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【東嵐】 第1フェーズ:リプレイ


PCイラスト
藤丘 沙耶
aa2532
PCイラスト
花邑 咲
aa2346
PCイラスト
虎噛 千颯
aa0123
PCイラスト
鹿島 和馬
aa3414
PCイラスト
天都 娑己
aa2459
PCイラスト
大宮 朝霞
aa0476
PCイラスト
夜月 海斗
aa2433
PCイラスト
鐘 梨李
aa0298
PCイラスト
月鏡 由利菜
aa0873
PCイラスト
小鉄
aa0213
PCイラスト
齶田 米衛門
aa1482
PCイラスト
今宮 真琴
aa0573
PCイラスト
木陰 黎夜
aa0061
PCイラスト
始麻
aa0179
PCイラスト
氷月
aa3661
PCイラスト
佐倉 樹
aa0340
PCイラスト
秋津 隼人
aa0034
PCイラスト
流 雲
aa1555
PCイラスト
化野 燈花
aa0041
PCイラスト
御代 つくし
aa0657
PCイラスト
真壁 久朗
aa0032
PCイラスト
GーYA
aa2289
PCイラスト
努々 キミカ
aa0002
PCイラスト
エクス
aa0965

 ライヴスヴィークルを操縦し、藤丘 沙耶(aa2532)は九龍深城を目指して海を走る。
 生きて帰るわよ? と、頭の中に響いた英雄の声に沙耶はそっけなく答えた。
「……さて、どうだか」
 沙耶の返答は決していい加減に発せられたものではない。
 九龍幇はH.O.P.E.が裏切ったと思っている。その中で、こうしてエージェントたちがやってくれば当然、誤解は深まる……それどころか、彼らからすれば裏切りは『確証』に変わったかもしれない。
 そうであるなら、彼らは全力でエージェントと戦うだろう。
 そんな中、彼らの誤解を解き、停戦への説得を行いたいH.O.P.E.所属のエージェントたちはできるだけ彼らを傷つけずに事を収めたい……つまりは、エージェントたちは全力で戦うわけにはいかない。
 百パーセントの力で向かってくるものを、それ以下の力で抑えなければいけないのだ。
 死の覚悟さえもして、取り組まなければいけないことを知っているからこそ、沙耶の返答は自ずと厳しいものになった。

 沖から岸へ近づくと、岸には九龍幇の見張り役がいることがわかった。
 しかし、彼らは手元の機械をいじることに集中しており、ライヴスヴィークルやボートで近づくエージェントたちには気づいていないようだ。
「発電所と総合通信センターの異常のせいで通信が不安定で動揺しているようですね」
 陸の上で慌ただしく動いている見張り役の様子を見て花邑 咲(aa2346)は言った。
「場合によっては岩場の方からこっそり上陸するつもりでいたけど……」
 小隊【駄菓子】の虎噛 千颯(aa0123)も九龍幇構成員の統制がとれていない様子を見て言った。
「これは、一気に奇襲をかけた方がいいかもしれないな」
 エージェントたちは話し合いの末、ボートやライヴスヴィークルの速度を上げて岸に近づいた。
 岸に近づけば当然、九龍幇の構成員たちもエージェントたちの姿に気がついたけれど、彼らの通信機は使えず、迅速に応援を要請することはできない。
 数名の構成員が岸とは逆に内陸部の方へ走っていく。
 おそらく、エージェントたちが来たことを……H.O.P.E.が自分たちよりも早く行動を起こしたことを知らせに行くのだろう。
 エージェントたちも、九龍幇の構成員たちも英雄と共鳴し、戦いに備えた。

