• 0
  • 103,490
  • 27,461
キャラクター基本画像
ゲスト(aa0000)
スターコイン購入 マイページ キャラクター切替
お気に入り

【東嵐】 第1フェーズ:リプレイ


PCイラスト
風見 春香
aa1191
PCイラスト
千石 琉
aa0685
PCイラスト
神鷹 鹿時
aa0178
PCイラスト
赤谷 鴇
aa1578
PCイラスト
來燈澄 真赭
aa0646
PCイラスト
三ッ也 槻右
aa1163
PCイラスト
天川 結
aa0953
PCイラスト
天之川・希望
aa2199
PCイラスト
御手洗 光
aa0114
PCイラスト
廿小路 沙織
aa0017
PCイラスト
桃井 咲良
aa3355
PCイラスト
小詩 いのり
aa1420
PCイラスト
蔵李・澄香
aa0010
PCイラスト
リッソ
aa3264
PCイラスト
言峰 六華
aa3035
PCイラスト
江口 焔
aa1072
PCイラスト
榊原・沙耶
aa1188
PCイラスト
ミハイル・エッカート
aa0315
PCイラスト
鶏冠井 玉子
aa0798
PCイラスト
蛇塚 悠理
aa1708
PCイラスト
弥刀 桜
aa1778
PCイラスト
ヴァイオレット ケンドリック
aa0584
PCイラスト
ハーメル
aa0958
PCイラスト
旧 式
aa0545
PCイラスト
言峰 estrela
aa0526
PCイラスト
嫉 妬
aa0775
PCイラスト
謂名 真枝
aa1144
PCイラスト
アンジェリカ・カノーヴァ
aa0121
PCイラスト
風見 春香
aa1191
PCイラスト
杵本 千愛梨
aa0388
●火蓋は切って落とされるか
 通信の断絶による困惑と苛立ちが、古龍幇の間に広がっていた。

 膠着状態が続いているのは、皮肉にも古龍幇の命令系統の麻痺のためだ。しかし、それも限界が近い。既に末端の構成員たちが痺れを切らし、H.O.P.E.のエージェントたちと小競り合いを始めようとしていた。

 何か一つ。
 何か一つでもきっかけがあれば、すぐさま全面的な戦闘に発展するだろうことは予想に難くない。制圧された警察総部には、大勢の警察官たちがいる。彼らは古龍幇に対抗するためには、あまりにも無力と言わざるを得ない。
 そして何より、狂化薬による古龍幇の構成員の『暴走』の懸念。
 ――判断を一歩誤れば、多くの血が流れるだろう。

 エージェントたちの任務は、<衝突の回避>。

 古龍幇との『停戦』。その望みは、ほんのかすかに。まだ、完全には失われてはいない。わずかな希望を手繰り寄せるように、エージェントたちは任務を開始する。

●水面下での情報戦
 少しでも情報を集めるために、と、街のあちこちを斥候が走り回っている。
「緊急時だ。警察特権で香港名物のオープントップバスをチャーターできるかい?」
 風見 春香(aa1191)の大胆な作戦を聞いて、H.O.P.E.の職員らは思わずおののいた。風見自身が囮になり、構成員を誘い込むというのである。
 判断に迷う猶予はなかった。彼らの返事は、『諾』。

――パアン。
 合図のための銃声が響く。
 風見のオートマチックに引き寄せられ、構成員たちは武器を構えて裏の路地へと誘いこまれる。そこへ滑り込んできたオープントップバスが構成員らを見事に路地へと閉じ込める。計画通りだ。怒声を尻目に、風見は次の作戦へと向かう。

 戦場のあちこちを、H.O.P.E.のエージェントたちが駆け巡る。通信機の使えない古龍幇の面々は、どうしても後手に回ることとなった。戦況が、徐々に徐々にとH.O.P.E.らの側に傾いてくる。

