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【東嵐】 第1フェーズ:リプレイ


PCイラスト
秋姫・フローズン
aa0501
PCイラスト
灰堂 焦一郎
aa0212
PCイラスト
北条 ゆら
aa0651
PCイラスト
振澤 望華
aa3689
PCイラスト
火乃元 篝
aa0437
PCイラスト
久遠 周太郎
aa0746
PCイラスト
染井 桜花
aa0386
PCイラスト
ユキメ・フローズン
aa0486
PCイラスト
八朔 カゲリ
aa0098
PCイラスト
弥刀 一二三
aa1048
PCイラスト
カグヤ・アトラクア
aa0535
PCイラスト
ガラナ=スネイク
aa3292
PCイラスト
朱鶴 夏弦
aa1615
PCイラスト
染井 義乃
aa0053
PCイラスト
麻生 遊夜
aa0452
PCイラスト
柏崎 灰司
aa0255
PCイラスト
磐里 雪灯
aa1788
PCイラスト
リィェン・ユー
aa0208
PCイラスト
CERISIER 白花
aa1660
PCイラスト
楠元 千里
aa1042
PCイラスト
志山 玲希
aa0328
PCイラスト
夜取 幎
aa0079
PCイラスト
虎生 八重子
aa1044
PCイラスト
餅 望月
aa0843
PCイラスト
志賀谷 京子
aa0150
PCイラスト
東海林聖
aa0203
PCイラスト
イリス・レイバルド
aa0124
PCイラスト
五郎丸 孤五郎
aa1397
●総合通信センター「突入」
「さあ、それでは……始めましょう。準備は大丈夫でしょうか……」
 大規模な作戦前だという事を思わせない落ち着いた口調で秋姫・フローズン(aa0501)がセットした通信機に呼びかける。
 ここは臨時で作られた、いわば作戦本部。全体の状況を確認し連携を確かなものとするための拠点である。
 現在香港島でのエージェントたちの通信には支部からの支援が入っている。H.O.P.E.のライヴス通信機を用いれば、このジャミング状況下でも通信は可能である。
「後方の情報整理は私たち【八咫烏】と【裏道】が……」
「前線の情報確認は自分たち【労組】と【戦狼】の方々で担当いたします。よろしくお願いします」
「あの……道案内、頑張ります」
 秋姫の言葉に続けて灰堂 焦一郎(aa0212)と北条 ゆら(aa0651)の声が通信機から発せられる。
「この街の目と耳は塞がれちゃったけど、あなた達の目と耳は私たちがやったるから! 安心して戦いに集中してよね!」
 最後に振澤 望華(aa3689)の元気な声がエージェント達の耳を打つ。その明るい声音に少しだけ肩の荷が下りるのを彼らは感じていた。
「それじゃあ……作戦開始!」
 一同は目配せし、一度頷き敵の待つ施設へと駆け出して行く。
「ピピッ――」
 エージェント達が接近を初めてほどなく、センターから多数の球体のビット達が飛び出し、行く手を遮った。
「おいでなすった! さあ、派手に暴れるよ!」
 火乃元 篝(aa0437)が巨大な大剣を肩に担ぎ、ビットの群れへと突撃する。
 ビットのビームを巧みに大剣で防ぎながら接近し、一薙ぎに切り伏せる。
(私たちの目的はとにかくビットの数を減らす。……そして目立つ! いいね、私向きのミッションだ!)
