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神月 第1フェーズ:リプレイ

PCイラスト
ファリン
aa3137
PCイラスト
御童 紗希
aa0339
PCイラスト
御蔵 亮
aa1589
PCイラスト
麻生 遊夜
aa0452
PCイラスト
鬼灯 佐千子
aa2526
PCイラスト
古賀 佐助
aa2087
PCイラスト
邪英化アイリス
aa0124
PCイラスト
沖 一真
aa3591
PCイラスト
H.C/11-11イレヴンズ
aa4111
PCイラスト
黒金 蛍丸
aa2951
PCイラスト
繰耶 一
aa2162
PCイラスト
煤原 燃衣
aa2271
PCイラスト
餅 望月
aa0843
PCイラスト
一ノ瀬 春翔
aa3715
PCイラスト
鬼子母神 焔織
aa2439
PCイラスト
アル
aa1730
PCイラスト
小詩 いのり
aa1420
PCイラスト
鈴宮 夕燈
aa1480
PCイラスト
月鏡 由利菜
aa0873
PCイラスト
ガラナ=スネイク
aa3292
PCイラスト
蔵李・澄香
aa0010
PCイラスト
卸 蘿蔔
aa0405
PCイラスト
狒村 緋十郎
aa3678
PCイラスト
泉 杏樹
aa0045
PCイラスト
御門 鈴音
aa0175
PCイラスト
流 雲
aa1555
PCイラスト
斉加 理夢琉
aa0783
PCイラスト
カグヤ・アトラクア
aa0535
PCイラスト
イリス・レイバルド
aa0124
●開戦
 ガデンツァは借り受けた軍勢を見下ろしながら、玉座の上でほくそ笑んでいた。
「ふん、なぜ我がこのようなつまらぬことに戦力を割かねばならんのだ」
 眼前で群をなし、進軍するゴーストナイトたち。部隊は山間部の細い道を一列ですすんでいる。
「まぁ、よい、今宵の我は溜飲が収まらぬゆえ。悲鳴絶叫の強和音でも聞きながら眠りにつきたいところじゃった……。今から殺戮を味わえるのであれば、悪くはない」
 そうガデンツァは冷酷な支配者の仮面をかぶり直し、隣に佇む少女に声をかける。
「戦利品の試運転にもちょうどよいしのう……。イリスよ、いや、アイリスか」
 そうガデンツァは、黄金の輝きを失ったアイリス(aa0124hero001)へ声をかけた。
「ああ、そうだね。君が望むなら私はどんなことでもしよう」
 アイリスは普段共鳴している時とは違い、漆黒のスカート、白銀の胸当て、そしてガントレットだけだった。
 そして彼女の露出された素肌には、みみずばれのような傷が何本もついている。
「痛むか? アイリスよ」
「大丈夫だよ、私は君の守護者なんだから」
「あはははははははは! 気分がいい」
 ガデンツァは盾の耐久力を量ると称して、前回の撤退後多数の暴力を加えている。その痛みがまだ残っているのか、肌に指を這わせるとアイリスの眉がピクリと動いた。
「生意気な小娘も今では完全に抵抗をやめているようじゃしのう」
 そうガデンツァはアイリスの中に眠っている、能力者、イリス・レイバルド(aa0124)に語りかけた、彼女はその精神の奥深くに幽閉されてしまっている。
「と……来たか」
 その時ガデンツァは顔を上げる、ルネと視界を共有した結果参道をジープでかけてくる集団を見つけたのだ。
「そうか、では捨て駒たちを先にぶつけようぞ。進軍せよ霊騎士たち」
 そう指示を受けゴーストナイトたちの進軍速度は加速する、その先端と真っ向からぶつかろうとしているのは【王虎】を主軸とした攻撃部隊。
 衝突するのは山岳中央部になると予想された。
「みなさん、耐えてください!」
 そう鼓舞するのは【王虎】隊長ファリン(aa3137)である。
「アガサさん! お願いしますわ」
「任せて」
 そう、アガサ(aa3950)はメガネを持ち上げて武器を構える。鋭く放たれる霊力によって敵の注意がこちらに引きつけられる。
「よし、これで……」
