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東嵐 第2フェーズ:リプレイ


PCイラスト
符綱 寒凪
aa2702
PCイラスト
千良 侘助
aa3782
PCイラスト
イリス・クレセント
aa1685
PCイラスト
夜取 幎
aa0079
PCイラスト
浪風悠姫
aa1121
PCイラスト
エミル・ハイドレンジア
aa0425
PCイラスト
鈴音 桜花
aa1122
PCイラスト
叶 愛蘭
aa2307
PCイラスト
虎鶫 寒鴉
aa3153
PCイラスト
六万 唐津
aa2368
PCイラスト
羽柴 愛
aa0302
PCイラスト
煤原 燃衣
aa2271
PCイラスト
風深 禅
aa2310
PCイラスト
百目木 亮
aa1195
PCイラスト
流 雲
aa1555
PCイラスト
まいだ
aa0122
PCイラスト
ポプケ エトゥピリカ
aa1126
PCイラスト
鳥居 翼
aa0186
PCイラスト
郷矢 鈴
aa0162
PCイラスト
ツラナミ
aa1426
PCイラスト
風見 春香
aa1191
PCイラスト
一ノ瀬 春翔
aa3715
PCイラスト
藤咲 仁菜
aa3237
PCイラスト
紫 征四郎
aa0076
PCイラスト
木霊・C・リュカ
aa0068
PCイラスト
アヤネ・カミナギ
aa0100
PCイラスト
ヴィント・ロストハート
aa0473
PCイラスト
レヴィン
aa0049
PCイラスト
ダグラス=R=ハワード
aa0757
PCイラスト
Arcard Flawless
aa1024
PCイラスト
餅 望月
aa0843
PCイラスト
御門 鈴音
aa0175
PCイラスト
月鏡 由利菜
aa0873
PCイラスト
守矢 智生
aa0249
PCイラスト
御神 恭也
aa0127
PCイラスト
イリス・レイバルド
aa0124
PCイラスト
鹿米夕ヰ
aa0819
PCイラスト
アリエティア スタージェス
aa1110
●白銀のアンゼルム
 小雨の合間に月が浮かび上がる。
「よい月夜だ――が、我が力、未だあの月を飲むには至らぬか」
 白銀の甲冑をまとった美丈夫が、その笑みをかすかに曇らせた。
 彼の後ろには、この世界そのものを裂いて出現した黒球――ドロップゾーンが在る。
「まあ、いい。家畜どもを喰らい、そのライヴスをもって押し広げてやろう」
 整列を完了した従魔どもを見やり、美丈夫は“右手”で前を指した。
 ――3ヶ月前、生駒山麓でエージェントたちと死闘を繰り広げ、右腕を失くして退却した「黒のアンゼルム」。その彼が今、甲冑の白銀を取り戻し、新たな“影”の右腕を得て香港の地へ降り立ったのだ。
「――援軍だと。長海め、余計なことを」
 海上要塞攻めへ向かった長海が送りつけてきた従魔どもが、海洋公園へ上陸。その報を部下より受け取ったアンゼルムは、平伏して待つ大柄なデスハウンドの背に立った。
「進軍せよ。目標はHOPE香港九龍支部、とやらだ」
 かくして北へ向け、ゆるやかに異形の群れが進軍を開始する。


●急行
 約二十名ほどのエージェントたちが、山間をまっすぐ貫く幹線道路をひた走る。
 目標は海洋公園から北上中の従魔群。そして目的は、アンゼルム本隊との合流を目論んでいるであろう従魔群への奇襲である。
「――見えた。カプリコーン15、その後ろにサハギンが60。これは、厳しいな」
 【偵】小隊を率いる符綱 寒凪(aa2702)が、鱗の浮いた右頬をしかめ、厳しい目でインスタントカメラのシャッターを切った。
 作戦名『先制攻撃』に参加したエージェントは、温存されていた予備戦力のごく一部。数の不利はしかたのないことではあったが……。
「力を合わせましょう。点と点を繋いで線にするのと同じように」