「おっし! 頑張ろうぜ!」
 千颯がボートから飛び出し、仲間を従えて先陣を切る。
 携帯音楽プレーヤーの音量を最大にして派手に音楽を鳴らしながら構成員の注目を集め、彼らの攻撃を受け止めたり、かわしたりしながら士文をはじめとした九劉幇の幹部たちの説得をする部隊が進む道を切り開く。
「みんなのために、俺はやるときゃやるぜ!」
 そう叫ぶと、小隊【駄菓子】の呉 琳(aa3404)はクロスボウを構え、威嚇射撃を行う。
「陽動すんのはいいけどよ……来るやつ全部、無力化しちまっても構わねぇよな?」
 琳の威嚇射撃により生まれた一瞬の隙をついて、同じく小隊【駄菓子】の鹿島 和馬(aa3414)はハウンドドッグを撃ち、構成員の足を傷つけて無力化を狙う。
 構成員が倒れたのを確認すると、和馬は小隊の仲間である天都 娑己(aa2459)を振り返って言った。
「回収は頼んだ!」
 娑己は構成員を縛っておくために大量に用意している縄の束から一本取り出すと、睨み付けてくる構成員に近づいた。
「ごめんなさい。ちょっとじっとしててくださいね」
 しかし、九龍幇の構成員がそんな言葉に素直に従うはずもなく、隠し持っていたナイフで娑己の腕を切りつける。
「潔く殺せ!」
 そう叫んだ構成員の視線を娑己は真っ直ぐに受け止める。
「殺したりしません……私たちは争うために来たんじゃありません」
 娑己が傷を負ったことに気づいた小隊【駄菓子】の大宮 朝霞(aa0476)は慌てて娑己のもとへ駆け寄り、ケアレイをかけながら言った。
「小泉孝蔵さんは私たちを朋としてくれたもん! 武力衝突は絶対回避させるわ」
 朝露にも……他のすべてのエージェントたちの眼差しにも、九龍幇との一時停戦を成立させるという強い意志が現れていた。


 振り下ろされる中国刀をフラメアで弾き飛ばした夜月 海斗(aa2433)は、武器を失った構成員を思いっきり殴った。
「『殴り込み』とは、なんとも分かりやすく俺向きな作戦か」
 飛び交う銃弾や弓矢を避け、時には槍で銃そのものを叩き落とし、弓を壊し、剣を弾き返して、海斗はひたすらに殴り続けた……『殴り込み』という言葉が表す正しい意味を知らぬまま。
 鐘 梨李(aa0298)は複数名でかたまって動いている構成員の脚を狙ってエクスキューショナーを振るい、ひとまとめに地面に倒していた。
「できることを、やるだけ!」
 戦意を失わずに向かってくる者には、梨李はさらに一気呵成を使い、気絶をさせた。
「負傷者は少なく、死者も最小限に……」
 H.O.P.E.からの指示を小声で復唱しながら、咲は目立たぬように戦場の状況を冷静に観察していた。
「戦うことではなく、守ることが使命なら……お役に立てるかもしれません」
 少し離れたところでライフルを構えている九龍幇の構成員を見つけると、咲は忍びより、ライトブラスターでライフルを破壊した。

 そうして見張り役の構成員たちを引き受けてくれるエージェントたちが切り開いた道を通り、先へと進んだエージェントたちの目にスラム街が見えてきた。
 のっぺりと白く塗られたマンションのような建物の壁は空高く伸び、そして横にも長く続き、その壁には幾つもの窓が付いていた。
 同じような建物が道の左右に立ち並び、決して広いとは言えない道から見上げた空は長方形に切り取られたようだった。
「まだ劉の居場所はわからないのでしょうか?」
 小隊【鴉】の月鏡 由利菜(aa0873)は香港九龍支部から渡されていたエージェント専用情報端末を確認する。
 総合通信センターを介しての情報のやり取りはできないため、一般的なスマートフォンなどは使えないけれど、香港九龍支部の支援によってエージェント専用の通信回路が用意され、エージェント専用情報端末を使用して端末間での情報のやり取りは可能だった。
 しかし、すでに街の中にいるはずのマッピングの役目を買って出た数名のエージェントたちからはまだ詳しい情報は届いていない。
「仕方ない……手当たりしだいに劉を探すしかないでござろう」
 小隊【鴉】の小鉄(aa0213)がそう呟いたその時、同じく小隊【鴉】の齶田 米衛門(aa1482)の頭の上に何かが降ってきた。
 頭の上にぐちゃりとぶつかったそれを手に取り、米衛門は言葉通り、目を点にした。
「……こりゃ、パイだべ?」
 次の瞬間、白い建物の窓から次から次に食べ物や生活用品が飛んできた。
 りんご、みかん、ホールケーキ……それからクシや手鏡、コーヒーカップ、花瓶などなどを、武装していない人々が窓から投げてくる。中には小さな子供の姿まである。
「……どうやら、構成員ではない一般市民のようでござるな」
 そうぼやきながらごま団子を避けた小鉄の後ろでそのごま団子をしっかりキャッチした小隊【鴉】の今宮 真琴(aa0573)はそれを躊躇なく口に入れた。
「チョコバーが切れてどうしようかと思いましたが……天からの恵みですね!」
 拾い食いをするななのぢゃ! と、頭の中に英雄の声が響く。
 木陰 黎夜(aa0061)は食べ物を投げてくる市民たちに注意した。
「大事な食料をうちらの妨害に使うな」
 一般市民からのかゆいくらいで痛くはない妨害を受けている間に、九劉幇の構成員たちが前方から集まってきた。
「道を塞ぐ者は押しのけて通る、これ忍びの極意でござるよ」
 真の忍びの極意とは噛み合いそうもないことを言いながら、小鉄は一番槍を取るべく、構成員たちの波を割るように駆け出した。
「次への一助、その為なば幾らでもオイはいげる!」
「私たちの役割はH.O.P.E.と九龍幇を繋ぐこと……融和のために力を尽くすのみです!」
 米衛と由利菜も小鉄に続く。