 ゴーストナイトの一部は進軍速度をさらに上げていく。挑発に乗ってきたのだ。
「ほう……」
 それを見たガデンツァは眉をひそめた。
「まずいのう……」
 ついに一塊だった部隊は裂け、その隙間を狙って御童 紗希(aa0339)がジープを走らせ戦列を乱していく。
「かかって来い、この亡者どもが! お前ら全部潰して次に繋げる! 頼んだぞ!」
 ちなみに、口が悪いのは共鳴している英雄が言葉を吐いたからであり、紗希さん自身ではないということを弁解しておこう。
 そして紗希は慣れた手つきでハンドルを操作しながら、はぐれたゴーストナイトを小龍で射抜いていく
「ルネに動きがありますわ!」
 そのファリンの声で攻撃部隊は警戒。確かにルネは今まで見たこともないような形態をとっていた。まるでラッパを吹く奏者のような。
「トランペット・ルネじゃ。食らうがよい」
 そう、放たれた弾丸をアガサが身をもって止める。
「妹を護る為よ。これぐらいの痛みどうって事ないわ」
 そしてそのトランペット・ルネの前に躍り出る。御蔵 亮(aa1589)。
 彼を中心として【三友】が陣形を組み周囲のルネと相対する。
「未来、今回はてめーのわがままに付き合ってやる」
 敵の力量的にかなり厳しい戦いになると予想できるが、ここで引くわけにはいかない。
 そうドゥームブレイドを構えなおす亮
「ほう、さすがに一筋縄ではいかんようじゃな」
 そう最後尾でほくそ笑んでいるガデンツァ。その顔面に迫る魔弾。
「危ないよ」
 アイリスが盾を持ち、ガデンツァの隣に立つ。すると甲高い音と共に弾丸がはじかれ地面を転がった。
「ほう」
 その銃弾を放ったのは麻生 遊夜(aa0452)。銃撃部隊オルカの一員である。
 そして、その銃声を皮切りに左右に分かれたオルカの面々が、隊長であるゼノビア オルコット(aa0626)の号令でゴーストナイトに銃撃を浴びせていく。
 その攻撃に挑発されてか、ゴーストナイトたちは切り立った崖を滑りながらも上り始めた。
 しかし、機動力を奪われた従魔を狙い撃つことなどたやすい。
「アンタらに邪魔をさせるわけには行かないのよ」
 鬼灯 佐千子(aa2526)が接近するゴーストナイトを打ち落としていく。
 しかし、その直後。ゼノビアの隣でガデンツァをうかがっていた古賀 佐助(aa2087)は異変に気づくことになる。
 ガデンツァが部隊の中央まで足を進めている。そしてイリスはその近くにいない。
「目障りじゃのう。鯱の面々よ。いいものを送ろう」
 そして奏でられたのは風のように高く響く音。
《ドローエン・ブルーム》
 吹き飛ばされたゴーストナイトたち。彼等は苦痛の声を上げながら空を舞い、オルカメンバーめがけて投擲される。
「さぁて、派手に撃ち抜いて露払いと行きますか!」
 冷や汗をぬぐいながら佐助は言い。
 その報告をインカム越しにきいていた佐千子はPride of foolsを抜いた。
 直後霊騎士たちは体を軋ませながら着地しオルカの面々と接敵する。
「ふむ、なかなか良い作戦を立てたものじゃが、いささか研究不足じゃな……」
 そうつまらなさそうにつぶやいたガデンツァは、ルネを掴みあげると投げ。ドローエン・ブルームで吹き飛ばしという戦法を繰り返す。
 そのおかげでH.O.P.E.攻撃部隊は退路を断たれ分断。
 対してガデンツァの部隊は数は減ってしまったが、いまだにまとまった数の従魔を部隊としてはべらせている。
「その程度かのう?」
 余裕のガデンツァ。
 彼女は霊騎士の大部隊をさらに【王虎】めがけて投入する。
「皆様がた、道はわたくしたちが切り拓きます! どうぞガデンツァの許へ……!」
 ファリンが言うと、ジープに取りついてきたルネが口を開いた。
「何を言っておる?」
 それは紛れもなく、ガデンツァの声。
 そしてその声に緊張した笑みを浮かべつつファリンは言った。
「作戦は第二段階に進むのですわ……」
 その瞬間だった。
 空気を切り割き、音を置き去りに無数の弾丸がガデンツァに突き刺さる。


