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神月 第1フェーズ:リプレイ

PCイラスト
大宮 朝霞
aa0476
PCイラスト
鵜鬱鷹 武之
aa3506
PCイラスト
鹿島 和馬
aa3414
PCイラスト
寫眞 撮生
aa4007
PCイラスト
秋姫・フローズン
aa0501
PCイラスト
九重 陸
aa0422
PCイラスト
飛岡 豪
aa4056
PCイラスト
雪ノ下・正太郎
aa0297
PCイラスト
零月 蕾菜
aa0058
PCイラスト
鯨井 寝具
aa2995
PCイラスト
鶏冠井 玉子
aa0798
PCイラスト
宿輪 永
aa2214
PCイラスト
折原 紫依
aa3697
PCイラスト
桃井 咲良
aa3355
PCイラスト
エミル・ハイドレンジア
aa0425
PCイラスト
大黒 存影
aa3876
PCイラスト

aa3275
PCイラスト
虎噛 千颯
aa0123
PCイラスト
天都 娑己
aa2459
PCイラスト
更紗・アーニャ・尋河凪
aa0025
PCイラスト
鞠丘 麻陽
aa0307
PCイラスト
御手洗 光
aa0114
PCイラスト
蓮華 芙蓉
aa1655
PCイラスト
鎧堂鷹獅
aa3930
PCイラスト
月影 飛翔
aa0224
PCイラスト
一色 綾香
aa4051
PCイラスト
紫波 和真
aa1436
PCイラスト
ライロゥ=ワン
aa3138
PCイラスト
多々良 灯
aa0054
PCイラスト
ヴェントット ルッリョ
aa4169
PCイラスト
リーラ・フェルマ
aa4044
PCイラスト
桐ケ谷 参瑚
aa1516
PCイラスト
セレナ・アリーヤ
aa2181
PCイラスト
呉 琳
aa3404
●零れ落ちていく
 魂が、空から降ってくる。

 幻想的だった。
 流れ星のように尾を引いて、光が空から砂漠へと降り注ぐ。異界の英雄たちが現世界へと堕ちていく。

――美しくもおぞましい光景。
 あのおびただしい数の灯、一つ一つが命なのだ。

 三方を敵に囲まれながら、偶然にも行動の自由を確保したエージェントたち。傷ついた英雄を助けるのに、彼らほど絶好のポジションはない。

 エージェントたちは、多くの命を救うため、戦場へと歩みを進めていく。


●見張り塔周辺、備えあれば
 戦場の情報を確保するべく、エージェントたちはいち早く見張り塔へと向かう。
 救護班および【駄菓子】のメンバーらは塔にシーツやテントを運び込み、戦いに備える。
「1人でも多くの英雄を助けなきゃ! せっかくこの世界に来てくれたんだもの!」
 聖霊紫帝闘士ウラワンダー……こと、共鳴した大宮 朝霞(aa0476)は、掛け声とともに仲間たちへとライトアイを付与する。
「んじゃま、俺等は皆の目になりますかねぇ」
 鵜鬱鷹 武之(aa3506)と鹿島 和馬(aa3414)の放ったライヴスの鷹が、翼で風を切り、真っすぐに空を飛んでいく。鵜鬱鷹が率いる【鷹網】班、情報収集にあたる人員がそれぞれに情報網を整える。
 戦場のあちこちで、ライヴスの鷹が飛び回る。

 しかし、偵察を試みるのは、エージェントたちばかりというわけでもない。塔の周辺を、数体のデザートイーグルが旋回している。
「おっと」
 共鳴した鹿島の目が、愉快そうな色を帯びる。
 鹿島の操るライヴスの鷹は、戦場の流れ弾をくるりと避けた。――にやりと笑うと、弧を描いた口から尖った歯が覗く。