 千石 琉(aa0685)は指揮官として、落ち着いた構えで【遺跡】部隊を指揮していた。千石の的確な指示は、仲間たちに分かりやすく情報を伝えていく。道のどこがふさがれていて、構成員たちはどちらへ向かうのか――。エージェントたちには、手に取るようにわかるのである。
 香港の入り組んだ市街地を掌握できたのは、【遺跡】の第一部隊をはじめとする者たちの成果だろう。
「頼むぜ、お願いだ!」
 神鷹 鹿時(aa0178)の必死の説得にも、住民たちの反応は悪かった。それでもなお、神鷹はあきらめない。地面に頭をこすりつけると、住民たちの様子がわずかに柔らかくなった。神鷹の熱意は、住民の心を動かしたようだ。
「所詮綺麗事ですが、人間同士の殺し合いをしに来た訳じゃありません」
 赤谷 鴇(aa1578)の真摯な言葉に、住民は少しずつ動き出す。
「くそっ、こっちもふさがってやがるぜ!」
 あちらこちらに築き上げられたバリケードは、地元の地形に明るい古龍幇相手だからこそ、大いに混乱を引き起こしていた。

 通るはずの道が通れない。来るはずの情報が来ない。そして、――構成員らの暴走。対応に追われる古龍幇の間に広まる一つの噂があった。
「霍凛雪は支部を脱出し別の場所に移動した」
 ――誰がそんな情報を流したのか、分からない。それもそのはず。來燈澄 真赭(aa0646)が古龍幇へ紛れ込んで流した情報だ。これが本当であれば、作戦を見直す必要があった。
「頭に混乱した指示ださせておいて神経切断とか……、ホントに性質が悪い!!」
 來燈澄は、一目から離れたところで、ゆるりと古龍幇の制服を脱ぐ。隊の仲間が、構成員から奪ったものだ。
 構成員が情報の裏を取ろうと、あちこちを駆けずり回っている。確かに、厳重な護衛をつけた一団が脱出したというではないか。――もちろん、こちらも別のメンバーが流した情報だ。
「幇とH.O.P.E.が交渉を開始したため一時待機の命が下った」
 三ッ也 槻右(aa1163)が流したこれが極め付けとなって、古龍幇の動きが大きく鈍る。
「確かか?」
「ああ」
「……」
 情報の真偽を確かめようと、古龍幇は、封鎖されて不自由な市街地を駆け巡る。【遺跡】部隊の作戦は、確実に時間を稼いでいく。

 どんなにエージェントたちが守りに徹していたとしても、それでも、相手は殺気立った者たちだ。どうしたって、衝突は起こる。
 特に、――相手方には、『暴走』を起こす者たちがいた。
 騒動が本格的に飛び火する前に、いち早く鎮圧にあたったのは、【TKN】の面々だ。古龍幇が、どこへいても、執拗にライヴスの鷹が追ってくる。
「静まりなさい! 私たちが殺しあう理由はないのよ!」
 天川 結(aa0953)が降伏を呼び掛ける。一瞬、相手方には迷った様子があった。隙を突いて、弱った構成員に向けて、セーフティーガスが降り注ぐ。
「くそ、撤退だ!」
 出端をくじかれた古龍幇の一団が、戦場を離れようとする。そこへ立ちふさがったのは、――愛らしい姿のエージェントだった。
「うわあ!」
「おにーさん☆ そんなコワーイ顔してどこに行くんです? ボクと遊びましょ?」
 現れたのは、いかにも弱弱しい美少女に思える。天之川・希望(aa2199)だ。
 バランスを崩してぶつかった構成員を、すかさず御手洗 光(aa0114)が抱きかかえる。
「不必要な争いは、お互いの利になりませんわ。先ずはお互いを知りませんと♪」
 柔らかいものが背中に当たった。構成員は硬直する。一人が武器を抜こうと手をやるが、すぐに暖かい掌に包み込まれた。
「わ、私に出来るコトは何でも致しますから……! だから」
「……!」
 廿小路 沙織(aa0017)が、うるんだ瞳を向ける。彼らのことも、守りたいのだ。そういうと、武器を脇に置き、手当てをしようと手を伸ばす。
 ……【蠱惑の陣】の面々は、こうして、末端の構成員を少しずつ、少しずつ篭絡し、無力化に成功していた。