●決戦【暁】
「な!」
 それはガデンツァの視認できる距離のギリギリ外からの攻撃。
 だから気が付けなかった。オルカより向こう側に戦線を張っている部隊がいることに。
「前とは立場が逆だな。どうだ?一方的に蜂の巣にされる気分は。……俺は最高だ」
 そう一人心地につぶやいたのは沖 一真(aa3591)。
「俺はガデンツァを分断してくる、それまで縫いとめてくれ」
「OK、隊長」
「隊長はやめてくれよ、イレブンズ」
 そうH.C/11-11イレヴンズ(aa4111)が指を立てると。チャージが完了したLPCを構える。
「Good luck……あばよガデンツァ。LpCチャージ完了100%――照射」
 その膨大な攻撃力、そして射程距離を有する兵器は。アンゼルムをも苦しめたライヴスプラズマカノン。
 その力は小型化された今でも健在で、それへの対抗手段をガデンツァは見いだせないでいる。
「場所が悪すぎるのう……」
 ガデンツァは苦虫をかみつぶしたような顔で自身の盾を呼ぶしかなかった。。
「アイリス! こい!」
 そうアイリスの盾に隠れ、致命傷を避けるガデンツァ。
「ぐあ」
「ルネが奴らのもとに到達するまで、耐えるしかないのう、アイリス」
 しかし砲撃部隊は黒金 蛍丸(aa2951)率いる防衛部隊に抑えらえてしまっている。
 生半可な戦力ではあの布陣を崩せそうになかった。
「く、ぐあ……」
 長考するガデンツァ。
 しかし彼女の余裕とは裏腹に、アイリスの体は傷ついていく。
 全身から血を吹きだし、青あざを作りながらも砲撃からガデンツァを守る。
「とりあえず、山頂を崩そうとする奴らをぶち殺そうかのう」
 そう、ガデンツァは両手を上げる。アクアレル・スプラッシュの構えだ。
 だがその腕は繰耶 一(aa2162)の一撃によって弾き飛ばされる。
「目立ちたがり屋さんだね、構ってもらうのが嬉しいんだろう? こんな風に」
 ロングショットによる一撃はまたもガデンツァの視認できる範囲を超えて撃たれていた。そして両腕を粉々に砕き、攻撃のタイミングを失わさせる。
「く!」
 砕け、空中を舞うガデンツァの腕。水晶は衝撃に弱く。脆く、儚い。
「再生まで時間を……」
 その間に山岳の頂上付近が爆発に見舞われる。
 瓦礫が斜面を滑るように前方のゴーストナイトの部隊と、ガデンツァの間に横たわった。
「……お久しぶりですね?」
 そう弾丸の空になったファウストを肩にかけ、ガデンツァを見下ろすのは【暁】隊長。
 煤原 燃衣(aa2271)である。
――ゴーストナイトとは、分断させてもらった、お前の近くにいるのはわずかなルネとイリスのみ。そして。
 彼の英雄であるネイが告げると、ガデンツァの退路を断つように、残りの北西部打撃戦に参加したメンバーが到着した。
 これで形勢は一気に逆転。このままイリスを強奪し撤退すれば作戦は完了である。
 見事に術中にはまった、そう思ってかガデンツァは眉をひそめる。
――お前も、お前の宿題に答えて貰おうか!
 ネイは言った。
「それは『何故真贋に拘る』という、お主の問いかけのかのう? ネイ」
――……おいまさか『答えられない』のか?
「わきまえろよ、立場が違う。答える必要はない」
――なぜだ?
「我こそ、お主らをだます存在じゃからのう」
――話にならないな
 直後装填の完了したLPCが火を噴いた。殺到する弾丸。そしてその弾丸は見事にイリスの体に突き刺さる。
 次いで響くのは高らかな笑い声。
 そして蹲るアイリス。
「あー、アイリスが壊れてしまったのう、残念じゃ」
「イリスさん! これで」
 そう燃衣は彼女を救出するために走ろうとしたが、様子がおかしいことに気が付く。
 アイリスの体がぼろぼろとこぼれはじめているのだ。
 まるで砕けたガラスが徐々にその形を保てなくなっているように。
「偽物」
「やはり、この短期間ではアイリスの力を丸々複製することは叶わなかったようじゃのう」
 その通りと言わんばかりにどこからともなく現れるアイリスコピーたち、その数18。
「じゃが、この程度想定の範囲内であろう?」
 ガデンツァははいう。
「アイリスを模したコピーがいくら増えたところで、勝てるだけの戦力、そして戦術を用意してきているのじゃろう?」
 ガデンツァは心底嬉しそうに言葉を続ける。
「そうじゃろう、そうでなくては困る、じゃからのう、我はこうすることにした」
 そう告げると、アイリスコピーの一体がおもむろに剣を抜き、隣のアイリスに。