 勢いのままさらにビットを打ち落としていく篝に、数体のビットが狙いを定めた。
「数がありゃ良いってモンじゃねぇぜ!」
 しかし、その数体は駆けつけた久遠 周太郎(aa0746)によって叩き落される。
「お、いいねぇ。助かったよ」
「喋ってる暇があったら一機でも落とせ。数が半端ねぇ」
 すかさず背中合わせに立ち、互いの死角を守りあう。
「さあて、私達は作戦が終わるまでこいつらとダンスだ」
「……やれやれだ」
 二人を中心にビット達の注目を集めるようにエージェント達が一塊となって戦いを繰り広げる。
「……敵ビットの動きに変化あり。確認願います」
 その戦場を狙撃で援護しながら只野狼妃(aa0793)が通信機に向かいぼそりと呟く。射撃しながらも全体を眺め、ビットの動きに目を凝らすと、急速に数が集まり始めているのが見て取れた。
「確認しました。建物正面、裏手よりビットが移動しています」
 少し離れた高所に陣取り、スナイパーライフルのスコープで遠方の状況を確認しながら灰堂がこちらも冷静極まりない口調で答えた。もちろん、索敵しながらも落とせる敵は落とすのは忘れない。
「……こちらも確認。建物裏手、E7よりビットが移動。最低限しか残ってない……」
 別角度から双眼鏡を除き染井 桜花(aa0386)が呟く。
「了解。やはり敵は情報を共有していると考えて間違いないようですね。……それでは、正面突破班はビットを避け突入。挟撃班も行動開始お願いします」
「了解」
 ユキメ・フローズン(aa0486)からの通信に短く答え、八朔 カゲリ(aa0098)は立ち上がり、仲間と共に手薄となった裏口へと駆け出した。


●大欖郊野変電所「突撃」
「オーケイ、向こうはもうパーティは始まったみたいやね」
 通信機に耳を当て味方からの報告を受け取った弥刀 一二三(aa1048)が嬉しそうに告げる。
 対するこちらの目的は変電所奪還だ。
「こちらも負けておられんの! 行くぞ、皆の者!」
『おおー!』
 カグヤ・アトラクア(aa0535)の号令に一斉に雄たけびを返し、近接戦闘を担当するエージェント達が一丸となって突撃する。
 設備を使って巻き返しを図らないとならない通信センターと違い、こちらは最悪の場合施設破壊も許されている。求められているのは何よりスピード。ならば、取る手段はシンプルだ。
「見敵必殺、ぶっ潰す!」
 ふわぁっと進路を妨害しようと割り込んできたボンバストの一体をガラナ=スネイク(aa3292)が斧で打ち倒す。
「こいつらは任せろ! あんたらは先に行け!」
「すまん! 助かるぜ!」
 朱鶴 夏弦(aa1615)達突入班がその脇を通り抜けて施設へ走る。
 無論、素通しするほど敵も甘くない。その行く手には多くのボンバストが道を遮らんと集結しようとしていた。
「あなた達の相手はこちらです。『守るべき誓い』!」
 染井 義乃(aa0053)が発動したスキルがライヴスを放出し従魔達の意識を自分に集める。その隙に包囲を抜ける突入班。
「邪魔をする奴には鉛弾をプレゼントだ!」
 義乃の元へ集結しつつあったボンバスト達に、麻生 遊夜(aa0452)が続けざまに放った弾丸がそれぞれ突き刺さる。
「――!」
「誓いを使った連中は下がれ! 囲まれたらヤバイぞ!」
「は、はい!」
 言うが早いか、ダメージを受けたボンバストの姿がみるみる膨れ上がる。
「やらせぬ!」
 カグヤがさらに一体切り倒すがさすがに間に合わない。数体のボンバストが一斉に爆発し、轟音と共に炎を撒き散らす。
「くっ!」
 何とか直撃は避けるが、エージェント達も無傷とはいかない。ある者は踏ん張り堪え、またある者は後ろに跳びダメージを抑え、各々、衝撃を耐える。
「ちっ、結構な威力だな」
「はっ、オチオチ弱音を吐く暇もなさそうだぜ」
 麻生が苦笑いを浮かべつつ顎で変電所の方角を指す。そちらからは羽の生えた蛇のようなフォルムのジルニトラが大量に湧き出ていた。
「面白い。受けて立つぞ!」
 飛来する大量の従魔達を相手取りカグヤが叫び武器を構えた。


●総合通信センター「不発」