 ノートパソコンに表示した周辺地図と寒凪から受け取った写真を照らし合わせ、ボールペンで合番をつける【偵】所属の千良 侘助(aa3782)が応えた。
「やれることをしようじゃないかって、それしかないか。……各自、打ち合わせ通りに始めてくれる?」
 寒凪の合図で先陣を切ったのは【月剣】小隊隊長、イリス・クレセント(aa1685)である。
「ここから先へは行かせない!」
 雷上動から放たれた紫電の矢が、闇を裂いて敵のただ中へと突き立った。
「同じく。ちょっと邪魔させてもらうね」
 雷の閃きにスナイパーライフルの狙撃弾を重ね、【妖精環】小隊隊長、夜取 幎(aa0079)が淡々と指示を飛ばした。
「遠距離攻撃、続けて。ただでさえ弾幕が薄いんだから」
 遠距離攻撃の手段を持つエージェントたちが、とりどりの矢弾でもって敵援軍の鼻先を打ち据える。
「ケェェェェ!!」
 カプリコーンの一匹が高くいななくと、他のカプリコーンもまたいなないて応え、展開を開始した。
「敵は指揮官役のカプリコーンとサハギン4で小隊を形成、左右から僕たちを挟撃するつもりです! 攻撃を指揮官に集中させて各個撃破を!」
(中々敵も冷静だ……)
 16式60mm携行型速射砲を巡らせて60mm弾をばらまきながら、【湊廻】の浪風悠姫(aa1121)が仲間たちに告げた。
 彼の言葉に従うかのように、それぞれカプリコーンを先頭にした15個の小集団が左右に割れる。
 これに挟み込まれれば、数で圧倒的に劣るエージェントたちは対応しきれず、噛み裂かれて落ちるだろう。
「突貫、するよ?」
 近接戦闘武器を構えて敵へと駆ける前衛担当、その先頭を行くエミル・ハイドレンジア(aa0425)がぽつり。
 彼らは、左右から迫るサハギンの三叉槍を押し返し、弾き、いなして、牙の並ぶ獣の口腔と化した従魔どもの陣の最奥へと突っ込んだ。
 右を向けば左から、左を向けば右から、敵に背後を取られてしまう。ならば顎――陣の蝶番を壊し、突き抜ける!
 エージェントたちが範囲攻撃を中心に、従魔たちを攻撃した。
 だが、支援攻撃を受けているとはいえ、数において圧倒的に不利な状況である。すぐに陣を整えられ、押し込まれ、包み込まれ、打ち据えられる。しかし。
 彼らはもちろんわかっているのだ。自分たちの正面攻撃が「奇襲」ではないことを。
「……邪魔です。消えなさい?」
 潜伏して戦場へと接近していた鈴音 桜花(aa1122)が、ジェミニストライクで敵集団の横腹を突いた。
「終わらせる。アンゼルムと合流なんてさせない」
 こちらはイメージプロジェクターで迷彩をまとい、機をうかがっていた叶 愛蘭(aa2307)である。大剣を振るい、カプリコーンの脚を薙いでその機動力を削ぐ。
 脚に連撃を喰らったカプリコーンが叫び声をあげながら倒れ伏し、その背へ、エージェントたちの追撃が次々と突き立った。
「陽動が成功して、奇襲も成功。あとは、敵を何匹減らせるか……」
 位置を変えながら敵の様子をうかがい、ウレタン噴射器で攪乱を行っていた【偵】の虎鶫 寒鴉(aa3153)がつぶやいた。
 奇襲は確かに成功した。しかし、敵が陣を立てなおすのを阻止できるだけの火力が足りず、逆に突撃担当と奇襲担当のエージェントが孤立し始めていた。そうなれば、遠距離攻撃担当のエージェントたちも武器を替え、前線に向かわざるをえなくなる。
「ケェェエエエ!!」
 左右から突きだされるサハギンの槍に守られ、古木さながらに節くれ立った豪腕を振りかざすカプリコーン。
 力任せの両手斧や鋼鞭でエージェントたちを叩き伏せ、かと思えば軽々と身を翻して回避、刃を分身させてその軌道を隠して反撃……その戦いぶりはまさに獅子奮迅だ。
「下がったら押し込まれるだけ。押し返して」
 大剣でカプリコーンの鋼鞭を弾いた愛蘭が仲間に指示を出した。