 刃を突き立てた

「さぁ、アイリスの手からアイリスを守って見せよ! お主らが早く本物を見つけなければ、死んでしまうぞ。もっとも」
 今、刃が突き立てられたアイリスが地面に崩れ落ちる。背中から血を吹き出して小刻みに震える姿は、か弱い少女そのもの。
「今死んでしまったそやつが本物かもしれんがのう」 
「ガデンツァ!!」
 そう彼女の忌まわしい名前を叫び先陣を切ってきたのは【鶏鳴机】のメンバー。
「これ以上、邪英化なんてさせません。どんなに強力でも止めてみせます」
 餅 望月(aa0843)は作戦の指示をしながらアイリスと切り結んでいく。
 しかし、アイリスがアイリスに攻撃をするのを防ぎながらとなると、戦闘は複雑さを増すのだ。
「さて、燃衣よ、我は今回の戦いでお主の首を持っていこうと思うのじゃが、どうじゃろう」
 そうガデンツァは告げると燃衣と、そして一真に攻撃を放った。
《アクアレル・スプラッシュ》
 しかし、その間に入り防ぐ黒金、不穏な空気を感じ前線に出てきていたのだ。
「ガデンツァ、覚悟して貰います!」
「また偽物か?ま、あの時の借りだ。纏めてお返しするぜ。《全員分》な」
 一ノ瀬 春翔(aa3715)はそう暁分隊【撥】の戦闘を走りガデンツァに突貫した。
「俺が動きを止める!」
 鬼子母神 焔織(aa2439)はそれにうなづき、イリスからの引きはがし【暁】のメンバーたちは作戦を決行する。
「我との戦いを所望するのじゃろう? よかろう、策をめぐらさずともその程度付き合ってやろうではないか。のう。燃衣よそして【暁】の面々よ」
 そうガデンツァは【暁】本体めがけ進軍しながら、風の音でルネを飛ばしていく。
 ここで本気で【暁】をつぶすつもりだった。


●戦場に響く歌
 戦場は混沌を増していく。
 それはガデンツァの戦法によって敵を守らなければならないという戦況の複雑さと、何より自分たちの知らない間にアイリスを殺されてしまっているかもしれないという心理的な圧迫によるものだった。
 それすべてが、本物のアイリスがだれだかわからないという問題に帰結する。
 それ故に誰もが全力で刃を振るうことができないと言った状態だった。
 その戦局を見つめていた情報部隊【蝶】のリーダー、エリメイア(aa1691)は歯噛みする。
 せめて何かイリスを判別できるきっかけでもあれば。
 だが、戦場飛び交う情報の中に、本物のアイリスを発見したという情報はない。
 そう願ったその時、彼女の通信機の向こうから歌が聞こえてきた。