「はい、一丁上がりっと。これである程度の連携は潰せたかな?」
 管制室にいたマガツヒ構成員を叩きのめし、柏崎 灰司(aa0255)がポンポンと手を叩く。
「どうだ? 通信もどせそうか?」
「いや……」
 明るい灰司の声音とは対照的に沈んだ声で磐里 雪灯(aa1788)が答える。
「アクセスを受け付けない……。ここからじゃ無理みたい」
 無数に置いてある端末の一つからアクセスを試みるがどうあっても弾かれる。いや、弾かれるというよりは――
「最初から繋がる気配がないって感じかな……」
「やはり愚神を倒さんといかんということか……」
「多分……」
 リィェン・ユー(aa0208)がフゥっと一息溜息を吐く。
「まあ、そうと決まれば善は急げ、ね。ここでまごついていても仕方がありません。急ぎましょう」
 そういって、CERISIER 白花(aa1660)が管制室のドアを開く。
「ブフゥ!」
「え!?」
 開くと同時に猛烈な勢いで突っ込んでくる白い影。
「あ、危ない!」
「きゃっ!」
 咄嗟に隣にいた楠元 千里(aa1042)が白花を突き飛ばす。
「っく――!」
 結果として獣の突進を千里が身代わりとなって受ける結果となった。大きく部屋の真ん中に飛ばされる千里。
「新手か!」
 咄嗟に志山 玲希(aa0328)がオートマチックでけん制し、それ以上の侵入を防ぐ。
「千里様、大丈夫ですか!?」
「俺は……大丈夫。それよりも敵を……」
 駆け寄ろうとした白花を手で制し、千里が一人で立ち上がる。それに応じて白花も視線を今開けた扉の方へ移す。
 ドアの向こうにはずらりと並ぶカプリコーンの群れ。数にしておおよそ7、8匹といったところだろうか。平時であれば多少の苦戦はしたとしても後れを取るような相手ではない。だが……
「場所がよくないですね。この管制室は機能を復帰させた後に必要です。無傷で確保しなくては……」
「とはいえ、愚神討伐の方も急がんとまずい。人員を割く必要があるな」
「……無茶いうなぁ」
 それぞれは可能な提案だが合わさると難しい。灰司が思わず苦笑いを浮かべる。
 と、そこへ軽やかな足音が二つ廊下に響いた。
「ああ、もう仕方ない。やるしかないなー」
 廊下の奥から銃声が鳴り、カプリコーンの一体の足を貫く。
「ブフゥ!」
 カプリコーン達が一斉に弾丸が飛んできた方に視線を移す。
 そこには廿枝 詩(aa0299)と赤ずきん(aa3488)が並んで立っていた。
「とりあえず、引き付けた……はいいけど……」
「心許ないので誰か一緒に来て」
「ブフォー!」
「うわっ、来た!」
 興奮状態で追いかけてきたカプリコーンから逃げるように――逃げたのだが――廊下の角に姿を消す二人。
「じゃあ、あの子たちのフォローとここの防衛は俺達【雫】が受け持つ」
「分かった。俺達【BR】は愚神の方へ向かう」
 お互い目配せして一つ大きく頷くと、それぞれの役目を果たしに駆け出した。


●大欖郊野変電所「激突」
「落ちなよ」
 夜取 幎(aa0079)の放ったライフル弾が送電線の一部に張り付いたライデンジェルを引きはがす。
「多分三つめかな」
 すぐさまスコープから目を外し、次の目標を探そうとしたところで大きな雄たけびが鼓膜を打つ。
「おおおおお!」
 振り向くとそこには四本の腕を持つ鬼の姿をした従魔、バンデットがその手に持つこん棒を振り下ろそうとしているところだった。
「っく!」
 回避しようとするが間に合わない。
「まかせろ」
 そこへ横から人影が割り込む。虎生 八重子(aa1044)だった。
「フン!」
「――っ! なめるな!」
 何とか愛用の刀で受け止め、致命傷は避ける。無傷とも言い難いが。
「フゥン!」
 バンデットは防がれたのも意に介さず、今度は別の手に持つ斧を横なぎに八重子に対して振るう。
「ええい!」
 だが、その斧が八重子に到達するより早く、バンデットの胸から三叉の槍が生え、その場に力なく崩れ落ちた。
 倒れたバンデットの裏から餅 望月(aa0843)が顔を出した。
「大丈夫ですか、八重子さん」
「ああ、この程度でへばるほどやわではない……。おぬしは持ち場に戻るがよい」
