その周りに同じような槍が何本も姿を現した。
「君たちは少しは楽しませてくれるのかな」
「楽しませる?」
 男の言葉に琴音がぴくりと眉を上げた。
「……そうだな、お前が首と胴が別れても楽しめるという奇特な奴なら楽しめるだろうよ」
 弓から大剣に武器を持ち替えて琴音は深く笑った。

●視界を覆う
「ハッ!」
 久朗の槍が実体化したヴォルケルフの胴体を貫く。
 あれからは予想に反して防衛部隊に対するヴォルケルフの追撃の手は緩やかだった。
 このまま包囲網突破まで持ってくれれば。そんな楽観的観測が頭をよぎる。だが――
「ンフフフフ……ああっ! 会いたかったですわぁ、皆さん!」
 傍らに数十体のクラーゲンツァイシェンを従え、両手を広げ心の底から楽しそうにアッシェグルードが鷹揚な歩調でこちらへ向かってくるのがエージェント達の目に映る。
「来たか……!」
 久朗がアッシェグルードをきつく睨み付ける。
「あらあら情熱的な視線! ンフフ、ゾクゾクしちゃいますわぁ。でも、よろしいのですか? わたくし思わずあなたを『お誘い』してしまうかも……」
「やってみろ」
 久朗は全く臆せずアッシェグルートを瞳に捕らえ続ける。一度破ったという自信。そして、仮にかかったとしても自分の仲間達なら必ず何とかしてくれるという信頼。その二つが久朗の中で確固たるものとして両立していた。
「ンー、それもいいのですけれど。わたくし、あなたたちとはもっともぉぉと長く愛し合いたいのですわぁ」
 アッシェグルートがニッコリと笑って両手を掲げる。
「さあ、ワンちゃん達! 素敵なショーを見せてあげなさぁい!」
 命令と共にアッシェグルートの後ろに控えていた凄まじい量のガス――ヴォルケルフ達が地面を這うようにエージェント達に迫る。
「今のうちに……ブルームフレア!」
 倉内 瑠璃(aa0110)など数人で効果の高い魔法攻撃で蹴散らしていくが如何せん数か数だ。その攻撃を突っ切って、倍する敵が現れる。
「今までとは比較にならん量でござるな!」
 ガスがエージェント達に近づいたところから次々と実体化し狼の姿を取る。
「ならば!」
 遠距離用の魔法弓から大剣に持ち替え、征四郎が己にリジェネーションを掛ける。
「一秒でも長くここに立ち続けます! ここは絶対に通しません!」
 目の前の視界を覆いつくさんばかりのガスを前にしても先頭に立つ征四郎の闘志は一切の陰りを見せなかった。

●嗤う灰
「ンフフ、頑張るわねぇ。可愛いわぁ。ンー、私もそろそろ私も愛し合いたいわぁ」
「あなたのお相手は――」
 遥か彼方から飛来した弾丸がアッシェグルートの周りのクラーゲンツァイシェンの一体を破壊する。
「私が勤めましょう。ご不満でなければ、ですが」
 笹山平介(aa0342)がアンチマテリアルライフルのスコープ越しにアッシェグルートを見やる。
「んふふ、素敵な笑顔ね。いいわ、お付き合いさせていただくわ」
 この距離でも平介の顔が確認できるのか、アッシェグルートが薄く笑った。
「あの塩の再生能力は厄介だな。下手をするといたちごっこだぞ」
 平介の傍らで賢木 守凪(aa2548)がクラーゲンツァイシェンが再生する様子を眺めながら呟く。
「大丈夫ですよ。私達は一人ではありませんから」
 守凪ににこりと微笑みかけるのとほぼ同時に、今度はアッシェグルートの横合いから風切り音と共に一本の矢が飛来する。
「あらぁ?」
 予想外の方から飛んできた矢にクラーゲンツァイシェンの一体を破壊され、アッシェグルートがそちらを見やる。
「いかせないよ……ここは任されたから……! 絶対にいかせない!!」
 そこには弓を構え今宮 真琴(aa0573)の姿。