「イリスちゃんアイリスちゃん。君にとっての光は、涙は、どんなもの?」

 そう、戦場の隅々まで、アル(aa1730)の美しい高音が響き渡る。
 その声にガデンツァが攻撃の手を止める。
「歌……かのう。これは……滅びの歌?」
 その声に戦場で武器をとっていた乙女たちの声が徐々に重なっていく。小詩 いのり(aa1420)そして鈴宮 夕燈(aa1480)等、チーム【ルナ】所属、アイドルたちの歌声である。
「力なき歌に何ができる……」
「それはどうでしょうね、ガデンツァ!」
 そうアイリスの剣を弾き前へと歩みを進めたのは月鏡 由利菜(aa0873)。
「我が舞踏を戦友達の祈りの為に捧ぐ……! 愚神を倒し、少女達を救う剣となれ!」
 そう彼女が可憐なステップで舞いを踊ると、ライブスの光が周囲を満たした。 
 そしてその光を受け、イリス部隊の中央に突貫するガラナ=スネイク(aa3292)。
「相方の頼みだ、血路は開く!しっかり取り返しに行くぞ!」
 そう攻撃を一手に引き受ける彼の背中を見送って、アイドルたちは謳いながら戦場を駆けまわる。
「この歌の涙は別れの涙じゃない。歌よ届いて! イリスさん、帰ってきてよ!」
 イリスを探し求めて戦場を駆けるいのりの声がこだまする。
 その身に刃を受けながら、戦闘があまり得意ではない、少女たちが必死に彼女を探している。
 

 そんな光景を見て、イリスは項垂れていた。


 イリスは、最初から最後まで、戦場での展開を見ていたのだ。
 邪英化したアイリスに支配された体ではあったが、ガデンツァの戯れなのか五感は共有されており、それでいて一切の操作はできないので四肢を鎖で縛られているかのような不自由感の只中にいる。
 なので、当然のごとくイリスの耳に彼女たちの声は届いていた。
 しかし、動けない。当然だろう、アイリスの力は強い、イリスが単体で立ち向かってもアイリスには到底勝てない。
 それは今まで共に生きてきて、いやというほど知っていた。
 知性としても、戦闘も。心の強さだって。
(ボクは、僕はここにいるよ)
 だから、そう皆に答えようと声を出しても、その口は動かない。
 イリスを縛り付けている鎖をほどこうともがいても、一向に拘束は解かれない。
 アイリスとイリスの間には絶対的な力の差がある、それをイリスは改めて感じた。
 そう簡単に体の主導権を奪い返せるわけがないのだ。
 そもそも、それを成すということは一瞬でも姉を超えるということ。
 それが自分にできるのだろうか。
 イリスはそう。思った。
 そして全身から力を抜いて、イリスはガデンツァの言葉をただただ聞いていることしかできなかった。
「バカな、なんの力も持たぬ歌で本物が見つかるとでも? 滑稽じゃのう人間達よ」
 そうあざ笑うガデンツァの声が耳に冷たく響いた。
(ごめん、ごめんなさい、みなさん。ごめんなさい。ボクはまた)
 見ていることしかできない
「あはははははははははは」
 そう甲高いガデンツァの声が響くと共に、その攻撃が【暁】の前衛メンバーを吹き飛ばしていくのが見えた。そのままガデンツァは【暁】狙撃犯へと接近していく。
「おおおおお、ガデンツァ!!」
 燃衣が叫びをあげた。
 その時。

 戦場にリィーンとガラスを響かせるような音が戦場に響きわたる。

 直後。ガデンツァの胸の奥から眩い光がほとばしった。
「なに!!」
 次いで震える、戦場にあるすべての『音響く護石』。
 そしてイリスの耳に届く声。
 透明で甘く響く。
 その声は確かに彼女のもの。

「頑張って、イリス……」

 次いで、歌がはっきり聞こえた。
 優しい姉と二人で作った。未完成の歌。
《涙雨の音~Friend~》
 その歌に込められた願いを、思いをイリスは口にする。
「別れを美談に仕立ててあきらめる……それでいいのか」
 一つ、腕を拘束する鎖がはじけた。
「別れの辛さに涙を流す……それで納得できるのか」
 二つ、足を縛る鎖がほどけた。
 そしてイリスは息を大きく吸い込んで叫んだ。