●最前線での交渉部隊

「お願いです! ちゃんと話を聞いて下さい!」
 【花言葉】の猫柳 飛鳥(aa3631)は、相手の攻撃を受け止めると、よろけた構成員に追撃を加えず武器を下ろした。構成員の一人が猫柳に銃を向けるが、牛嶋 奏(aa3495)がすかさず鋭い一射を放つ。
「話……聞いて……下さい。……ふぇ」
 牛嶋の射撃は、構成員の持っていた武器のみを正確に撃ち抜いている。やはり、H.O.P.E.の能力者は伊達ではない。

 その時だった。
「戦争、はんたーい!」
 びゅん。
 死角から、風を切る音がした。古龍幇の構成員は思わず身をかばい、一歩下がる。目の前に、ひらひらとなにかがはためいた。しかし、それは武器ではなく、『戦争反対』と書かれた旗だ。構成員らは不意を突かれ、思わず脱力する。桃井 咲良(aa3355)はひらひらと旗を振り、その場に旗を突き立てた。
 一瞬緩んだ、その場の空気を縫うようにして、小詩 いのり(aa1420)が一歩踏み出す。
「ボクたちは戦いを望んでない。言葉よりも行動で示すよ。お願い、信じて」
 それこそが、【ゆるり】の作戦である。小詩は、おもむろに武器を差し出す。武器に手を伸ばした古龍幇の一人を、別の構成員が制する。
 何かの罠か。――受け入れるべきなのか。そういった判断をできる人間は、ここにはいない。
「誠意を見せて、言葉も尽くしました。後は、貴方たちの矜持を信じます」
 蔵李・澄香(aa0010)が、小詩に続いて前に一歩踏み出した。古龍幇の沈黙は、迷っている証左に思われた。
 しかし。
「通信手段を遮断したのはお前たちの仕業だろう。交渉がしたくないっていう、何よりの意思表示じゃないのか?」
 古龍幇のいかつい男が、ぎらぎらとした視線を向ける。
「こちらも困っているのだ。君達と同じでね」
 リッソ(aa3264)は、同じように通信の途切れたスマートフォンを差し出す。実際にはH.O.P.E.はライヴス通信機などでなんとか連携をとれてはいるが、一般的な通信手段が使えないことは同じである。
「せめて通信が回復するまで……待ってくれませんか?」
 言峰 六華(aa3035)は、おどおどとしながらも、はっきりと要求を相手に告げる。
「う、うう……」
 そこへやってきたのは、総合通信センターの者と思しき女性である。実施には、通信センターの職員に扮した江口 焔(aa1072)だった。
「通信施設から、逃げてきたんです……せっかく決まった就職先だったのに!」
 古龍幇が信じるかどうか――賭けだった。
「ね、ケガを治してあげても、いいでしょう」
 小詩の言葉に、ひとりの古龍幇が口を開いた。
「いいだろう、だが、治療が終わったら、共鳴を解除してもらおうか」
 エージェントたちの何人かが、英雄との共鳴を解除した。――いくら能力者とはいえども、共鳴なしには力を発揮できるはずもない。
「裏に何かがいる……邪魔者を纏めて潰そうとする何かが」
 榊原・沙耶(aa1188)が江口を治療しながら、そうつぶやいた。

 この状況には、第三者が関わっているというのだろうか。
 古龍幇の間に、じわじわと迷いが広まりつつある。

●美味しいは、正義
「待機命令? んなわきゃねえさ。H.O.P.E.の罠に決まってらあ……」
「兄貴、こっちでなんだかこそこそやってるって話ですぜ」
「ふん、なぶり殺しにしてやる。いくぜ、ウラァ!」
 血気盛んな構成員たちは、命令を待たずに勝手に動き出していた。