「ヤァ、すごい光景だね! 撮り甲斐がありそうだ☆」
 寫眞 撮生(aa4007)は仲間の合図を受け、デザートイーグルにすかさずオートマチックを連射した。華麗なトリオの3連射が、小気味よい音を立ててデザートイーグルを叩き落とす。
 寫眞は北、西、南に向けてカメラを設置し、敵の情報を戦局に加える。被り物のレンズが、戦場の死闘を映しこんで燃えるように輝いた。
「ちゃんと仕事はするよ? あと誰か養って?」
 的確な戦況判断に感心しそうになったところで、通常運転の鵜鬱鷹なのだった。
「情報は……お任せください……」
 秋姫・フローズン(aa0501)をリーダーに据える【八咫烏】の用意した区域分けの地図に沿って、エージェントたちはルートと戦局を的確に掌握していく。英雄が倒れている場所、手薄な場所を無線で伝え合う。

 突如として、無慈悲な魔力の風圧に吹き飛ばされる。ライヴスの鷹の接続が切れた。≪門≫より来たるレガリス・エニア。――強大なケントゥリオ級従魔である。


●≪門≫周辺での死闘
 塔を拠点とする一方、闘技場の周辺においても、着々と傷病者が運び込まれつつあった。円形闘技場跡の南。
 すぐそばには≪門≫がある。

 ≪門≫の周辺は、特に激戦の様相を呈していた。レガリス・エニアの攻撃により、英雄の淡い燐光が掻き消えていく。
 レガリス・エニアの前に立ちふさがる、別部隊のエージェントたち。彼らは苛烈な攻撃を受けながらも、一歩も退くまいと戦況に食い下がる。

 前線で戦うエージェントたちの思いにこたえるべく、救出や後方支援援護に徹するエージェントたちも、必死に救助活動にあたっていた。【MT】班らは、勇敢に相手の攻撃の間に身を躍らせて、負傷した英雄を回収する。
「ケントゥリオ相手はしたくないけど……しかたないっすかねー」
 なによりも――死ぬのは何より面白くない。羽柴 丸々(aa4017)は激戦を避けるようにして、気絶した英雄を幻想蝶へと収容する。その過程で、倒れている英雄を助け起こす。こちらは自分で移動できるだろうと判断して、後退させるにとどめる。レイラ クロスロード(aa4236)が英雄へと肩を貸し、後方の仲間へと引き渡す。
 彼らのすれすれを、敵の攻撃が迸っていった。――回り込まれる!

 その時だった。
 シルクハットにマントがたなびく。九重 陸(aa0422)の幻影蝶が、敵の攻撃を大きく反らした。
 そこへやってきたのは、【ST】の面々だ。
「俺は闇を祓う赤色巨星、爆炎竜装ゴーガイン! 君たちを救いに来た!」
 高らかに宣言する飛岡 豪(aa4056)。アーマー状のヒーロースーツが敵の攻撃に映し出されてキラキラと輝く。
「やっ!」
 飛岡は小気味よい掛け声とともに、退路を塞ぐ従魔をゴルディアシスで払う。負傷覚悟での斬り込みだ。
 飛岡に迫る従魔の攻撃を、雪ノ下・正太郎(aa0297)のライヴスショットがはじく。
「仲間はやらせない!!」
 歌舞伎の衣装が、戦場にたなびく。ポルックスグローブが手のひらで打ち鳴らされて、重い打撃音が響き渡った。
「カブキリンカー見参!! 仲間はやらせん!!」
「よっしゃ、やるぜ! 目にモノ見せてやる!」
「さあて、ひとつド派手な殺陣シーンと行こうか!」
 咲魔 慧(aa1932)は、豪快にストレートブローをぶちかます。
「これ以上はやらせねえぞ。お引き取り願おう」
 後方へ英雄を預けたレイラが戦線へ復帰し、武器を構える。
 九重の放ったブルームフレアが吹き荒れる中、隙を縫うようにして、零月 蕾菜(aa0058)が運転するサンドバギーは英雄を連れ、颯爽と戦場を駆けて行った。