 しかし、数で大きく劣るエージェントたちはじりじりと押し込まれ――果たして。
 カプリコーン5、サハギン28を撃破したところで、前衛を突破された。後衛は辛うじてカプリコーンの攻撃をかわし、大きく飛び退く。
「ここはもう保たん! 寒凪、撤退だ!」
 【偵】の一員として寒凪の護衛にあたっていた六万 唐津(aa2368)が、サハギンにウレタンを浴びせながら声を張り上げた。
「残せる資料は敵援軍の構成と進行予想ルートだけか」
 激戦の中で情報の収集と整理を続けていた寒凪が、小さくかぶりを振った。
「パソコンと写真を! なんとしてでも支部に届けます!」
 寒凪からノートパソコンと写真を受け取った侘助が、自分の資料とともにそれを抱え込み、全速力で駆け出した。
「逃げ足ならまかせろーって、あれ?」
 ストレートブロウで眼前のカプリコーンを突き放し、エミルが下がる。しかしその深く傷ついた体は思うように動いてくれず、彼女はかくっと膝を折った。
「無理するなとはとても言えん状況だが、生きてこその未来だ。死ぬなよ」
 常は笑ませている口の端を引き絞り、羽柴 愛(aa0302)がエミルにケアレイをかけた。仲間の回復を自らの任とし、戦場を駆け巡っていた彼自身も、けして浅いとは言えないだけの傷を負っている。
「ここは私が……! みなさん、早く撤退を!」
 ふたりに迫る従魔の穂先をナイフで斬り落とし、桜花が叫んだ。シャドウルーカーとしての能力を駆使して戦う彼女だが、敵の連係攻撃によって見る間にその命を削り落とされていく。
「面倒臭いのを面倒臭いまま残すことになったな」
 桜花を援護すべくサハギンの脚へ弾を撃ち込み、幎がため息をついた。
 結果は敗北。しかし、ひとりとして欠けることなく、敵に1本の楔を打ち込んで、エージェントたちは戦場を離脱した。

 1匹のマスケテールがうやうやしく膝をつき、デスハウンドの背に立つアンゼルムにささやきかけた。
 長海様より賜りました援軍のみなさまが奇襲を受けましてござります。いかがいたしましょうや?
「捨て置け。招いてもおらぬ奴原を顧みてやる必要などない」
 アンゼルムは前を向いたまま言い捨てた。
 彼の心にあるものは、程なく始められるであろう自身の戦いのみ。必要なのは彼の都合で使い捨てられる駒であり、彼の意に従わぬ援軍など、ありがたいどころかむしろ邪魔だ。


●迎撃
 海洋公園へ向かった奇襲参加エージェントたちが撤退を開始したころ。
 従魔迎撃作戦――北上するアンゼルム軍迎撃の任についたエージェントたちが、運動会館を軸として展開し、開戦のときを待ち受けていた。
「こちら【蝶】、山田です。……はい……わかりました。けして無理はせず、速やかに撤退いただきますよう、重ねてお願いをいたします」
 ライヴス通信機に向けて何度も頭を下げ、山田 太郎(aa3891)は通信を切った。
「先制攻撃組、やべぇのか?」
 普段の姿とはまるでちがうギラギラと剣呑な顔で、煤原 燃衣(aa2271)が太郎へ問う。彼はいくつもの分隊を束ねる【暁】小隊のリーダーであり、この従魔迎撃作戦の軸を担うエージェントのひとりである。
「撤退を開始しました。残るカプリコーン10とサハギン32が進軍を再開。程なくアンゼルム軍に合流するかと」
 送られてきたデータを参照し、太郎はあえて見解を挟まずに述べた。
 【蝶】の名をつけた情報収集・分析小隊をひとりで運営する太郎は、アンゼルム軍との戦いに関わっている多数のエージェントとネットワークを形成している。それにより、多角的で濃密な情報を得られるのだ。……よくも悪くも。
「情報管理、頼んだぜ。――【民救】、そっちはどうだ?」
 燃衣は自らが率いる遠距離攻撃分隊【弩】とともに配置へつきながら、アンゼルム軍の行進路である幹線道路沿い、そこに住む人々を避難させている暁の分隊【民救】を呼び出した。