 そう言って、タレこみのあった場所になだれ込んだ男たちは、変わり果てた光景を見て、目を丸くした。派手な横断幕が、天井に渡してある。――テーブルの上には、美味そうな肉まんや酒がずらりと並んでいる。
「我不鬥爭、喝紹興酒?」
 これは何かの罠なのか。
 あまりにも平和的な光景に、やる気をたぎらせていた構成員は、あっけにとられるしかない。
 ここは【大企業】によって設営された、本格的なおもてなし会場である。
 古来より、ともに食事をとるというのは――どんな文化にも見られる、何よりも共通の<言語>であった。
「?好!」
 パオを着て紹興酒とホープまんを掲げるミハイル・エッカート(aa0315)の姿に、屈強な古龍幇の男たちはひたすらに困惑している。
「はっは、まずは一息ついてみてはどうかな。どうだい一杯?」
 およそ戦場に似つかわしくないような呼び込みの声があちこちにこだましている。鶏冠井 玉子(aa0798)ら【飲茶】部隊もまた、敵味方問わずプーアール茶をふるまっていた。――それには、喉を潤しておけば、妙なものを口にすることがなくなるだろうという読みも含まれていた。
「落ち着け、これは何かの罠だ。手を付けるんじゃねえぞ!」
「毒入りを疑うなら、好きなのを選んで私の口に入れてね」
 男たちに向かって、早乙女 ぷらむ(aa0598)は、顔ににっこりと至上の笑みを浮かべる。おそるおそると下っ端の一人が近づき、日本の”まん”を早乙女に渡した。
「ん、美味しいわ♪ 一緒にどう?」
「……」
 あたりに充満するおいしそうな臭い。
 ぐう。
 構成員の一人の腹が鳴った。
 目の前の光景は、罠なのか?
 こんな状況にあってなお、単に友好を深めようというのだろうか――?
 まさか。
 まさか、本当にそのままの意味ではあるまい。構成員たちは、計略を暴こうとじりじりあたりを見渡す。テーブルクロスをめくってみたり、食器をひっくり返してみたり。警戒しながら、あるはずもない罠がないかどうか調べる。
 男の一人が、こっそりと中華まんを口に運んだ。

 そうしているうちに、男たちは、――正面から殴り込みに来たことは、すっかり考えから抜け落ちていた。

●潜入部隊
「さ、この馬鹿げた争いを止めるよ。俺達はここで足止めといこうか」
 蛇塚 悠理(aa1708)の蛇腹剣が、鞭のようにしなり、構成員の武器を弾き飛ばす。正面で気を引く蛇塚の後ろを、潜入組が通っていく。
 表でせわしなく動くエージェントたちの裏では、警察総部への潜入班も動き出していた。彼らの任務は、流血を未然に阻止することだ。
(建物侵入は怪盗の十八番ですよー)
 弥刀 桜(aa1778)の大きなリボンと、ポニーテールの髪が揺れる。彼女は、自身の英雄と相談しつつ、職員が閉じ込められてそうな場所を探る。
 ほどなくして、彼らは囚われの警察官たちを見つけた。

 総部の人質のもとへたどり着いたエージェントたち。しかし、じきに古龍幇がやってくるだろう。とはいえ、人数も多いため、このまま脱出するのもはばかられた。
「我々、荷物になりたくはありません。無力なのは重々承知ですが……」
 警察官の一人が歩み出ると、エージェントたちにおずおずと告げた。彼らはにわかに緊張した面持ちである。
「特攻覚悟なら、気を引くくらいはできるかもしれない」
「早まるな、血を流しても状況は悪くなるだけだ」
ヴァイオレット ケンドリック(aa0584)は手際よく負傷した警察官を治療し、気持ちを落ち着かせるように、パソコンを操作する。静かな音楽が流れている。
「今は他の部隊の成功を信じて、いざという時に備えないと……ならない」
 【潜入工作】のハーメル(aa0958)は、警察署員に呼びかける。警察職員の中には、能力者はほとんどいないといっても良い。彼らでは、古龍幇に対抗することはできないだろう。
「たとえ相手が攻撃してきたとしても、むやみに攻撃しないでくれ。こっちが攻撃したら血で血を洗うことになるからな。その代わり、警察関係者は俺の盾で全力で守るぜ」
 なおも不安そうな警察官らを安心させるように、旧 式(aa0545)は盾を掲げて、ゆっくり面々を見まわして頷く。
「あんたらは俺らが守る、だからH.O.P.Eを信じてくれ」
「分かりました」
 その言葉に心を打たれたように、彼らはエージェントたちを見た。