●塩湖跡の攻防
 塩湖跡周辺。
 北に神無月、西に≪門≫。
 攻撃を仕掛ける主力部隊の傍ら、エージェントたちは救出、援護の他、潜んだマウトゥ・アクラブをおびき出すことに専心することへと決めた。
【フーズ】らと【双桃華】がマウトゥ・アクラブの掃討にあたる。
 パアン、パアンと、派手な爆発音と光が響き渡った。
「側面援護という名の深夜ライブといくぜ」
 その音の正体は、鯨井 寝具(aa2995)が投げ入れた花火だ。
 続いて、ガラパゴスケータイや音楽プレイヤーが投げ込まれる。岩場の影から這い出し、尾を振り上げるマウトゥ・アクラブ。
――退きはしない。エージェントたちの攻撃が降り注ぐ。
「蠍は唐揚げにして食べる。ふふ、あの大きさだ、さぞや食べ応えもあろうな」
「いや……オレは食べねーぞ玉ちゃん……」
 きらきらと顔を輝かせる鶏冠井 玉子(aa0798)に、鯨井は呆れたような視線を向けた。

 戦場の前方では、骨の騎馬隊と主力部隊がぶつかっているのが見えた。主力部隊の撃ち洩らしを、エージェントたちが片付ける。彼らは、どうやら進路を変えて、苦戦する≪門≫の援護へと向かうようだった。
 あとは任せた。そういうことだ。
「必ず、助ける。誰一人、喪わせはしない」
 暗闇の中、宿輪 永(aa2214)の振るう天雄星林冲が火の粉を振りまいた。英雄に駆け寄った宿輪はスヴァリンをかざし、レガリス・エニアの魔法剣をはじく。彼らは英雄を連れてじりじりと後退する。
「あんなの撃ち落としてくださいって言ってるようなもんだよねぇ」
 上空を旋回するデザートイーグルに向けて、折原 紫依(aa3697)がアーバレスト「ハストゥル」を構える。ライヴスの弦が、現れる。
 風を切る。デザートイーグルが、一体、また一体と落ちていく。

●救助活動
 救助活動が本格化してから、いくばくかの時が過ぎた。
 【饂飩】班らは、ルートの情報を細かく精査しながら、非接敵ルートで慎重に英雄の回収を進めていた。
「救出作戦開始―! 頑張ろうね、エミルくん! こっちだよ!」
 鷹の目を使い、救助者の位置をいち早く特定した桃井 咲良(aa3355)
「ん、エミル、只今現場に到着……。傷ついた英雄は、しまっちゃおうね~……」
 【饂飩】班のエミル・ハイドレンジア(aa0425)が、無表情にずいと歩み寄る。ケガを負って、岩陰に隠れていた英雄が後ずさる。
 傷ついた英雄たちの中には、何事なのか分からず、幻想蝶に入るのを拒むものもいた。――そのせいで、敵陣にとりのこされたものもいる。
「大丈夫だよ」
「ああ、悪いようにはしない」
 桃井とギールが根気よく説得すると、英雄はようやく収容に同意した。

(まさかこの中に邪英化してんの混じってねぇよな……?)
 英雄の手当てをしながら、大黒 存影(aa3876)は、ふと懸念を覚えた。そうだとしたら、「何か」あるかもしれない。
 しかし、今はそれにとらわれて手を止めるわけにはいかない。
「とりあえず手当てすっぞ、手当て」
――注意することは無駄ではない。心がけをしておくだけでも、緊急時の対処は数段早くなる。
「ピックアップポイントの保守。了解」 
 同じく、運び込まれる英雄たちに、魔砲銃を構えた爻(aa3275)が同じく鋭い視線を走らせる。敵を招き入れてはいけない。この見張り塔は拠点と言ってもいいのだ。可愛い女の子にも、今は目を向けている時間はない。
 【五方識別】の一隊は、一挙一動も見逃さないように、戦局を見据える。
 なにも取りこぼさぬように。