「――火臥壬っス~。こっちは普通! 異常ナシってことでェ~」
 4DWのハンドルを操りながら、いつもどおりのかるい口調で返事をした【民救】分隊長・火臥壬 塵(aa3523)。切れて血が滴る唇をなめた。
「って、言っとくしかないっしョ」
 先ほどまでフロントガラスがあったはずのオープンスペースから拡声器を突き出して。
『はいはい、みなさんリラックスぅ~! まずぁチミっ子とご年配が先だぜェ! あわてんなよォ~、俺らいるからよォ~!』
 彼のまわりでは【民救】を含む支援分隊【支】、そして個人で住民救出作戦に参加したエージェントたちが、斥候として先行してきたデスハウンドども相手に得物を振るっていた。
「ヴォウ!」
 エージェントを突破し、避難していた住民へ襲いかかるデスハウンド。その牙を、あわやというところで腕を伸ばして食い止めた風深 禅(aa2310)が、ゼロ距離からの毒刃をデスハウンドの鼻先へ叩き込んだ。そして、頭を抱えてうずくまった住人を助け起こし。
「無力でも辛くても生きて。そうじゃないと、死んじゃった人が怒るから」
 闇に紛れて忍び寄っていた1匹のデスハウンドへ蜻蛉切を叩きつけた百目木 亮(aa1195)もまた、驚いて足を止めてしまった住民へ、務めて優しい声をかけ。
「大丈夫だ。俺たちが安全な場所までついていく」
 エンジンをかけっぱなしにして待機していた4WDへと導いていく。
 ずっと気を張っているせいで、気分が重い。亮は肺を満たす煙草の味を思い出し、あわてて頭を振って追い出した。
 その間にも、デスハウンドたちはエージェントへ牙を突き立て、遠吠えによって本隊へ
合図を送る。もう、時間がなかった。
「みなさん、どこでもいいからつかまって! 発車します!!」
 【民救】の握橘 狭也(aa3938)が、運動会館から借りてきたバスを急発進させ、飛びかかってこようとするデスハウンドをはね飛ばした。
 彼の後ろで、必死で吊革や座席につかまる住民たちが悲鳴をあげた。
「あわてないでください! もう大丈夫ですから……!」
 本当はまだ危険のまっただ中だ。しかし、言ったことを撤回はしない。実現させてみせる。たとえ命を捨ててでも。

 傷を負いながらも多くの住民を救い出した【民救】分隊の撤収。それを追撃する形で、アンゼルム軍の先鋒が運動会館の南へと迫る。
 これを迎え討つのは、設置された照明やスキルで視界を確保した五十名を越えるエージェントだ。
「奴らが犬なら群れを指揮するボスがいる。そいつを狙え! 将を潰せば所詮は烏合の衆だ!」
 スナイパーライフルの引き金を引き絞り、【子羊】小隊を率いる流 雲(aa1555)が指示を出した。
「じょーほーはまいだがあつめる! えーっとぉ、ぴかーってしてぴかってするー」
 盾の影からライトアイの効果を与えた鷹を飛ばし、まいだ(aa0122)が舌足らずな言葉を紡いだ。外見年齢5歳ながら、【子羊】の情報収集を担当する女児である。
「ですはうんどがいち、に、さん……さんじゅうくらい! よこにならんで、ぴゅーってくるよ」
 【蝶】を通じて同じ情報を得た燃衣が【暁】へ号令をかけた。
「敵の武器は鼻だ! 【銛壱】援護っ! 【銛弐】は突撃! 【弩】、撃てぇ!」
 仲間からの支援を受け、【暁】の分隊が動き出した。香水や煙草、においの強いものを遠くから戦場にばらまき、デスハウンドの鼻を殺しにかかる。
 鼻の優位を削がれたデスハウンドは自然と仲間との距離を詰めることになり、有機的な連携が取れずに目の前の敵へ向かうしかなくなった。
 その犬塊をこじ開けるべく怒濤乱舞で突っ込んだのは、ポプケ エトゥピリカ(aa1126)だ。
「わらわが道を切り拓く! みな、助勢を頼むぞ!」
 彼女の声に応え、遠距離攻撃がデスハウンドどもへと降りそそぐ。