 単独で総部に潜り、あっさりと古龍幇に捕らえられた奈義 小菊(aa3350)。しかしその行動は、作戦の一部でもある。リーダーと接触するために、奈義はあえて相手の懐に飛び込んだのだ。
「どうする……」
 彼女は、銃を向けられても顔色一つ変えようとしない。華奢で可愛らしい見た目に反して、度胸は人一倍据わっているようだ。
「流血騒ぎを起こさなければ、警察署を「制圧」ではなく愚神商人から「守った」ことになり
古龍幇の益となる」
「俺たちに指図しようってのか」
「指示を待て。指示あらば私を殺せ」
「……」

 食堂に人質たちとエージェントたちが立てこもってしばらく、陣頭指揮を執っているのだろう、構成員の中でも手ごわそうなものが現れた。
「H.O.P.E.か……」
 双方に緊張が走る。
「殺し合いは大歓迎だけれど、掌で踊らされちゃって……ほんと馬鹿ばっかね」
 言峰 estrela(aa0526)の言葉に、構成員の顔にカッと血が上る。しかし、別の構成員がそれをとめた。
 彼女は、ゆっくりと話し出す。
 マガツヒと愚神の暗躍について。そして、――アシッドの陰謀について。
「構成員の『暴走』は、身に覚えがあるんじゃないかしら?」
「少し考えれば、この状況で誰が一番得をするのか、分かりそうなものだけど」
 嫉 妬(aa0775)はあえて相手に呼びかけるようにして、説得を試みる。抵抗はしない。もとより、交渉に来たのだから。
「誰かが言ったことを鵜呑みにするのではなく、自分で考えなさい、力持つ人よ」
「……」
 迷いが生じる。
 あと一押し。
 エージェントたちの要求は「通信手段が回復するまでの停戦」である。

 そのときだった。
「ウ、ウゴゴゴゴ……」
 一人の構成員が、背後から吹き飛ぶ。――<暴走>が始まったのだ。
「バカな!」
 構成員たちは背後からの敵に襲われ、倒れていく。H.O.P.E.のエージェントたちが動き出す。床に倒れ伏した構成員は、――彼らと暴走する構成員の間に立ちふさがった場所を見た。

(この場で一番厄介なのは幇とHOPEが争う形になる事、逆に言えば敵が狙っている可能性が高い。狂化薬が存在するならきっとそれを使うだろうねぇ)
 謂名 真枝(aa1144)は、こうなることを読んでいた。目ざとく暴走する構成員の一人をとめると、すかさず別の行動に移る。
 アシッドの陰謀を食い止めたことで、大規模な水質汚染は避けられている。つまり、今回は別途にドリンクなど、狂化薬を入手していた者たちに限られるだろう。
「やっぱ避けられなかったか……頭固いよマジで」
 弥刀 朔也(aa2483)は、物陰から姿を現し、暴走した構成員を取り押さえる。彼の突き出したフラメアは、直前で軌道をわずかに変えて、構成員の急所を逸れる。
「目覚め悪いし、絶対殺さずに、な」
「一滴たりとも血は流させねえ! ドナ気張れよ!」
 旧が、盾を構えて咄嗟に身を躍らせる。
 そのとき。
 弥刀は――目の端に、不審なものを見て取った。
 この状態にもかかわらず、一切の動揺なく、立ち上がり、銃を取り――こちらに向けて発砲しようとする、不自然な動きをする男。
 人質となっていた警察職員のひとりも、それにつられて立ち上がり――。