「みんな! こっちだよ ボクはここにいるよ!」

 その瞬間、ぎょっと目をむいてガデンツァは遠くにいるアイリスを凝視する。
 対して、邪英化アイリスは突如自分の口から発せられた声に微笑みを浮かべる。
「成長したね、イリス」
「みんな! 助けて! ボクは、ボクはここにいるよ!」
「ふ、これはあれじゃ、わざとそれらしきセリフを言わせることで……」

「「御託はもういいぞ! ガデンツァ」」

 そう戦場に鋭く響く声。そしてアイリスを光の本流が飲み込んだ。
 サンダーランスである。
「な! いったいなにが!」
「あの子だね」
 そうアイリスが指さした先には蔵李・澄香(aa0010)が立っていた。
「じゃが、この一撃で仕留められなかったのは痛いのう、さて次はどんな手を見せてくれるのか……」
「君は甘く見ているよ」
 アイリスがもう一度盾を構える、今度こそ押し負けないようにと。
「ガデンツァ。彼女を、彼女たちをなめない方がいい」

「……皆、射線開けて!」
 そう澄香はラジエルの書を展開。そしてその本の上に二つのペンダントを乗せる。
 片方は音響く護石。そしてもう片方はライブス結晶。
――リンク
「バースト!!」
 二つの水晶がぶつかり合うと甲高い音が澄香を包み、そのフォルムを変えていく。
 噴出するような燐光が背から広がり、七色の煌きを翼のように纏う。
 魔法少女服の意匠も変わり、膨大な霊力が澄香からほとばしった。
「歌声よ。二人に届いて。サンダーランス、届けぇ!!」
 二発、三発と放たれるサンダーランス、それは人間の限界を超えた所業。
「紫電の矢は心で放つ。サンダーランス!!」
 そして雷撃は周囲のコピーアイリスを全て焼き払ってしまった。
 それ程の威力を持つ雷撃をアイリスはまだ耐えている。
「とどけえええええ!」
 四発目の着弾を確認。
「く……これほどまでか……」
 アイリスは覚えている、初めて彼女と一緒に戦場に出た時のことを。
 何とも戦場が似合わない、可愛らしい女の子だとアイリスは思った。
 だからこそ、自分が守ろう。
 そうも思った、しかし。
「成長したのは、イリスだけではなかったようだ……」
 その時、澄香の背の翼が爆ぜた。
 時間切れだ。澄香の体が傾いだ。 
 膝をつく澄香、大量の血が口からこぼれ両手をつき四つん這いになった。
 体が悲鳴を上げているのだ。急速に下がる体温。ガタガタと体が震える。
 そんな彼女に。澄香の英雄であるクラリスが告げた。
――いつか教えたでしょう、澄香ちゃん。魔法少女は仲間を守るものだって
「…………うん」
――イリスちゃんはあなたが愚神に捉えられた時、助けに来てくれたでしょう。
「うん!」
――今、あなたがあの子を助けなくてどうするんですか! 立ちなさい澄香!!

「わかってる!! ああああああああ!!」

 そして放たれた五発目の雷の槍。
 それを真っ向から受け止める構えのアイリス、しかし。
 その盾が真上に吹き飛んだ。
 テレポートショットによる奇跡の弾道。
 それを顕したのは卸 蘿蔔(aa0405)。
「絶望、なんてしません。今度は、私達が助ける……のです」
 そして轟音と共にサンダーランスがアイリスの体を貫くと。
 ついにその膝が地面についた。
「見事だよ。完敗だ……」
 次いでリンクを強制解除された澄香が倒れ込む。その体をいのりが抱き留めた。
「よく頑張ったね、澄香」