 闘技場と見張り塔に、続々と傷ついた英雄たちが運び込まれる。また、従魔の対処にあたるエージェントたちの疲労も並大抵ではない。
「きっちりがっちりフォローするんだぜ!」
 虎噛 千颯(aa0123)を筆頭とする【駄菓子】班は、重傷者を援護しながら塔へと運び込む。
「今回強えのばっかだな……サボってたのがバレるじゃねえか、クソッタレ!」
 神足 焔(aa1455)が声を荒げ、ライオンハートを振り回す。切り裂かれた敵の断末魔か、それともその武器のためか。神足が武器を振るうたび、獣のような咆哮があたりに響き渡る。
【ダンボール】のAが英雄を回収し、【ダンボール】のBは、治療に手を貸しつつも、偵察と敵のせん滅にあたる。
「……突然異世界に飛ばされ、而もこんな怪我を…どういう事なんだ……?」
 見張り塔と闘技場跡。少しだけ迷ったが、この状況から言えば、塔へと運び込んだ方が良いだろう。トキ クロエ(aa1114)はB班が得た情報を、門周辺の人員へと伝える。
「了解です! 向かいますね!」
 援護要請に対して、天都 娑己(aa2459)が無線に答える。

「……うわあ……痛そ……オレ、こういうの、ダメなんだよな……」
 哇谷 伴(aa3724)は、運び込まれた英雄を見て、少しだけ顔をしかめた。B班はトリアージのタグをくくりつけている。
 赤、黄色、青。黒。
 黒いタグは――どうしても、犠牲というものは出る。

 同じく、【五方識別】は自らの脚で確度の高い情報を得るべく、斥候として戦場をかいくぐって動いていた。
「砂漠はやーですね……」
 更紗・アーニャ・尋河凪(aa0025)はふうとため息をつき、共鳴し、女王様然とした姿で周囲を見渡す。
 彼らは万一に備え、見張り塔からの死角をカバーする構えだ。

(今だけじゃなくて、最後まで守り切れないと、意味が無いんだよ)
 撤退の傍ら、鞠丘 麻陽(aa0307)は、敵を双眼鏡とスマートフォンの望遠レンズで撮影していた。攻撃はしない。今は耐えるときだ。増援部隊の姿が見える。
 まだ、遠い。油断はできない。短く仲間に伝えると、ゆっくりと後退する。

 見張り塔からは、このあたり一帯を見回すことができる。眼下に見える光景の中、優勢と劣勢がせめぎあっているのが見える

 順調だ。順調に思える。――しかし。

 幸いなことに、塔に従魔が大挙して押し寄せる様子はない。気がかりなのは、闘技場へと向かった班であった。闘技場近くの≪門≫での部隊は、苦戦を強いられている。
「どうにも胸騒ぎがしますわね。各々方、警戒は怠りませんよう」
 御手洗 光(aa0114)が、エージェントたちに注意を呼びかける。

――レガリス・エニアが闘技場へと向かった。
 ほどなくして、その知らせは、戦慄をもって戦場を駆け巡った。


●闘技場周辺、最後の砦
 限界が近かった。
 防衛にあたる人員が、闘技場の周辺では熾烈な争いを繰り広げている。
『ほいほーい』
 蓮華 芙蓉(aa1655)が通信機を置く。まずい状況かもしれない。それは、レガリス・エニアの奇襲と同時だった。
 当初はうまく機能していたこの闘技場も、レガリス・エニアの襲撃により瓦解しかけている。なんとか保っているのは、レガリス・エニアに追いすがるエージェントたちが、退かないからだ。
 闘技場跡。
「今後の為にも彼らを傷つけせはしない」
 鎧堂鷹獅(aa3930)が、必死に倒れ伏す英雄を庇う。ケガをしても、退かない。引きずるようにしてでも、英雄を後ろへと下げていく。