 その頃、マッピングを行っていた伊和井琴穂(aa3797)は、細い路地に隠れながら極々小さな小声で叫んでいた。
「ああもう……いくら何でも入り組みすぎよ!!」
 やっと士文たち幹部がいると思われる場所を探しだした琴穂だったが、エージェントたちが上陸したところからその場所までの地図を作るのに苦労していた。
 白く、高く、長い壁の似たような建物がいくつも並ぶスラム街はまるで巨大な迷路のような構造をしていた。
 それでも、情報収集に走り回っていたエージェントたちはお互いに得た情報を共有し、なんとか地図を作り上げた。

「地図が来ました!」
 情報端末を確認して、由利菜は知らせる。
「道と時間は稼いでやるさ、さっさとしてくれ」
 始麻(aa0179)はそれだけ告げると、道を開けるためにスナイパーライフルを構えて駆け出し、構成員の足元に連射しながら進んだ。
 途中、中国刀で斬り込んできた構成員はライフルの銃身で顔の側面を殴った。
「チッ、手間ァ掛けさせんな」
 加勢に来た小隊【駄菓子】の氷月(aa3661)も銃剣付きライフルの銃床で構成員を殴り気絶させた。
 殴り込み部隊が構成員の足止めをしてくれている間に、交渉を目的としたエージェントたちは情報収集部隊が作成した地図を見ながら先へと進む。


 暗い部屋の中、九龍幇の幹部たちは厳しい眼差しを劉士文へ向けていた。
「戦況は?」
 H.O.P.E.が攻め入ってきたという間違った情報が士文の元に届いていた。
「岸で見張りをしていた者たちは捉えられたようです」
「加勢に行った者たちは街の入り口で戦っていますが……通信機器が使えず、統率が取れないため、押され気味です」
 戦況を確認して戻って来た数名の構成員が状況を報告する。
「俺を行かせてくれ!」
 李永平の言葉に士文は「落ち着け」と諭した。
「通信機器が使えない今、実際のところ、エージェントたちがどこまで来ているのか正確なことはわからない……おそらく、もうすぐここに来るだろう」
「No way……」
 そんなに早く、ここに辿り着けるはずがないと永平は思った。
「彼らの団結力を甘く見ない方がいい」
 士文は最上階の窓から下の道を見た。
「……永平、彼らを出迎えてくれ」
「え?」
「真に彼らが今倒すべき敵なのかどうか……見極めてこい」
「……OK。マイロード」と返事を返して、永平は花陣とともにその部屋を後にした。

 ホテル『バウヒニア』……地図を元に辿り着いた建物の重い扉を押し開き、エージェントたちはエントランスへ足を踏み入れる。
 他の建物の間に身を隠すように地味だった外観に反し、内側は意外にも華やかな内装だった。
 床にも壁にもアラベスカートコルキアの大理石が使われ、天井からはクリスタルシャンデリアが吊るされていた。
 しかし、そんな見た目に反して、その場は物々しい空気を漂わせている。
『黒兵』と呼ばれる精鋭部隊がずらりと並び、彼らの武器である剣や刀、槍、戟などが壁に立てかけられている。
「よぉ。よく来たな」
 黒兵が横に割れ、その間から永平が現れた。
「……それは、歓迎してくれるということでしょうか?」
 小隊【鴉】の佐倉 樹(aa0340)の言葉に、永平は眉を吊り上げた。
「んなわけねーだろ!」
 手近な戟を掴むと、永平はそれを振り回す。
 そして、斬り込んでくる……と思いきや、エージェントたちの方へ戟を勢い良く投げ飛ばしてきた。
 慌ててエージェントたちがそれを避けた次の瞬間、黒兵が一斉に突っ込んでくる。
「っ!」
 小隊【鴉】の秋津 隼人(aa0034)は慌てて盾を構える。その盾に剣がぶつかり、鋭い音を立てた。
 他のエージェントたちも黒兵の攻撃を受け止めたり、避けたりはするものの、反撃は行わない。
 それどころか、混戦の中において樹は武器を幻想蝶にしまうと、共鳴さえも解除して、英雄を幻想蝶の中へ入らせる。
「……」
 怪訝な表情となった永平に対して、樹ははっきりと言った。
「私たちは再度の対話を望みます。担保が必要なら、私の命をあなたに預けます」
「……その言葉を信じれと?」
 相手を見極めようとして、永平は目を細くする。
「護衛役なら話し合いの邪魔は無しにしようぜ」
 小隊【子羊】の流 雲(aa1555)の言葉に永平はほんの少しだけ考える。
「……Honestly、マイロードにお前らを見極めてこいって言われて困ってたんだよな」
 そう言って永平は後ろ頭をガシガシとかいた。
「見極めるなんて、そんなややこしいことは俺には無理だ……そういうのは、マイロードの仕事だからな」
「それじゃ……」
 樹の問いに、永平は後ろにある階段を示すように顎をクイッと動かした。
「行けよ」