「随分可愛らし――」
 アッシェグルートの言葉が終わるよりも早く再びの銃声。今度は背後でクラーゲンツァイシェンの一体が砕け散る。
「あらあらあらあらぁ?」
 後ろを振り向くとこちらにはいつの間にか場所を移動していた平介。
「ンー、なるほど、お二人でお相手して下さるのですね」
 平介の方へ向かえば真琴が、真琴の方へ向かえば平介が。それぞれ射程外から波状攻撃。実際この戦法はかなり有効で、アッシェグルートの護衛のクラーゲンツァイシェンの数が減っていく。
「んふふ、激しい愛でしたけど、ようやく捕らえましたわよ?」
 クラーゲンツァイシェンの数が半数以下まで減らされたところでついに平介がアッシェグルートの射程距離に捕らえられる。
「さあ、お受け取りになって?」
「くっ!」
 平介の足元が赤く染まる。
「悪いな、邪魔するぜ。平介はお前みたいなケバい女は好みじゃないそうだ」
 横から守凪が平介を突き飛ばし火柱の範囲から押し出す。
 直後守凪が炎に包まれる。
「ぐあぁ……!」
「守凪!」
 炎に焼かれた守凪がその場に倒れ込む。
 すぐにでも助けたいが、彼を背負って今すぐアッシェグルートの射程範囲から逃れるのは困難だ。
 撃退するしかない。しかし、どうやって。
『西側の二体を片付けてくれ。あとは俺がやる』
 通信機から聞こえた声にすぐさま反応し、銃を構える。誰かなどこの際、問題ではなかった。
 銃声と風切り音。平介と真琴の攻撃がそれぞれ一体ずつクラーゲンツァイシェンを砕いた。
「よう、また会ったな、ハニー」
 そして西側にいつの間にか広がっていた煙幕の中から姿を現したのはレイ(aa0632)だった。
 スナイパーライフルを構え、真っすぐにアッシェグルートへ狙いを付ける。遮蔽物は何もない。
 アッシェグルートは嬉しそうな笑顔を見せた。
 レイの足元に巻き起こる炎。しかし、レイはそれを避けようとせず、微動だにしないままトリガーを引いた。
「オレの愛はまだ終わっちゃいねぇんだぜ」
 レイの弾丸が再びアッシェグルートの体の中心を捕らえるのと、レイが炎の柱に巻き込まれ吹き飛ばされるのは全くの同時であった。
「んふっ……フフフフフ……アハハハハ――!」
 レイの弾丸を受けたアッシェグルートが唐突に高笑いを上げる。
「んふ、あなたがたの愛、しかと受け止めましたわ。できればもっと楽しみたいのですけれど……」
 ふと微笑んで東の方の空を見やる。
「ンー、神無月ちゃんが面白い事になってるみたいね。んふふ、そろそろスポットライトを譲ってあげなくちゃね」
 そう言ってエージェント達の方から遠ざかっていく。
「待て!」
「あなた達との愛しあい、楽しかったわぁ。また会いましょうねぇ? ンフフフフ、アハハハハハ……!」
 高笑いと共に戦場から離脱していくアッシェグルート。
「……今は預けましょう。それよりも優先すべきことがありますから」
 平介と真琴は決して深追いはせず、レイと守凪を背負い、仲間たちの元へと向かっていった。

●突破
 レガリス・エニアとの激しい砲撃戦となった戦場で一番最初に足を踏み出したのはあろうことか、先の戦いで手痛い傷を負った獅子ヶ谷 七海(aa1568)だった。
「おら、足止めてんじゃねぇ! 行くぞ!」
「お、おいちょっと待て!」
 足を引きずりながらなお進もうとする七海の肩を佐藤 鷹輔(aa4173)が掴む。
「一番先頭で出る怪我人があるか!」
「馬鹿野郎、だから狙いどころ何だろうが!」
「はぁ?」
「ほれ、来るぜ」
「――!」
 七海に向かって飛んできた雷撃を鷹輔が咄嗟に押し倒し避けさせる。
「奴ら、存外頭が良い。囮にゃ引っ掛からねぇ。釣るには囮じゃ駄目だ。『弱点』を晒さなきゃな」