 だが、突如アイリスが胸を押さえて苦しみ始めた。

「なにがおきてるの!?」
 唖然とするいのり、凝視してみるとその胸から青い光があふれ出ている。
 そして歌が聞こえる、それは滅びの歌。
「まさか、そんな……」
 いのりは思い出していた。遙華から聞いた体内に潜伏するタイプのルネを。体内にルネを仕込まれた者の死にざまを。
「まずい」
 そう思った矢先、本物のアイリスへ突貫してくる、コピーアイリス合計四体。
 その刃を狒村 緋十郎(aa3678)、そして泉 杏樹(aa0045)が受け止めた。
「二度と涙を流させぬ想いの涙雨の音は未完。イリスさんに続き作ってもらうの」
「頼む! 榊原」
 緋十郎がそう背後に視線を送ると、沙耶がアイリスを抱き起しその胸に手を当てていた。
「しっかりしなさい! 歌で人を傷付ける奴に負けないで!」
 そう沙耶の英雄の沙羅が叫び、パニッシュメントを放つ、直後その光は粉々に砕け散った。
 これでガデンツァの全ての脅威から解放されたことになる。

「やってくれたのう……」

 その怒りに満ち満ちた声が、音となって沙耶の足元から噴出する。
 アクアレル・スプラッシュ。
 それが彼女を連続で打ち据える。
「お主のことは初めから好かんかった、初めに殺しておくべきじゃった」
 そう低い声を響かせて、カァンと踵を鳴らしてガデンツァは沙耶の前に立つ。 
 彼女は全身をひびだらけにしながら【暁】を壊滅させ、そして戻ってきた直後だった。
「お主が余計なことをしなければ、あと少しでとどめを刺すことができたものを」
 そう佇むガデンツァにガラナが背後から刃を向けた。
「ずいぶん手厳しくやられたみてぇじゃねぇか」
 ふっと笑い、ガデンツァはガラナの言葉を一蹴する。
「沙羅、沙耶か? どっちでもよい。お前を殺す。ついでにイリスも、そこの小娘もじゃ!」
 そう激昂するガデンツァの前に遮るように大剣を掲げる緋十郎。
「イリスもアイリスも一緒に旅館に帰ろう。ああ……必ず、連れて帰ってやる……! だから、俺を信じて引け!」
《シンクロ……》
「あとは任せます!!」
 二人はアイリスを幻想蝶に収納し、イリスを背負って戦場を離脱した。