 重厚な木の扉を開けると、そこには士文をはじめ、九龍幇の幹部たち、そして、士文の秘書たちがいた。
 彼らはエージェントたちに銃を向け、英雄と共鳴した。
「……永平はお前たちを信用に値する組織として認めたということか?」
 唯一、銃を構えていない士文がそう尋ねた。
「いいえ」と化野 燈花(aa0041)が答える。
「判断はあなたに委ねると言っていました」
 士文は少しだけ笑った。
「なるほど」
 実のところ、永平がどのように判断するか……要するに、自分で見極めることを投げ出すことはわかっていた。
 士文は自分の目で、エージェントたちを……H.O.P.E.という組織を見極めたかった。しかし、先のタイミングで彼らを通すように言っては、幹部らの反発が大きくなることを懸念して、まずは永平を嗾けたのである。
「それで」と、士文は一転、厳しい目をエージェントたちへ向けた。自身の目で、真を見極めるために。
「こんなところまで押しかけてくるとは、何の用だ?」
「今一度! 対話の機会をいただきたい!!」
 隼人の言葉に士文は問う。
「そうしてまた裏切るつもりか?」
「H.O.P.E.は裏切るような真似はしない! 謀ったりしない! 信じてください!!」
 共鳴を解除した【鴉】の御代 つくし(aa0657)が訴える。
「それを証明できるのか?」
「これは俺の推測だが……そちら側にも、毒を撒きに来た蟲が入り込んでいるのではないか?」
 真壁 久朗(aa0032)の言葉に、士文は眉間にしわを寄せた。幹部たちも同様に、険しい表情を深める。
「それはどういう意味だ?」
 久朗は香港九龍支部内で起こったナレイン・ミスラ事件についての全容を話し、それと同時に事件の報告書と資料を渡した。
「愚神は人間の信頼ですら道具とする」
 真っ直ぐな久朗の眼差しを士文は厳しい目で受け止める。
「……つまり、我々の中にも愚神が混じっていると?」
 士文の言葉に、幹部たちがざわつく。「まさか……」と、見慣れたお互いの顔を見合わせる。
 そんな幹部たちの動揺を拭い去るように、小泉孝蔵が口を挟んだ。
「そんな資料、いくらでも偽造できると思わないか?」
 小泉は部屋の中央、ちょうど幹部たちとエージェントたちの真ん中あたりに立ち、言葉を続けた。
「そんなもの、ただの紙切れじゃないか? なんの証拠にもなりはしない」
 小泉の小泉らしくない言葉に士文の眉がピクリと上がる。
 他の幹部たちも、小泉の言動が以前とは違うことに気づき始めていた。
 その場にしばし、妙な沈黙が流れる。
「……新人の俺が言うことじゃないのかもしれないけどさ」
 共鳴を解除したGーYA(aa2289)は勇気を持って、沈黙を破る。
「俺は自分が見て感じたことを信じるよ」
 GーYAは真っ直ぐに小泉を見つめる。
「小泉さんもそうなんだろ?」
 そのままゆっくりと、GーYAは小泉へと近づく。
 士文の秘書が銃口をGーYAに向けたが、それを士文が手を上げて止めた。
「……ああ、そうだ」と、小泉は頷く。
「だから、私はH.O.P.E.を信用しない」
「日本で俺たちと会って、小泉さんはH.O.P.E.を朋と認めた。だから、会談に応じたはず……」
 GーYAはぐっと拳を強く握った。
「朋を覆す理由を、馬鹿な俺でも判るように教えてよ!」
 握った拳を小泉へと向け、GーYAは賭けに出た。
 そして、その賭けはGーYAの想像通りの結果をもたらし……その拳は小泉に触れる前に、GーYAの体ごと弾き飛ばされた。
「っつ……!」
 GーYAは体に受けた衝撃に顔を歪める。
「……小泉大人。あなたは、能力者ではなかったはず……」
 手を触れることさえもせずにGーYAを弾き飛ばした小泉に、士文は問い正す。
 しかし、小泉はしれっと答える。
「先日、能力者として目覚めたばかりなんだ。そう。H.O.P.E.に襲われた時に」
 エージェントたちは小泉に対して警戒を高め、九龍幇の幹部たちも動揺を押し殺して銃を握る手に力を込める。
「H.O.P.E.があなたを襲ったなんて嘘です……九龍幇が重要視しているのは小泉孝蔵氏、あなたの証言ですね。ならば、それを崩しましょうか」
 GーYAが立っていた場所に燈花が進み出る。
「小泉孝蔵氏しか持ち得ないものがあるそうですが、今、そちらにいる孝蔵氏はそれを持っていらっしゃるんですかねぇ?」
 遠回しな言い方ではあったが、士文を含め、幹部たちはそれが銀でできた龍の根付けであることを察した。
 部屋中の視線が小泉に集まる。
 小泉はふふふっと笑いを漏らした。
「……ゲームオーバー……か」