 言いながら剣を頼りに再び立ち上がる。
「頭が良いから分かるのさ。俺があと一押しだって事がな。おら、行くぞ! 着いてこい!」
「……ちっ、しょうがねぇオヤジだな!」
 今度は勢いのまま走り出した七海を追って鷹輔も走り出す。
「――」
 レガリス・エニアは考える。
 弱った人間、あれは演技ではない。あの傷を与えたのもまた彼らだった。そこは間違いがなかった。
 その瀕死の人間が突出して前に出てきている。護衛は一人。倒すべきか放っておくべきか。
 彼らも決して囮の可能性を考えなかったわけではない。ただ、楽に倒せる敵がいたから楽に倒そうとしただけのこと。そう判断したレガリス・エニアが数体。
「――」
「ちぃ!」
「ぐっ!」
 数体とはいえ集まれば二人を吹き飛ばす程度容易い。
 しかし、事はそこで収まらなかった。
「穴を見つけるのも掘るのも得意なんだよねー」
「ほらほらどうしたぁ! 殺して見せろ!」
 七海を狙った数体分、空いた砲撃の穴に跳び込んだ影が二人。ランカ(aa3903)とフィー(aa4205)である。
 こちらは重体の七海に比べると動きは機敏だ。レガリス・エニアが再び攻撃態勢に入るまでの間にかなりの距離まで接近していた。
 これを危険だと判断したレガリス・エニアが半数。
 おおよそ十体近いレガリス・エニアからの魔法攻撃を受け、二人が吹き飛ばされる。
 この瞬間、突破本隊に対する足止めの砲撃は半分以下に減っていた。
「全員、突っ込めぇっ!」
 一斗の号令で【アメフト】以下残っていた前衛達が一斉にレガリス・エニアへと駆け出す。
「――」
 レガリス・エニアが自分達の失策に気が付くが、遅い。
「突破口を作ります!」
 郷矢 鈴(aa0162)の放った矢がレガリス・エニアの魔法障壁を次々傷をつける。前衛の突撃に合わせ後衛の射撃も温存していたスキルを使用し、苛烈なものへと変化していた。
「ほら! ほらぁ! ぶっ飛びなぁ!」
 魔法障壁を剥がされたレガリス・エニアに毒嶋 イオナ(aa1054)が強烈なストレートを三連続で顔面に叩き込む。
「寄らば斬る、貴様らが何者であろうとも」
 よろめいたところを虎生 八重子(aa1044)の刃が両断する。
「――」
「ぐあっ!」
「これ以上やらせるわけにはいかないんでね。その首、狩らせてももらうぜ!」
 乱戦に持ち込めたとはいえ、相手もケントゥリオ級従魔である。決して近付いたから簡単に勝てるような易しい敵ではない。
 接近戦においても宙を軽やかに飛び回り、魔法剣で切り裂く機動力と攻撃力を兼ね備えた強敵だ。
 あと一歩、押し切れそうで押し切れない。
(大丈夫。俺達は一人じゃない。こんな時こそ……仲間を信じなきゃな)
 免出 計一(aa1139)が敵の攻撃を受け止めながら自分を励ますように思考する。黒斗の声が通信機から聞こえたのはちょうどその時だった。
『来ました。『希望』が来ました』
「――!」
 同時に謎の文言を唱えながら崩れ落ちる目の前のレガリス・エニア。
「……見たか、レミア。この血塗られた魔剣は今、誰かを救う刃となったぞ……」
 全身に傷を負った狒村 緋十郎(aa3678)がそう言って膝を付いた。 
 その一撃で微かに――ほんの一筋、包囲網が破れ外側へと繋がる。
『【蝶】の岩磨から臨時ニュース! 北方の包囲網を突破! 全員、今すぐ撤退開始や! 案内はまかせぇ!』
 岩磨はそう言ってより戦場を見渡せ山の頂上へと駆け上がっていった。



担当:
弐号
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社