 いや、違う。
 もともと、そういう計画だったのだ。

 混乱を極めたところで、最後に引き金を引いて、H.O.P.E.と古龍幇の決裂を望むというのが彼らの作戦だったのだろう。
 マガツヒ。

 ダアン。
 殺意を孕んだ銃の音が、あたりに響き渡った。

「チッ……」
 マガツヒの工作員は、焦っていた。射線が通らない。
 立ちふさがった旧は、その場からどかなかった。警察側に紛れ込んでいたマガツヒの構成員は、やむなく後ろから旧 式を撃った。脇腹に大きく当たった弾丸は、一撃を与え――それでも、どかない。
 古龍幇側に紛れ込んでいた男は、ハーメルが素早く沈めていた。弾は大きく逸れ、壁にのめりこんだ。
 マガツヒの人間はH.O.P.E.のエージェントと古龍幇の構成員に次々と取り押さえられ、厳重に拘束される。
 マガツヒの計略は、――失敗に終わった。
 すなわち。
 この計略の失敗は、第三勢力、「愚神」の存在を、双方に知らしめることとなった。

●終息
 警察総部での動きが決着を見始めてなお、末端構成員との衝突は止まなかった。命令系統が整っていない今の状況で、構成員たちは統制をとれていないのだ。
 時間の経過とともに、戦場はかなりの混乱を極めていた。エージェントたちの活躍によって、人数は少ないものの――あちこちで『暴走』を始める構成員の姿がある。

「来るな、来るんじゃねえ、こうなりゃ、最後まで抗ってやる……」
 戦場の片隅。
 この一帯では、勝負はもうついていた。
 それでもなおも抗おうとする、古龍幇の構成員。
 アンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)は、深手を負った構成員の前に一歩進み出ると、深く息を吸い、ゆっくりと歌を歌い始めた。
 静かな歌声が戦場にこだまする。
 構成員が武器を振り上げても、弾丸や発砲音が歌声をかき消しても、アンジェリカは歌うことをやめない。最後まで抵抗しようと歯を食いしばっていた構成員が、ゆっくりと武器を下ろし、降伏する構えを見せた。

「チアさんが今戦うのは、最後まで皆が立っていられるように、だにゃー」
 部隊長、杵本 千愛梨(aa0388)を筆頭に、【合同組】は強固な陣形を築き上げ、古龍幇と相対する。
 仲間たちが後方から銃を構え、徐々に、徐々にと戦線を押し上げる。
 縦横無尽に張り巡らされたバリケードは、地の利をほとんど逆転していた。それになにより、統率という武器がある。
 一時は、H.O.P.E.が優勢かと思われた。しかし、一点。最後の抗戦――とばかりに、構成員が猛攻を開始したのである。
「うおおおおおおああああ!」
 間隙を放たれたフラッシュバンが、何人かの構成員を昏倒させる。それでもなお、食らいつくようにして構成員たちはこちらに迫ってくる。構成員の誰かが暴走を始めると、エージェントたちは構成員の身の安全にも気を配らなくてはならなかった。
 ライヴスの治癒の光が、幾筋も戦場を駆け巡る。危ういところで、何度も命をつなぎとめる。そんな状況が続いていた。

 相手からの攻撃は、まだ止む気配がない。

 何の前触れもなく、相対していた古龍幇たちが、ぴたりと動きを止めたのである。
 それから、まもなく。
 エージェントたちに、別動隊が見事に通信センターを奪還したことを知らせる連絡が入ることとなる。

 ――その知らせは、まぎれもないこの作戦の成功を意味していた。
 エージェントたちは、見事に停戦への『希望』をつないだ。最も望ましい形で、犠牲は最小限。多くの流血を未然に防いだことは、間違いがない。



担当:
布川
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社