 彼女とともに斬り込んだエージェントたちは、その矢弾を縫って刃を振るった。
「グォォォオオオ!」
 各個撃破されていくデスハウンド。しかし、見た目は犬ながらも従魔。主ならぬ【暁】の各員が誘因のために置いたあつあつおでんには見向きもせず、遠吠えによって本隊へ劣勢を告げる。
「助け、呼ばれちゃったかぁ……。さすがにあいつらの喉全部は潰せないもんね」
 デスハウンドのボスと思しき個体を、そのまわりを囲む部下ごと幻影蝶で押し包み、鳥居 翼(aa0186)が顔をしかめた。
「よし、次、次――って囲まれてるし! あー、連携考えとけばよかったぁ」
 先制攻撃同様、従魔迎撃作戦においても前衛担当を買って出たエージェントは多くない。孤立を避けるためにも、スキルを惜しんでいる余裕はなかった。

 かくして、エージェントたちがデスハウンドを半ば片づけたタイミングで、ついにアンゼルム軍の本隊が姿を現わした。
 20m毎1ブロックで区切られた地図。それらをパズルを埋めるようにして敵を数え上げ、補足を付け加える。
「マスケテール18、リーンゾルダ180。そしてデスハウンドが14ほど――最後尾にあるアンゼルムが乗っている個体も含めれば15ですね」
 しかし、現状でわかるのは敵の数と布陣のみ。エージェントたちは、リーンソルダらが備える連携を初手で喰らうこともなる。
 マスケテールの号令を受け、リーンゾルダの隊列が一斉射撃によって火力を集中する。
 前衛のエージェントたちは一斉に放たれた弾丸と矢に撃ち据えられ、体勢を崩した。
 カプリコーンが隊の先頭に立って部下を引っぱる猛将だとすれば、マスケテールは後方から部下を操る知将だ。敵部隊の後方にあって、静かにこちらの弱点を探っている。
 次々飛び込んでくる情報を統合する太郎。
『タロさん、これって』
 茉莉花の言葉に太郎は心なしか頷いた。
 上がってくる報告をざっと記していくと、見る間に敵の動きが浮かび上がる。
「リーンゾルダ10がマスケテール1に率いられているようです。敵の連携にご注意を」
「了解!」
 通信機からの言葉を受けたエージェントが、散開して敵の一斉攻撃をかわす。
 マスケテールが指示を飛ばすと、リーンゾルダは整然と隊列を整え、盾を押し出して前進を開始した。その両翼を生き残りのデスハウンドが固め、エージェントの奇襲に備える。
「まずは雑兵を削って耐えましょうか」
 盾と盾の隙間を狙ってフェイルノートの矢を放ち、郷矢 鈴(aa0162)がつぶやいた。指揮官であるマスケテールを狙うには、それを守る盾の数を減らす必要があった。
「でも――固い」
 リーンゾルダの鎧は固く、一撃した程度ではへこませることもできなかった。しかも奴らは恐れず、迷わず、ためらわない。マスケテールに命じられるまま動き、1体が消滅すれば別の個体が黙々とその穴を埋めて進軍してくるのだ。まさにチェスの駒――ポーンのように。
「……俺もポーンだ。今はポーンらしくポーンの相手をしようか」
 【子羊】の回復役を護衛する白亜 竜止(aa3929)が、雷神ノ書から雷を飛ばして鈴を支援した。たとえ新人でも戦場に立てば戦力1。その責をまっとうするべく、彼は力を尽くす。
 遠距離攻撃の助けを得、前衛が敵の戦列に風穴を開けることに成功した。太郎を始めとした情報担当が各員にゴーサインを送り、対マスケテール担当エージェントたちが、その穴に次々と身を投じていく。
「だるい、メンドイ、と言いたいところだがな」
 そう言ってるときでもないだろうさ。【子羊】のツラナミ(aa1426)が潜伏を解除し、マスケテールの首筋へシルフィードを突き込んだ。
「いそがしいいそがしい。百万ドルの夜景を撮るヒマもありゃしない」