 万全ではないのは明らかだ。しかし、この場は一刻を争う戦場、決して立ち止まっている余裕などない。ならばできることは一つ。
 望月は目配せだけをして通信機に手を伸ばした。
「【鶏鳴机】、バンデットの討伐急いでください! ジェルの方は……」
『割と順調、【義】と【妖精環】だけで大丈夫やす。あと十分ちょいで終わらしたるわ』
『外も大方問題ない。この爆弾生物共ももう片が付く。このままいけば思ったよりも簡単に制圧できそう……』
『このままいけば、だぁ?』
 カグヤの通信機を通して人を舐め切ったような声が望月の耳に届く。
『クハッ! このままいくわけがねぇよなぁ? こんな簡単にステージクリアしちまったら、お前らだってツマらねぇだろ? ボス戦って奴だよ。ワクワクするだろ?』
 時は黄昏。夜はこれから始まる。


●総合通信センター「子守歌」
「愚神はどこでしょうか……」
「虱潰しに探すには広すぎますね……。それにもし愚神がこちらに捕捉されないよう移動していたらかなり厄介な事に……」
 不安そうなゆらの声に志賀谷 京子(aa0150)が軽く頭を抱える。
「それでも探さないと。今は一分一秒が惜しい……」
 カゲリが行っていない区画を確かめようと地図を開いた時、遥かに伸びる廊下の奥から銀色の球体が迫ってくるのが視界に入った。
「ったく、キリがないな!」
 東海林聖(aa0203)がそれを切り捨てようと剣を構える。
「……いや、ちょっと待って、聖」
 しかし、それをカゲリが手で留める。
「ん? どうした、カゲリ」
「あのビット、誰が動かしてるんだ。てっきり管制室で制御していると思っていたが」
「それはもう管制室は制圧したのですから……あっ」
 言葉の途中で京子が意図に気付き口元を抑える。
「機械で制御しているわけじゃないって事は……」
 懐から念のために持ってきたライヴスゴーグルを付け迫りくるビットの方を見やる。
「ライヴスで動かしてるって事だ」
 ビットからまるで手綱のようにライブスの紐が伸びているのがカゲリの網膜に映った。
「ビンゴ。俺達を自分の居場所まで案内してくれるらしい。親切なサービスだな」
「今までおもてなしに気付いてやれてなかって事か。失礼な事をしちまったな」
「これ以上の遅刻は失礼にあたります、急ぎましょう!」
 一同は迫りくるビットにむしろ突撃し、そのビームから避け、時に防御しながら通り過ぎ、繋がった糸を辿っていく。
「――そこの道を右だ」
 その道中はそれほど長いものではなかった。如何に広いといえどもエージェント達の身体能力で一気に迫るのであれば話は別。すぐにその糸は一つの部屋の中に行き当たった。
 そこに続く糸は一本ではなかった。様々な方向からの糸が重なり合い、もはやどれほどの本数があるのか数える事すらできないような状況。
「間違いない、ここだ」
「あそこは……確か、会議室」
 脳内に暗記した見取り図を検索しながらゆらが呟く。
「こちら【戦狼】。愚神、発見……。応援。お願い」
『了解です。皆さん、愚神の位置が分かりました。3F会議室、区画はC7です。可能な方は至急向かってください』
 通信機から作戦全域のエージェントへ向けて秋姫の通信が発せられる。
「よし、行くぞ」
 一瞬仲間の到着を待つ事も考えたが、その間に逃げられては元も子もないカゲリ達はドアを蹴破り中へと押し入った。
「てめぇが親玉って訳か……」
 それを一言で表すなら「巨大な金属製のミノムシ」というのが最も的確だろう。天井から伸びた三本の金属製のコードを軸に、ひたすらコードを寄り集めて縦長の塊を吊り下げている。そして、その中心にまるで『瞳』のように赤く光る大きな球体。あれはカメラだろうか。
 あるいは――見方によっては「磔にされた機械仕掛けの神」に見えるかもしれない。
「我、人間ニ安寧ナ眠リヲモタラス者ナリ」
 無機質な合成音声が愚神から発せられる。
「その為に目を隠し、耳を塞いだとでも言うつもりかしら。ちょっと過保護が過ぎるんじゃない?」
 キュイイ、と機械特有のモーター音を鳴らして赤いカメラを京子の方へ向ける。
「汝ラニ休息ヲ」
(……ヤバイ!)