 またひとつ、燐光が消える。
 最前線で戦うエージェントの慟哭が響いた。救えない者たちへの憤りが。同じだ。
 エージェントたちは唇をかみしめる。
 こちらへと避難してきた英雄がいる。この闘技場を放棄するならば、どうしても犠牲は避けられない。
「状況判断での闘技場撤退も必要だが、随時安全な塔側への後送も必要だろう」
 月影 飛翔(aa0224)が再配置を指示し、輸送ルートを構築する。

「もうちょっと、もうちょっとだから頑張ってくださいね!!」
 【黒豹】部隊、一色 綾香(aa4051)が戦場をひた走る。
(助けてみせる。その為に力をつけてきたんだから!)
 潜伏した【黒猫】のエイミー クォーツ(aa4234)が、戦場から英雄をかっさらう。新しい英雄が、また一人、空から降ってくる。エイミーは仲間に連絡を取ると、ぎゅっと己の手を握りしめた。
「一緒には行けなくとも、雨*花の名に恥じないようお互いに尽力、ですね」
 闘技場跡の方が、圧倒的に近い。しかし、状況を鑑みて、紫波 和真(aa1436)は多少の無理を押してでも、塔の方へと向かうことにした。
「悪いがここから先へはいかせナイ……!」
 【黒豹】の部隊長、ライロゥ=ワン(aa3138)が従魔の前に立ちふさがる。部隊の名のとおり、その姿は黒豹である。暗闇の中、金の目がぎらりと光る。
「リーフ、騎士の務めを果たすぞ。…燃えてきたぜ!」
 【白犬隊】多々良 灯(aa0054)が、ライヴスショットで敵を引きはがす。守るべき誓いにより、注意がこちらに向いた。
「ライさん! こっちはおっけーです! 離脱を!!」
 保護を終えた一色が、槍での一撃で加勢する。

 傷ついた英雄の多くが、闘技場から塔へと移送されていく。レガリス・エニアの攻撃。どうするか悩んでいる暇はなかった。

「ここまでだ……」
 黒野日和(aa0415)の提案に、一同は息をのむ。
「ここでできることは、ここまでだ。維持に注力し過ぎて共倒れでは本末転倒……ってカイが言ってる」
 黒野の提案。それは、重傷者を逃がしつつ、闘技場を放棄することだった。
 現場の誰もが、実感しながらも口にするのをはばかっていた言葉だった。けれど、誰かに切り出されてみると――頷けた。
 決断の時が迫っていた。
「ひとりひとり出来ることを確実に……途切れかけた運命を繋ぎに行こう!」
 その決意に答えるように。示し合わせるように。
 攻撃班が、レガリス・エニアに斬りかかっていく。まっすぐに大きくひらめいた大剣が、敵を押し戻す。
 魔力の嵐が吹き荒れる。

 撤退の――チャンスもまた、今しかなかった。
 好機。

 レガリス・エニアが上空より飛来する。後退に主力を傾け、黒野が盾を振りかざす。撤退するといった以上、殿は務める。前線はいまだ、奮闘している。ならば、傷ついた英雄たちを伴ってなお、あまりあるくらいの余裕がある。そう自分に言い聞かせる。
 禁軍装甲が攻撃を受け止める。しびれるような攻撃の重さ。
 撤退するエージェントたちの背後を守るのは、黒野だけではなかった。

 遊撃に回っていたエージェントたちが、知らせを受けて駆け付ける。
 最後まで。最後のあがきまで、あきらめないと決意したエージェントたち。後ろ髪を引かれる思いで、後退する。
「勝手に喚び出されて、ただ死ぬだけなんて……そんなの美しくないじゃない!」
 白鳥院 零子(aa3304)は、奥歯で秘薬を噛みしめる。無理をしてでも、例えこの身を危険にさらしたとしても――手を差し伸べずにはいられなかった。
「誓約しましょう」
 嵐のような攻撃の中、白鳥院は気丈に手を差し伸べる。ここで倒れてしまっては。ほんの少しだけ白鳥院を案じる相棒は、成り行きを見ていようと腹に決める。
 白鳥院は、その真っすぐさで道を切り開いていくのだから。
「う……」
 英雄が震える右手を差し出す。