 カメラを15式自動歩槍に持ち替えた風見 春香(aa1191)がロングショット。彼女がしかけた照明による目潰しは不発に終わったが、この狙撃はクリティカルで決めてみせた。
「さァて、ひとっ走り行くぜェェ!!」
 【暁】の【銛弐】分隊の一員、一ノ瀬 春翔(aa3715)が、相手をリーンゾルダからマスケテールへ変え、大斧を振るって敵陣へ斬り込んでいく。
 数的不利を覆すには、敵を乱戦へ引きずり込むしかない。そしてそれは成功した――はずだった。
 マスケテールの数体がブルームフレアを放った。識別もなにもない、すべてを巻き込む範囲攻撃。部下のみならず互いをもまきこんで、隙間へ入り込んだエージェントたちを燃やす。
「亡霊だからって、恐れを知らなさすぎだ!」
 『暁』の支援分隊と協力し、火傷を負った仲間を引きずって後退、ケアレイをかける藤咲 仁菜(aa3237)。その目は、炎の中で崩れ落ち、消滅していく従魔の姿から離れない。
 予期せぬ反撃を受けたことをきっかけに、エージェントたちは防戦を余儀なくされ、その戦線をじりじりと下げていく。
 その中に。
「行くか」
 デスハウンドの背から地へと降り立った白銀のアンゼルムが一歩を踏み出した。


●影
「楽しそうだな、家畜ども」
 アンゼルムが剣を握る右手を振るった。いや。右手が、ではない。剣を、でもない。
 白銀の中にあって唯一黒い影状の右手は、微動だにしていない。しかし、その手に握られた剣――その腕と同じ影の刃が伸び出し、半円の軌跡を描いてエージェントたちへ襲いかかったのだ。
「!」
 見えぬ刃に空間ごと斬り払われたエージェントたちの体から鮮血が噴きあがった。
「恐れてはなりません! 前だけを見て、アンゼルムを討つのです!」
 九龍城砦を押し立て、紫 征四郎(aa0076)が進み出た。
「眩ませるぞ」
 征四郎の前進に合わせ、木霊・C・リュカ(aa0068)がフラッシュバン。さらに盾を装備した対アンゼルム担当のエージェントが壁を形成し、負傷者の後退と回収を助けた。
 それを細めた目で見やったアンゼルムは再び刃で一文字を描き。
 実体なき刃に薙がれた盾の壁が揺らぎ、崩れ落ちた。
 どれほど強力でも、ただの一閃。盾と英雄の力で守られたエージェントたちが崩れるわけがない――ないはずなのに。
 アンゼルムの刃は見えなかった。実体がないどころか照明を照り返すことすらない、まさに夜闇に溶け込む影。加えて彼の右手は振るうことなく刃を操っている。刃を操るための予備動作がない以上、タイミングを計って身構えることすらかなわない。
「【刻庭】、出るぞ」
 アヤネ・カミナギ(aa0100)の号令を受けた【刻庭】小隊がアンゼルムへ向かう。
「一度は敗走を期した愚神……その実力、見せてもらおうか」
 冷めた言葉とは裏腹に浮かされた笑みを浮かべ、【刻庭】のヴィント・ロストハート(aa0473)がアンゼルム目がけて大剣を振り下ろした。
「生駒山では逢えずじまいだったが、今回は貴様が標的だ」
 ヴィントと並ぶアヤネもまた、体ごと大剣を叩きつける。
 重ねられるエージェントたちの追撃をただ受け続けていたアンゼルムが、小さくかぶりを振った。
「数が足りぬ。力が足りぬ。意志が足りぬ。なにひとつ、足りておらぬ」
 アンゼルムはもの悲しい笑みを浮かべてみせ。影の刃を薙いだ。
 下がることなく耐えるヴィントとアヤネ。その覚悟に助太刀したのはレヴィン(aa0049)だ。
「その腕、今度は俺がぶった斬ってやるぜ!」
 疾風怒濤の三連撃で狙うはアンゼルムの右腕と剣。
 しかし、その攻撃はことごとく空を切り、彼は勢い余って地に転がった。
「アンゼルムの右腕って何製だよ!? ――聞こえるか【蝶】! こちらレヴィン! アンゼルムの右腕にも剣にも攻撃が当たんねぇ! ほんとの影みてぇなんだけど!」

 一方、この戦いを前哨戦と考え、戦いを観察する者たちもいる。