「ああ」と久朗が小泉を睨む。
「愚神、お前たちのゲームはもう終わった」
「何を勘違いしている?」
 くっくっくっと小泉の声ではない笑いが、彼の口から漏れる。
「ゲームオーバーなのは、お前たちだ!」
 小泉の姿をしていた愚神はその腕をニュルリと伸ばすと、大きな鉤爪の現れた右手で士文の胸元をかっ切ろうとした……。
 その時、つくしが士文の目の前に飛び出し、士文をかばった。
 背中に鉤爪が食い込んだつくしの体は天井に近い高さまで弾き飛ばされ、壁に当たって床に落ちた。つくしの服は切り裂かれ、深紅に染まっていく……。
 そのつくしの姿に、その場にいたエージェントたちだけでなく、九龍幇の幹部らや秘書たちも鋭い眼差しを愚神に向けた。
 士文は秘書に視線を向けると、「彼女の手当てを」と指示を出した。二名の秘書が「はい」と返事を返し、つくしの元へ向かう。
「敵を庇うなど……愚かな人間よ……」
 愚神がそう笑って鉤爪を少し動かした次の瞬間、鋭く飛んできた弾丸によって愚神は一瞬にして塵と化した。

 その弾丸は、士文とエージェントたちがいる部屋の外……窓ガラスを粉砕して向いの建物から飛んできたものだった。
「俺の出番はない方がいいと思っていたんだけどな……」
 捨て身で交渉に挑む仲間がむざむざと殺されることのないように、援護するためにその場所から部屋の様子を見ていた小隊【徒手】の浪風悠姫がロングショットを使って、16式60mm携行型速射砲を放ったのだ。

 その一瞬の出来事に驚いてその場の全員が向いの建物にいる浪風へ視線を向けると、浪風は速射砲を足元において、一礼した。それは、九龍幇に対して、敵意がないことを示すためだった。
 それを見て、 士文は無意識に手にしていた自らの武器……長身の刀をしまい、幹部らへと目をやった。
「残念ながら、我々は小泉大人までも失っていたようです」
「会談場所を襲ったのも、愚神だったということか?」
「しかし、だからと言って、H.O.P.E.が信頼に足りるかどうかという証拠にはならん」
 九劉幇の幹部たちがざわつく中、小隊【徒手】の努々 キミカ(aa0002)が彼らの前へと歩み出た。
「私たちを『朋』と呼んでくれた人のために、私はこの戦いを終わらせに来ました! 本物の小泉大人の融和の遺志を守るため……」
「キミカの言葉に嘘偽りはない」と、小隊【徒手】のエクス(aa0965)が言った。
「共鳴解除をすればこちらからは手は出せない。どうか話を聞いてほしい……」
「H.O.P.E.と九龍幇の争いは互いの力を殺ぎ、マガツヒと愚神しか喜びません」
 キミカの言葉に、幹部たちは顔を見合わせ、「確かに」と頷いた。
「……どうやら、冷静さを失い、相手を見誤っていたのは我々のようだ」
 士文の言葉に、エージェントたちの表情が明るくなる。

「我々九龍幇は、H.O.P.E.との一時停戦を約束しよう」



担当:
gene
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社