●最終楽章
 緋十郎の体が傾いで、血の海に沈む。
 次いで右腕を切り落としたガラナに、緋十郎の流した血がまとわりついた。
 それはガデンツァの肩口の断面に接続され、音を響かせる媒体となる。
《シンクロニティ・デス》
 その攻撃を受けた二人は、息はあるが満身創痍という状態で横たわっている。
 早く手当てしなければ命に係わる。そんな怪我だった。
「行きましょう、今こそガデンツァと決着をつける時」
 そう、アイリスコピーを排除した由利菜がガデンツァへと走る。
 その背を追うように御門 鈴音(aa0175)は駆けた。
「輝夜、お願い力を貸して」
――全力で行くぞ、鈴音
 いつもの鈴音フォームから朱麗鬼フォームへと変身、矢のように地面を駆け、その大剣でガデンツァの足を粉砕した。
「ぐぁ!」
《ドローエンブルーム》
 反射的にガデンツァは、周囲のリンカーを吹き飛ばす。しかし敵を吹き飛ばしても次の瞬間には別の近接アタッカーに肉薄されている。
 ガデンツァにとっては悪夢のような状況である。
「鈴音!! 貴様!」
《シンクロニティ・デス》
 そう鈴音に突き刺した杭から音を伝えるガデンツァ。彼女の指先や目の縁、口から血がだらだらと流れ出てくるも。
 鈴音はその杭を掴み。クロスカウンターの一撃を加えた。
「なに!」
 その攻撃に合わせて由利菜がその刃を顔面に突き立てると。悲鳴を上げてがガデンツァはのた打ち回った。
《ドローエン・ブルーム》
 そう、アタッカーたちを吹き飛ばし、周囲に飛び散った血から水分を補給、体を再構成していく。しかし。明らかに水が足りていない。
(【暁】戦でドローエン・ブルームは使用済み……)
 しかし、敵は実質由利菜だけである。
 であれば、無理やり、死音をきかせてやれば押しとおれる。そうガデンツァは構えをとる。
 しかし。そんなガデンツァの背後から襲うのは流 雲(aa1555)の刃。
 そして雲をはじめとした【luar】のメンバーたち。
「まだ、戦力を温存しておったのか……」
「厄介な能力みたいだね。出来ればここで討ち取っておきたいな。」
 そうガデンツァを挑発する雲。
「我にその手の挑発はきかんぞ」
「絆を弄び造りだした心ある者を自分の都合で壊していく 私はそれが許せない」
 そう叫んだのは斉加 理夢琉(aa0783)
「お主もそこにおったのか理夢琉」
「旋律を乱すガデンツァは要らないのよ、覚悟なさい!」
「おぉ、美しい愚神じゃな。飾って愛でてやるから、その首よこすがよい!」
 そして、【luar】リーダーのカグヤ・アトラクア(aa0535)までもが姿を現した時、ガデンツァの表情が変わった。
「ふはははははははははは」
「何がおかしいの!」
 理夢琉が食って掛かるのを雲は制した。
「いや、見事じゃ! 前回わらわの策に踊らされたもの達とはとても思えん」
「戦力の分断、歌によるイリスの判別、遠隔からの強攻撃力での一方的な銃撃、それを守る盾。体内に潜り込んだルネの存在も読まれておる上に。全力を使い果たしたわらわに、まだこれほどの部隊を差し向けられるとは。恐れ入った」
 そうひとしきり笑い転げるとガデンツァは突然冷静になっていった。
「わらわはこの戦場から引こう」
「無事に帰れると思ってるのか、ガデンツァ」
 雲が言う。
「いや、真っ向勝負であれば、カグヤに足止めされている間に他の者から一方的に攻撃をもらえば、攻めきることはできんのう。なので。奥の手をつかわせてもらう」
 そうガデンツァが指を鳴らした直後。
 まず、地面に転がっていた何体かのコピーアイリスが動いた。
 まるで糸に釣られたマリオネットのようにガデンツァの周囲に集まると。彼女は言う。
「こやつらの増幅能力を見せてやろう」
 そう言うとルネ全員が巨大なスピーカーに姿を変えた。そしてその背から伸びたジャックがガデンツァに突き刺さる。
「聞け! 我が音色を」

 次の瞬間大音量で流されたのは風の歌。
《ドローエン・ブルーム・フルオーケストラ》
 しかし音の厚みが違う、何重にも重ねられた音は、まさにオーケストラと呼ぶにふさわしく。何倍にも増幅されたドローエン・ブルームが広範囲にわたってリンカーたちを吹き飛ばした。
 その風の中でガデンツァは言う。

「次はこうはいかんと思へ、わらわはお主らを敵とみなした。全力でその命を奪いにかかる。それまで大切にしておけ、その命の響きをな!」

「く!」
 その風に押されつつも耐える雲。その目の前にガデンツァは突如現れ。シンクロニティデスを放つ。
「ほれ! わらわにも撃ってみよ」
 そう、追撃しようとしたガデンツァの間に挟まったカグヤに対しても放たれる、ガデンツァのシンクロニティデス。
 しかし。彼女は血を吐いただけでその攻撃に耐えて見せた。
「面白くない。ルネと遊んでおれ」
 そう風に乗って飛んでいくガデンツァ。
「遊ぶと言っても、死に体ではないか」
 そう、砕け散るルネを身ながら、カグヤは周囲に適性生物がいないことを確認する。
 ゴーストナイトたちはまだ向こうがわに沢山いるが。
 ガデンツァとルネの排除には成功した。
 そしてカグヤの耳にイリスたちが目を覚ました報告が入る。
「これなら勝利と呼べるかのう?」
 そうカグヤは周囲に転がっている重体者の回復に回った。

担当:
鳴海
監修:
御神楽
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クラウドゲームス株式会社