 運動会館の屋上、双眼鏡から目を離したダグラス=R=ハワード(aa0757)が低くつぶやいた。
「今は見ておくだけでいい。いずれ収穫のときが訪れる」
 犬避けを兼ねてくわえていた煙草をコンクリートに落として踏みにじり、彼はまた双眼鏡を取り上げた。
 また、味方の後方で援護射撃を指揮していたArcard Flawless(aa1024)は、機械化した目を一度閉じ。
「あれはこの世界のものじゃないけど、ブラフでもない。本物だ」
 それは絶望的な結論だったが、本物という存在である以上はかならず攻略の糸口がある。彼女は再び目を開き、アンゼルムの剣を見極めるべく攻撃を再開した。


●挽歌
 【刻庭】を中軸に据えた前衛がアンゼルムに食らいつく。
 しかし彼らの体には深い傷が刻み込まれ、血とともに命を垂れ流し続けていた。
「期待していたのだがな……つまらん。そろそろ終わらせるか」
 群がるエージェントのひとりを蹴り離し、アンゼルムが自らの右腕を見下ろした。そのとき。
「――終わらせない。その新しい腕もまた落とします!」
 白銀の背を強襲したのは、餅 望月(aa0843)の三叉の穂先。
 敵を避けて幹線道路脇をすり抜け、アンゼルムの背後に回り込んだ【鶏鳴机】小隊が到着したのだ。
「【蝶】からの情報だと、もうすぐ敵の援軍が来ます。それまでにやれるだけやっちゃいましょう!」
 【刻庭】と連携し、アンゼルムにまとわりつく【鶏鳴机】。
 その正面攻撃と奇襲を組み合わせた攻撃にアンゼルムは眉をしかめ、影の刃を円状に巡らせて突き放そうとするが。
「あなたの進撃、ここで止めます!」
 剣閃をかいくぐった【鶏鳴机】の御門 鈴音(aa0175)が疾風怒濤でアンゼルムを打ち据え。
「覚悟なさい、アンゼルム!」
 イメージプロジェクターで迷彩し、接近していた【鶏鳴机】の同僚、月鏡 由利菜(aa0873)が、鈴音と息を合わせて礼装剣・蒼華で奇襲を重ねた。
「っ」
 アンゼルムの口からついに息が漏れた。
「おまえにそう好き勝手させるかよ――!」
 アンゼルムの正面から待機させていた鷹を突っ込ませ、自身は背後から忍び寄った守矢 智生(aa0249)が、白銀の鎧の隙間に毒刃を突き立てて口の端を吊り上げた。
「ほんとはその腕落としてやりたかったとこだけどな!」
 この機を逃してはならない! 守りを捨て、全力で攻め立てるエージェントたちだったが。
「ケェエエエ!!」
 戦場に轟く高きいななき。
 海洋公園からの援軍が、戦場へ殺到する。
「食い止めてくれ、迎撃班! アンゼルムと戦う連中を守れ!」
 【暁】を指揮して従魔群との戦いを続けていた燃衣が叫んだが、急行できるエージェントはいなかった。誰もが持ち場に踏みとどまることで精いっぱいだった。しかし。
 状況は覆る。
 味方の手ならぬ、アンゼルムの右手によって。
「痴れ者どもが。僕の戦場を、その汚らしい足で踏み穢すか!」
 アンゼルムの右腕がゆらめき、夜闇に溶け出した――
「ケェエ!?」
 カプリコーンが、サハギンが、刹那の間すら置かずに斬り裂かれ、地に落ちることすらゆるされず、この世界から消え失せた。
「あれがアンゼルムの新しい力……?」
 呆然とつぶやく餅。思わず取り落としかけたトリアイナをあわてて握りなおす。
 敵援軍は陣形を整えたうえでこの戦場へなだれこんできた。けして固まって突撃してきたのではない。それを、あの見えない刃はひと息に切り伏せた――。
 想像を絶する威力を備えた不可視の範囲攻撃。それこそが、白銀の騎士が得た影の力。
 どうすればいいのか、なにをするべきなのか、思いつけずに攻撃の手を鈍らせるエージェントたち。その体を、闇に溶けた刃が次々と斬り刻んでいった。
「奴の右手は見えない……影だからだ。なら、もしかすれば」