 二人以上の誓約は、未知の分野であった。成功したという話は聞かない。それでも。やってみずにはいられなかった。
(上手くいけば……)
 白鳥院の意識の中に、自分の意識の中に凄まじい異音や雑音が響く。上手く共鳴できない。――誓約が、叶わない。
 爆音が響き渡る。
(だめ、やめない)
 白鳥院は最後まで、英雄に必死に手を伸ばす。
「生きるって言って」
 攻撃が迫っている。英雄は目を見開き――。
「あり……とう……」
 小さくつぶやいた。

 レガリス・エニアの攻撃に貫かれ、白鳥院は壁にたたきつけられる。誓約は叶わなかった。手のひらには、先ほどまであったぬくもりが残っていた。
 幸いなのは、近くに味方がいる場所に吹き飛ばされたことだ。
「っ!」

 レガリス・エニアの攻撃により、いくつかの燐光が消えた。
 悔やんでいる暇はなかった。エージェントたちは、闘技場跡から見張り塔へと場所を移す。撤退の命令がもう少し遅ければ――全滅の可能性すらあった。


●あきらめない
「出来る事があるなら、全力でやりきる」
 ヴェントット ルッリョ(aa4169)は、撤退命令に向けて、殿を務めていた。
 機械化された脚が、光に覆われ尾を引いている。彼は、誰か一人でも欠ける事を厭い、ふらつく英雄を支え、殿を務める。
 エージェントたちの撤退により、少しずつ、少しずつ、激戦の闘技場が遠ざかっていく。
 自力で歩いていた英雄がふらつき、僅かに遅れる。
「気張りな! あと少しだよ!」
 リーラ・フェルマ(aa4044)が声を張り上げる。流れ弾から、ヴェントットが英雄をかばう。ヴェントットの上体が傾く。
「!」
 すかさず、桐ケ谷 参瑚(aa1516)がケアレイを飛ばす。セレナ・アリーヤ(aa2181)が、追いすがる従魔に矢を放つ。
 しかし、まだ、――足りない。
「絶対助けるぜ!」
 呉 琳(aa3404)が、ライヴスプラズマカノンを放つ。プラズマの粒子が夜空をつんざき、レガリス・エニアを打ち破った。
「感謝する」
「ああ」
 助けられた。
「たくさんの希望を失ってはならないわ……!」
(一人でも助けなきゃ……兄貴と俺みたいな人を……これ以上増やしたくない……)
 助けられた。――桐ケ谷はほっと胸をなでおろす。


●終息
 波が引いていく。
 敵の騒音が遠のき、事態はゆっくりと終息していく。
 救えたもの。救えなかったもの。エージェントたちは、――死力を尽くした。可能性を、少しでもすくい上げるために。
 まずは、第一段階。
 次なる戦いへと、彼らは身を投じていくのだろう。
「へえ……選り取り見取りじゃない」
 手垢のついていない英雄なんて、実に研究のし甲斐がある。手当てを終え、さて、どれがいいかと見繕い、――英雄をしまい込んだ幻想蝶をこっそりと持ち帰ろうとするルドヴィカ・ブロック(aa0670)。不老不死を渇望する彼女の目には、生と死の境目をさまよう英雄は一体どのように映ったのだろうか。
「あら、うっかりしてたわ」
 彼女は、咎められればあっさりと幻想蝶を手放す。

「僕は捧げます。この大地に、これから流す涙が減るように」
 ニケ(aa1646)は荒野に向かって跪き、祈りをささげる。散っていった英雄たちのために。救えなかった英雄たちのために。
 そして、これからも戦い、英雄を助けるという誓いのために。
「せめて今は安らぎを」
 風が通り過ぎていった。
 いくばくかの命が失われ、多くの命が救われた。
 エージェントたちの戦いはまだ、終わらない。

担当:
布川
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社