 直感で何かを仕掛けてくると確信し、カゲリが即座に弾丸をその赤い球体に向けて発射する。
 しかしそれは愚神を一瞬だけ覆った青い光によって弾かれた。
(防御機能か!)
 気付くが遅い。次の瞬間には愚神の『瞳』から赤い光が発せられる。
「――!」
 その光に晒されると視界がぼやけ、意識が急速に薄まっていく。
(まずい……)
 愚神の体から鋼鉄で作られたコードが鞭のようにしなり伸びるのが、薄れつつある視界から見えた。
 無防備な状態からあれを食らってしまうのはまずい。そうは思うがうまく体が動かない。
 ガキィンという金属音。
 一瞬の気絶の後、カゲリが目を開ける。
「間に合いました! 大丈夫ですか、カゲリさん!」
 巨大な盾を掲げてイリス・レイバルド(aa0124)が幼子らしい朗らかな笑顔を浮かべる。
「すまない、助かった」
 慎重に身を起こしながらイリスに礼を述べる。
「まったく……眠るにはまだ少し早い。今時、子供でもこんな時間には眠らない」
 立ち上がり愚神を真っすぐに見据えて冗談めかしてそう告げる。
「眠レ……眠レ……」
 まるでうわ言のように繰り返しながら愚神が鉄鞭を何本も生やし、矢鱈滅法に振り回し始める。
「子守歌はいらねぇよ!」
 聖がダメージも厭わず真っすぐに愚神へ飛びかかり、目にもとまらぬ速度で切りつける。
「キュイッ」
 愚神が纏うコードの何本かを深々と切り裂き、着地する。
「先ほどのお返しです!」
「雷、行って」
 愚神が態勢を立て直す前に畳みかけるように京子が弾丸を、ゆらが雷を愚神に向かって放つ。
「さあ、トドメだ。眠るのはお前の方だったようだな」
 カゲリが銃を構えて狙いを定める。
「我、眠ラズ。コノ世ノ全テニ静寂ト安寧ヲ……」
 巧みに鉄鞭を操り、攻撃を妨害せんとカゲリに向かって叩き付けんと振り回す。だが……
「なんてな」
 愚神の動きが、鉄鞭の動きが急に止まる。その中心の赤い『瞳』からは巨大な剣が生えていた。
「機械のような見てくれでも油断というものはあるらしいな」
 背後から愚神を貫いたのは気配を消して近づいていたリィェンの刃。
「ネ……ム……」
 ゆっくりと愚神の『瞳』から光が失われ、そして消えた。


●総合通信センター「天網恢恢」
「……! 来た!」
 自らの持ち込んだ端末に回線がつながった事に気付き雪灯が眼鏡を掛け直し、作業体制を作る。
「俺の出番、無いかと思ったよ」
「こっちも……」
 獣なりに危機を察したのか雪灯に向かって体当たりをしようと駆け込んできたカプリコーンを灰司が大剣で迎え撃ち、真っ二つに両断する。
「これで終わりだ!」
「ありがと。きみたちがここを守り通してくれたおかげで俺も仕事ができる」
「繋がったのか」
「まあね。これで通信は回復。説得にいった人たちが上手くやってれば、この騒動も沈静化する」