 最前線でアンゼルムの右腕と対し続けてきた御神 恭也(aa0127)がふと顔を上げた。
「――アンゼルムを照らせ! 奴の腕と剣が影なら、見えるかもしれん!」
 彼の言葉に、戦場のあちらこちらを照らしていた照明がアンゼルムへ集中した。
 アンゼルムは意に介する様子もなく、ただ微笑んで。
「今宵も小賢しいな、人ども。褒美をやろう。泣きわめいて死ね」
 恭也を斬り飛ばし、さらに切っ先を突き込むべく歩を進めた。
「剣撃が雨と降ろうと、ボクがみんなを守るんだ!」
 両者の間へ跳び込むイリス・レイバルド(aa0124)。土をつかんで体を引きずり起こす恭也を背にかばい、ライヴスシールドを展開、さらに盾を構えてアンゼルムをにらみつけた。
 アンゼルムの右腕が溶け、黒き靄と化し。
 無数の斬撃が、イリスと恭也を飲み込んだ。
「う、あああああああ!」
 ライヴスシールドは一瞬でかき消えた。盾は数瞬で吹き飛ばされた。イリスはそれでも恭也に覆い被さり、そして意識を失った。
「――生きてるか?」
 アヤネが血で塞がれた目を巡らせた。
「あと10秒はな」
 応えるヴィントも満身創痍。11秒後の生存が保証できないと言わんばかりに。
「悪いが、連れてってくれ」
「ああ」
 ヴィントがアヤネを導き、ふたりはアンゼルムへしがみつく。
「誰か、負傷者の回収、頼むぜ……オレらは、最後でいい」
 ふたりと共にアンゼルムを引きつけ続けてきた【鶏鳴机】の鹿米夕ヰ(aa0819)もまた、血を失い過ぎて色を失った両腕をアンゼルムの脚にまきつけ、その歩みを妨害する。
「――リアンごめん。私、今すぐここから逃げちゃいたい。だけど……逃げたらみんな死んじゃう。そしたらきっと、自分のこと死ぬまでゆるせない。だから……」
 【刻庭】の仲間の影から撹乱を行ってきたアリエティア スタージェス(aa1110)は英雄リアン シュトライアに語りかけ、青ざめた顔の前にライヴス結晶をかざした。

「リンクバースト」

 赤い瞳が輝きを増した。
 一息に駆け抜けたアリエティアの振るうシルフィードが、アンゼルムの実体を持つ残る腕を斬り付ける。
 アンゼルムの腕に走る、かすかな手の痺れ。毒だ。
「……」
 振り向きざま、アンゼルムはアリエティアを見据えた。走る影。切り裂かれるアリエティアの胸。彼女はそこから真っ二つに寸断され、そして――掻き消えた。
 ジェミニストライク。その影を振り払うように出現したアリエティアが、再度アンゼルムに切りかかる。アンゼルムの掲げた剣の背が、辛うじてその攻撃を弾き返した。と同時に、アリエティアの身体からは弾けるようにライヴスが放出され、勢い余ってアンゼルムにぶつかりながら転がっていく。
『上等よアリィ……!』
 リアンが意識の中で呟く。
 彼女たちはそのまま地へ倒れ伏したが、その瞬間を狙ったように仲間がその身をさらっていく。
 彼女たちの最後の攻撃が、エージェントたちに貴重な時間をもたらした。歩ける者は負傷者に肩を貸し、傷ついた者は重傷者を引きずって後退する。
 彼らを援護しつつ自らも退却しはじめる残るエージェントたち。今はもう、目の前の戦いを考えているときではなかった。早急に戦力を回復しなければならない。命がけで得た情報を持ち帰り、反撃へ転じるために……。
 陣容を整えたアンゼルム軍が、敗走するエージェントたちの追撃に移った。
 それを一瞥すらせず、アンゼルムは静かに目を閉じる。
 影の右腕を、黒炎のごとくにゆらめかせながら。

「本部、応答願います。こちら『蝶』、山田です。みなさんからの情報で判明したことがあります。アンゼルムの右腕と剣は影。捕えることはできませんが、光が投影されれば影が映ります。けして不可視ではありません。策を講じ、攻略しましょう。かならず!」


担当:
電気石八生
監修:
御神楽
文責:
クラウドゲームス株式会社