 ブラインドでキーボードを操りながら雪灯が淡々と説明する。
「でも、それじゃ遅いかもしれないし。念のため思いつく限りの方法でネットに情報を流す。彼らだって馬鹿じゃない。通信の回復を知ったらまずは上司に報告、繋がらなかったら情報収集に走るはずだ。そこで目に留まれば……」
 真剣な表情でネットへの書き込みを続ける雪灯。
「これで救える命もあるかもしれないから」


●大欖郊野変電所「爆発」
「ふむ、お前が例のエクスプロージョンとやらか」
 振り返り、小さな斜面の中腹に佇む男を見上げカグヤが尋ねる。
「お? 知ってるとは光栄だね。でもちょっとちがうなぁ。エクスプロー『ション』ね、『ション』」
 人を小馬鹿にしたような大げさなジェスチャーで肩を竦める男。
「なんじゃ。思ったより小物っぽいのう。もっと渋い男かと思っておったわい」
「ハッハッハッハッ、そいつは悪かったな。俺は真面目な顔すんのが苦手でよ」
 挑発もどこ吹く風、楽し気に笑う。あまりの手ごたえのなさに逆にこちらがイラつくほどだ。
「まあ、あんまり無駄話もするのも何だからよ。早速だが……」
 スッと自然な動きで胸元に手を伸ばす。一瞬胸元から何か取り出すのかと思ったが違う。男の手が指を鳴らす動作に移ってるとカグヤが認識した瞬間――
 殺気がした。
「退けっ!」
 そう叫んで同時に自分も全力でその場から後方へ飛び退く。それと同時にパチン、と音がした。
 山林に轟く爆音。そして、熱波。爆風。
 一瞬前までカグヤが立っていた場所が綺麗にクレーターのように窪んでいた。
(予想を上回る威力! なんちゅう火力じゃ!)
 爆風に煽られながらも何とかバランスを保ち足から着地する。
「いい勘してんじゃねぇか!」
「――!」
 まだ収まらぬ土埃を乗り越えてエクスプローションが一足飛びにカグヤに迫る。
「舐めおって!」
 体を捻り、その拳を避ける。
 拳が地面に突き刺さった。
 それと同時に再び湧き上がる爆発。
「――っ!」
 爆炎と凄まじい速度で吹き飛ばされた石の破片がカグヤに容赦なく叩き付けられる。
 さらには近くに浮遊していた味方であるはずのボンバストまでが爆発に巻き込まれ消滅した。
 まさしく無差別な暴力そのもの。
「好き勝手やりやがって……」
 麻生の放つ弾丸が中空で消え、エクスプローションの背後から再び出現しその背中に突き刺さる。
「痛ぇ! 何しやがる! ああ!? どいつだ?」
 とりあえず敵の注意を逸らす事には成功したが、ダメージが十全に通ったようには見えない。
「ち、もっとライヴスを消費させねぇと駄目か」
 場所を悟られないよう位置取りを変えながら再びのチャンスを狙う。
 と、そこへ高速で男に近づく影が一つ。新座 ミサト(aa3710)である。
(またとないチャンス、ここを逃すわけには!)
 巧みに鞭を操り、正確な状況が分からず狼狽している男の隙だらけの背中に渾身の一撃を加える。
「ああん? 痛ぇじゃねぇか、姉ちゃんよ!」
「――っ」
 当たりはしたものの効果が薄かった事を悟り、急ぎ飛びのく。
「逃がすわけねぇだろ、死ね」
 拳を握り締め、殴りかかるような姿勢で腰を落とす。
「させませんよ!」
 横から鉄の巨人が――五郎丸 孤五郎(aa1397)が突っ込んできてその手を大剣で叩いた。
「……っ! ちぃ、さっきからどいつもこいつもうざってぇなぁ!」
 さすがに痛かったらしく癇癪を起した子供の様に、勢いよく叩かれた腕を地面に叩き付ける。
 再びの爆発。巨大な質量を誇るはずの孤五郎の体がはるか上空に放り投げられる。
「おお、頑丈なもんだな。さすがロボ」
 巻き起こる土煙。
 それを突き破って接近したのはパイルバンカーを携えたカグヤ。
「お?」
「お前の煙幕、今度はこちらが使わせてもらうぞ」
 完全に視線を上に向けていたエクスプローションの動き出しが一瞬遅れる。
「もらった!」
 それは致命的な一瞬だった。パイルバンカーの杭がエクスプローションの右肩に突き刺さる。
「くそったれが!」
 咄嗟に拳を突きだし、カグヤの腹部に浅く叩き込む。拳の手応えとしては大したことのない一撃。しかし、爆発のきっかけとするには十分なものだった。
 エクスプローションとカクヤの間で巻き起こる爆発。
 ライヴスをコントロールする時間が足りなかったのか、先ほどよりも少し小ぶりなそれは……しかしそれでもなおカグヤを吹き飛ばすには十分な威力だった。
「ぐはっ!」
「カグヤ!」
 彼女の元に仲間たちが駆け寄る。
「無事か、おい!」
「……安心せい。生きておるわ」
 いつもの尊大な口調で話す彼女にホッと胸を撫で下ろす面々。
「お? お?」
 同じくパイルバンカーと自分の爆風の両方によって吹き飛んでいたエクスプローションが、しきりに傷口を叩いて探っている。
「おお……痛ぇ。こりゃあ、イッてるな。……大したもんじゃねぇか。俺がここまでダメージ食らうなんていつ以来だ?」
 自分の状態を確かめ終わったのか不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
「クハハハハ! いいねえ、盛り上がってきた」
 本人の談ではダメージを受けているとの事だが外見から読み取れるほどではない。
 エージェント達の心に不安が影を落とす。
「エクスプローション!」
 と、そこへ白衣姿の男が慌てた様子で駆け寄ってくる。
「あん? なんだぁ、せっかくいいところなのによ」
「すまんが通信センターのほうが制圧されたらしい!」
「ああん? しくじったのかよ、あいつ。役に立たねぇなぁ!」
 心底つまらなさそうにエクスプローションが溜息を吐く。
「ったくせっかく機嫌よくやってたのによォ……しゃあねえ。じゃあ、ジェルを操って……ん?」
「それは無理どすなぁ」
「おっと!」
 突如エクスプローションに向かって放たれたレーザー光線を軽いステップでかわす。
「ああ、分かった分かった。もう言わなくてもいいぜ。つまりタイムアップってわけだ」
「そういうことどす。ジェルとやらはもう完全に駆除させて頂きましたえ。それにしても、好き勝手やってくはったみたいやなぁ?」
 京都弁特有の柔らかい口調と裏腹に怒気を孕んだ声と共に一二三が姿を現す。
「これ以上まだ何かやろうっていうんなら、今度は俺達が相手になんぜ!」
 夏弦が気合と共に前に出る。
「んー、まあ、ここで思うさま楽しんでもいいんだけどよ。まだ時期じゃねぇなぁ」
 ペロリと舌なめずりしてエージェント達を見渡す。
「お前らはもう少し美味しい食い方がありそうだ。まずは借りにしておいてやるさ!」
 言うや否や、横にいた部下の襟首を掴んで一足飛びに距離を離す。
「あ、こら、待てや!」
 追おうとしたガラナの肩を麻生が掴む。
「作戦は成功してんだ。深追いはすんな。今はとにかく怪我人の治療が先だ」
「……そうだな」
「はぁ、ヤレヤレ……。これではしばらく大人しくしてなくてはいかんのう……」
「当たり前だ、ばか。ゆっくり寝てろ!」
 カグヤのとぼけた声に少しだけ息を吐くエージェント達。しかしこれが序章に過ぎないという予感は確かに彼らの中に刻まれていた。



担当:
弐号
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社